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鵬、天を駈る  作者: 吉野
8章、○○○○○
248/248

第248話 尾張外交、種種雑多(伍)




遅れて申し訳ない。


最近、なんか文章がまとまらないもので。







―――――――ふむ。


此度の三好家(松永どの)との外交はどの様に動くか?


では、先ずは三好の側からかんがみてみようか。



ということで、コレを読め。





『"三好が織田に求めるモノ"


三好のうじは、本拠の阿波国に淡路国や讃岐国。


それから主要な畿内数カ国を制する強大な一族だ。


だが、その権勢は盤石ではない。


当世の権威の頂点、主君たる室町(足利)の征夷大将軍を


敵に回してしまった為だ。


それ故に現在の三好家は畿内に於いて、


六角・畠山・波多野など四方全てが敵対的という


危機的な状況下にある。』





『今はその国力を以てね付けてはいるがな?


ただの一手、打ち損ねただけで畿内の領土が


散々に掻き乱されるという博打ばくちの様な有様だ。


この状態でもし自分達と同規模の力を持つ織田が


乗り込んで来たならば、三好は完全に詰む。


まさに御家存亡の危機。


あはれ、四国へと逃げ戻る羽目(都落ちの憂き目)となるのだ。』





『よって三好家が求めるべき外交戦略は、


織田家と()()()敵対しない事。


その意向を畿内に向けさせない事こそが、


三好家が求める絶対条件となる。


仮令たとえ多少の譲歩を認めようとも、だ。』








お次は、織田の側。




『"織田の立ち位置と進むべきみち"



我等が上洛というものを行う上で最大の問題点は、


"主力が本拠を置いて離れること"。


敵対の続く今川に自らむさむざ柔らかい脇腹(尾張)


さらす無様を見せる事である。


ましてや上洛に立ち塞がるは天下人(畿内の覇者)、三好長慶。


互いの骨肉(忠臣)を引き裂き合う死闘となる。


今現在に織田が上洛を行うならば、


"今と同等以上の守勢を以て要所を固め"ながら、


"持てる限りの最大戦力を以て攻め上る"という


明らかな無理難題を強いられるワケだ。


文字通り、るかるかの大勝負となる。』





『ところで、上洛という選択肢を選んだ場合だ。


織田がその先にどの様な立ち位置に置かれるか、


少しばかり、検証してみようか?』




『勝幡織田という家が上洛を行うにあたって、


突き当たる課題はその家格の低さだ。


阿波守護代の三好ですら、()()扱いだぞ?


更にその下(唯の成り上がり)の織田がどうなると思うね?


間違い無く総スカンだ。


近隣の名門、佐々木六角・畠山・波多野らは


織田が下に(上洛の功績を全)付かなければ(部譲らなければ)協力なぞしない。


もなくば"御手並おてなみ拝見"などと傍観されたり


それどころか半目され敵対されかねん。


――――歴々の大名門たる誇り故にな。


畿内に類無き強敵たる三好と闘う為の条件が


"ただ働き(成果ナニも無し)"か"孤軍奮闘(独りで大出血)"の二択では話にならん。』





『更に"勝った後"が尚更なおさらたちが悪い。



もし畿内諸勢力に協力を願いその下に付いたなら?


その戦は最前線の矢面やおもてに立たされて削り殺される。


その上で"御役目、御苦労"の一言だけだ。


手ぶらで尾張へと追い返される。



もしそれらを拒み単独で戦ったなら?


運良く勝てても、その身は満身創痍まんしんそうい


しかも周りには五体満足、無傷の諸大名だ。


何もしていない連中から"露払つゆばらい、御苦労"と


詰め寄られ畿内より裸足で追い落とされるだろう。


ソレに抗えば、三好家の二の舞。


傷だらけのまま、四面楚歌に置かれる。』





『勝てば死ぬまで責苦(侵攻)を受ける修羅地獄。


負ければ何もかも、すべてを喪う餓鬼地獄。



此度の上洛の上意はな。


話に乗れば、何処へどう転んでも行く先は地獄。


()()()ってはならぬ路なのだよ。』





…………読み終わったかね?


コレが三好と織田の置かれている、外交的な


"置かれた立ち位置"と"目指す目的"だ。


最終的に相互の不干渉を望む。


両者とも、実は同じことを願っているのだよ。







ふふ、何で懐からあらかじめ書かれた紙が出てくるのか?


それはだね。



『どうせ最初から説明する必要が有るのだ。


ならばさきんじて備えるは当然、であろ?


孫子曰く、"勝算多(算多きは勝ち)不勝算少(算少なきは勝たず)"。


商いも政も謀も戦も、そして外交も。


予測(相手を先読み)予期(事前に準備)するは基礎中の基礎。


勝つ為の目算を幾重にも積み重ねた者だけが、


最後まで勝ちの目を手に出来る。



まぐれで天下を盗れる程、世の中はぬるくない。』





『―――――後はな。


長文をいちいちその場で急いで書き記すのは


面倒臭いだろう?


目先(筆記)に気を取られて肝心な会談の内容を


聞くのがおろそかになっても困るしな。


予め出来ることは、先に片付けておけばいい。


そうすれば、"今"が楽になる。』








今回は、文中の内容がほぼ懐から取り出された


『会談が始まる前に書かれた』内容という


ちょっと変則的なものとなっております。



最初からソレが起こる事が分かり切っているなら、


早くから対処を全部済ませておけばいい。


全てにおいて大事なことです。


その時になってアタフタ慌てなくてもいいですし、


何より『出来るヤツ』と評価がUPします。


日頃から心がけてみましょう。




まあ史実でノッブが畿内へと上洛した時期って、


諸大名の力が疲弊しきってガタガタになってた頃。


一番良いタイミングだったんです。


三好の全盛期である現時点での上洛の場合は、


勝率は50%近くまで一気に低下します。


史実通りに六角が敵対する可能性もありますしね。



このタイミングでの上洛は、"無し"です。


三好家の誇るオールスター軍団勢揃いの現時点で


正面衝突とか、正直ありえません。




今回も、マメ知識は無し。




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