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鵬、天を駈る  作者: 吉野
2章、『◯◯◯◯◯◯』
24/248

第24話 あちらが立てば、こちらも立つ

普段投稿出来ませんでした。


お昼の投稿となります。


一部の御待ちの方々、大変ご迷惑を


お掛けしました。すいません。


 さて、熱田で町衆たちと会合をして数日、







那古野の城、雀大路の『概要を定める為の打合(うちあわ)せ』


が少しずつ決まり始めた頃…………










()()()―――――







津島の豪商である大橋さまが町の商人衆を集めて


村田屋の方へ訪れた。










津島の大橋さま、



正しくは


津島国人、 大橋 重長(しげなが)





もともと尾張では下の下でしかない小役人、


織田弾正忠家が勝幡の城で力をつける源となる


津島の町の豪商。





特に大橋は織田と津島の繋ぎ役であり、


そのため、殿………信秀の娘と縁組をしていて――





 名実共に津島の顔である。











 この時代の人間としては清潔な格好。


身綺麗で、恰幅(かっぷく)のいい身体に


上等な着物を着こなす。






丁寧に(ひげ)の剃られた顔を


ニコニコと笑ませ、


出された茶をしゃんとした所作で飲まれている。









こちらでは、側へ付けた藤吉郎君が呑まれている。









見ろやこの格好、


―――カッチカチやぞ。






可哀相すぎやろ。










 「さて……………


熱田の方ではずいぶんと大きな事が


進んでいる様子ですね。」






 一息ついた大橋さまが切り出される。




ゆったりとした感じで笑いかけ、


笑っているようで笑ってない目がこちらを見て









――――その目が口ほどに物を言う。





――――熱田に有って津島には無いのですか……?


期待、してますよ?










相対して、何事もないかのようにカラカラ笑う。




「いや、申し訳ない。


まだまだ幼いこの身ですので、津島までお伺い


しようとすると疲れ果て寝込んでしまうのですよ。



お恥ずかしながら………」







軽く()び、津島を軽んじる訳ではない、と告げる。




なにぶんに小僧のこの体、


全く(もっ)て熱田まで来るのでさえ一苦労な話だ。


津島までは気楽に行けないのだよ。









ま、それにだ。







―――口ほどに物を言わせてみる。






―――(もう)けを嗅ぎ付ければ言わずとも来るでしょ?


………貴方達なら。










「はっはっは」


「……ふふ」








おや、藤吉郎くん、そんなに青くなって


どうかしたかね?








「まあ、前置きはさておき………」



よく冷やした麦湯で(のど)(うるお)す。




ふむ、


―――まあまあか


まだもうひと工夫がいるな。





湯呑を撫でながら考える。









やや物珍しげな大橋様の視線をガン無視しながら。








「ま、二番煎じですからね。


話は省略します。



津島の皆様には"末森"の城に大路を御願いします。


………こちらは『(つばめ)大路』と申しましょうか。」






末森の町の概略を描いた図面を広げる。




図面を眺める商人衆を尻目に、筆を持って


城の大手門から町の入り口へ……



墨で線を引く。




「殿には許しを得ています。


津島衆にはこちらを御願いします。」






とはいえ、これだけでは芸も味もない。



ゆえに少しばかり、


(ひね)りをいれる。







「ただし、


ひとつ指示を追加します。



皆様にはこの普請を、『祭り』として行うこと。


末代に至るまで町衆の誇りとなるよう――



末森の民が毎年、


真似て自分達から祭りを行うような――――



その様なモノとすることを命じます。」







当然、銭も人手もかかる。


それを考慮しながら………








どの様な工事を行い、


どの様な祭りとするか――――





それに頭を悩ますのがあなた方への課題だよ。







良かったな


これぞ、津島商人の腕と頓智(トンチ)の魅せ処だ。











「いや、


――――――しかし………」



それが解るからこそ大橋さまも簡単には納得せん。


それは文字通りに無理難題だからな。








しかしな、




所詮は熱田の後追い・猿真似ではな………




津島は熱田の二番手なぞと言われるのは


つまらないであろう?





それとも……


そう後ろ指されても良い。




―――――というなら構わないがね?







じろり、と目を細め見遣(みや)る。



こちらは、どちらでも良いぞ?










 しばらく悩んだのち、しぶしぶと頷かれた。





ならば結構。











「後はそうですね。



  …末森の燕、


  那古野の雀―――――



共に完了したなら次は


那古野と末森をつなげる大街道を設けます。



それとなく熱田衆へも伝えておいて下さい。」









どう伝えるかはお任せしますよ?




隠しダネとしてマウントを取るなり、


……共に喜ぶ協調のタネとして使うなり………ね。









「那古野から末森へ向かう一方通行の大路、


末森から那古野への一方通行の大路。



那古野から末森へが『(ひしくい)大街道』、


末森から那古野へが『(くぐい)大街道』と


それぞれ名付けます。



"鴻"を熱田へ、"鵠"を津島へお任せします。


織田からは街道の指示絵図のみを示して、普請を


全面的に一任するので、同時に始めて下さい。」







 おそらく日本史上、"普請"というものを業者に


デザインレベルから完全委任した





―――――最初の事になるのではなかろうか。








それどころか……世界史上、初かもな。









つまり…………な、



「全面的にお任せする以上、この普請は


織田弾正忠家としての威信以上に、



津島・熱田それぞれにとっての


『威信・在り方・誇り』が掛かるものとなります。




半端なモノを造れば、後生・末代までの


物笑い、町の恥となりますのでお気をつけを。」





無論……大成功におさめれば歴史に留められる。



『千歳の果てまで語られる』


まさに町の誉れだ。








子々孫々に貴殿方(あなたがた)の名が語られる。



  責任は重いぞ。










ふふふ――――――




藤吉郎くん、


そこで(ひる)むようではまだまだ…………




修行がたりんぞ。








大橋さまを……見るといい。





―――――この重責に



歓喜に身を震わせ、


獲物をにらむ狼の如くに苛烈(かれつ)な笑みを魅せる。







それが(まこと)に一流の商人(あきんど)だ。












「ところでそちらの若い坊は見ない顔ですな、


()()()()()()()()()ですかな?」




「こんなですがね、


未来の村田の幹部候補です。



―――――場数を踏ませておるのですよ。」




「―――――ほう」






「#@$&§∝¥≒℃★!?」



何分(なにぶん)、経験が浅くに御座いますれば。」










 毎年、6月18日



末森の"燕大路"が完成したこの日、

町では『ツバメ祭り』が大々的に行われます。


始まりは織田家に命じられた普請……

津島の商人はこの工事に作業を担当する全員に

ツバメを模した派手な装束を着させ、唄わせながら

大路を練り歩くように造成したそうです。


大いに目立ったこの普請は

完成の暁には商人・農民も侍もなく

皆が連なり一丸となって出来上がった大路を

(おど)り、唄いながら華々しくも行進した

―――とされています。


現在でも津島の町からも踊りに招かれ参加し、

三日間にもわたって繰り広げられるこの祭りは

津島と末森の二つの町の友好と結束の

(あかし)とされています。


今や末森を語る上で外せないこの祭

―――燕大路とツバメ祭りは、

現在も……末森の町の誇りなのです。




構成が際限なく、延びる伸びるノビル。


おかげで日をまたぎ、出来たのは12時前。


たいそうにご迷惑かけました。


ようやく出荷です。





マメ知識




『冷やした麦湯』



つうかソレ、麦茶やん。





『大路構想』



末森の大路を、"燕"


那古野の大路を"雀"



そして


那古野→末森が"鴻"


末森→那古野が"鵠"



この文字列にピンと来てください。




なお(ひしくい)はヒシクイという鴨科の鳥、


(くぐい)はハクチョウの古典表現。


共に大型の水鳥を指す。





※資料により示す鳥が混同しており、断定は


出来ない。


また……(おおとり)(まと)とも読むのだが、


どうにも読み:(おおとり)は鴻と鵠の意味が


混同してるフシがある。


まんま『大きな水鳥』だからなぁ………


その辺が辞書ですら曖昧。


しかも双方にコウノトリが該当する。


あーもう!


メチャクチャだょ!!


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