表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鵬、天を駈る  作者: 吉野
7章、『○○○○○○○○』
215/248

第215話 事実上、(当時は)日本有数の農業困難地区である薩摩国



世間でも好みが極端に分かれる薩摩島津家の話。


勇猛・蛮勇それどころか更にその先を征く、


謎の戦闘民族ですよね?


………アレは一体、何なんでしょ?



ポロポロと文章が際限なく出てきましたが、


ボロボロと粗も山ほど見えてくる今回のハナシ。


正直、すごくめんどくさいです。


でもまあ、ソレも楽しいのですけどね。


因果なモンです。







日本の、そして九州の端っこにある薩摩さつま国。


ここも山の面積が多いが、実は思ったよりも


平地の割合が多かったりする。


立地上、海路も発展しており交通の便も


そこまで悪いわけではない。


日本国内としては()()()地理的には恵まれた


国ではあるのだが……………。


この薩摩国には極めて深刻な問題が潜む。



――――火山灰。


九州はやたらと火山が多い。


特に薩摩は大火山群である霧島連山と


現役活火山である桜島などに囲まれた国で


歴史上、ひたすらに火山被害にっている。


その結果として薩摩近隣は火山灰が大規模に


蓄積して地層化しており、この火山灰シラス層が


薩摩国全域を深く覆っている。


この火山灰層、非常に水()けが良い。


いや、良すぎる。


降水や撒いた水がすぐに浸透してしまい、


地表がかなり乾燥しやすいのだ。


故に薩摩の大地は農業に、特に稲作に適さない。


稲作に拘れば拘るほど食糧生産が低下するのだ。


後に栽培適正のある甘藷芋(サツマイモ)が伝来するまで、


薩摩国は日本でも屈指の『農業最貧国』であった。


薩摩の民は国人衆から村衆に至るまで、


常に食糧難に苦しんでいる。



ここに本拠を置く島津家。


実は鎌倉の成立直前から近衛家の薩摩荘園を


任された家であり、頼朝から守護職を得ている。


余りメジャーではないが薩摩島津家は


400年弱もの歴史がある由緒正しき名門だ。


近隣にも一目置かれる一族である。


――――さて、後世にて語られる通り。


『薩摩島津は強兵』として知られている。


それも尋常ではないレベルで。


この"兵の強さ"とは熟練や士気の事ではない。


不利に、窮地になった時に足軽が逃げない事。


軍としての踏ん張り、粘り強さの事を指す。



これを踏まえて島津兵の()()は?


例えば島津の必殺戦術たる『釣り野伏せ』。


これは囮役の殿しんがり役となった将兵らが


()()()()()()()()()()()()退()()()()()事で


偽りの撤退の"意"を消して敵を誘引し、


包囲戦に持ち込むという常軌を逸する戦術である。


例えば未来における『関ヶ原の戦い』。


既に敗戦が確定し酷く消耗した状況下において、


300の兵で敵8000を正面突破。


そのまま通称"捨てがまり"といわれている、


()()()()()()()()()()()()()()()()()殿を


幾度となく残して大将を無事に薩摩まで逃し切る。


帰着できた者は80余人だったという。



―――――この二例における"強さ"。


将は兎も角、一般人たる足軽すらも全滅を恐れぬ。


絶望的不利状況下でも軍が崩壊しない。


コレは強兵なんてレベルでは無い。


もはや正気ではない、狂気の領域である。




しかし実のところ、この"強さ"の泉源は


余り褒められたものではなかったりする。


一般的に"軍が強い"理由は『餓え』である。


何らかの理由で、貧しく生活が維持出来ないから。


報奨や戦利品を持ち帰らねれば冬を越せないから。


所詮は一般人でしかない足軽が"強く(鬼に)"なるには、


不退転に成ら(命を捨て)ねばならぬ理由があるのだ。




…………つまり、薩摩の民の餓えは。


既に常時極限状態か、それ以下にあると。


足軽出兵が口減らしを兼ねる程に危険だと。


既に村々が全ての者を食わせる事が出来ない、


限界にあるのではなかろうかと。


……下手をしたら食料自給率が50%以下、かもな。



修羅道どころか餓鬼道も兼ねているとは、


本気で悪夢のようだ。





――――――しかし、まあ。


志摩・土佐の地がそうであったように、


今や薩摩も急激に変わりつつある。



圧倒的な銭を手にした島津家はどうやら、


食糧の買付に2万貫近くを大量投入したようだ。


そうして手にした食料を島津に属する村や


島津に近しい村にほぼ無償で配布したとか。


極度の飢餓状態(既に限界)にあると推測される薩摩国内。


目先の利益が余りに魅力的すぎてコレは抗えない。


たとえ思惑が見え隠れしていたとしても、


近隣の国人や土侍たちはどうもこうも無く


一気に親島津へと転がったであろうな。


島津は薩摩内外を問わず、凄まじく広域に


好意と従属を得られたワケだ。


―――――そして。


ヒトが生きゆく上で最も重要な"食"。


事実上に生殺与奪を握られた彼等は以後、


島津家に対して反抗する事が不可能となる。


…ソレに気が付いているかどうかは別としてな。



村衆たちや土侍は久々に腹一杯に喰えて満足。


国人たちは領内が大きく安定して満足。


島津家は大きく勢力が拡大できて満足。



誰も困らず誰も苦しまず、皆が満足する。


ならばそれで良かろう。


三方に丸く収まる話である。









………………………のだが。



コレで"目出度メデタし、目出度し"とはいかないのが


まあ現実というものである。


一連の内容を聞いていて気付いたかも知れないが、


豊かに成った事で将来的には新たな懸案が生じる。


新たな懸案とは即ち、


『アレ?コレって島津が弱体化しないか?』


…………ということ。


極限の飢餓が強兵の前提であった島津兵。


その飢餓が解消されてしまうと、ソレが失せる。


満たされて死兵になれなくなった島津の足軽は


最終的に()()()に弱くなるのではないか。


…………それでは意味が無い(本末転倒)では?


というハナシである。


というワケで薩摩島津には今後早急に


以前に匹敵する()()()()()を供給する必要が有る。


多くの銭を持って力を落とした一族なんぞ、


単なるカモネギでしかない。


近隣の大国、"大友"あたりに取って喰われるわ。




薩摩国にとって飢餓は国が抱える宿痾しゅくあであり、


その解消は宿願であった。


その悲願がようやく解決したにも関わらず、


また新たな大問題が湧き出してくるとは。



―――つくづくに難儀な国である。







散々に薩摩(鹿児島)をディスってますが、


近代になってダム湖という巨大水源を手にした


この地は現在では日本有数の超農業大国です。


最近になってお茶の生産量日本一を静岡県から


分捕ってたりしています。


結局は水が最大のネックだったようですね。



………なお、先に言っておきますと。


戦国時代にダム建設は不可能です。


たとえコンクリートが生産できたとしても、


技術レベル的に無理ゲー。


そもそも素人ではコンクリート強度の構造計算が


全然出来ませんし。


また国内に鉄筋を大量生産する能力がありません。


昭和ですら結構な死亡事故を起こす大工事です。


この時代にやると大惨事が起きるのは確定的。


ムリなものはムリ。





マメ知識




甘藷かんしょ芋』




通称、サツマイモ。


日本では栽培開始が薩摩からであり、


ココから日本全域に広まったからこう呼ばれる。


実はヒルガオ科の植物。


原産は中南米メキシコからグアテマラあたりで、


BC3000年頃には既に栽培されていたようである。


ヨーロッパに伝えられたのは15世紀末の


大航海時代の辺りであるが、なぜか10世紀頃には


南洋ポリネシア近隣で普通に栽培されている。


日本に伝来したのは17世紀頃。


琉球経由であったとされる。


乾燥に強く痩せた土地でも育成できるという、


まさに薩摩の救世主のようなイモ。


しかもその気になれば茎まで食用可能であるため


以後、救荒作物として非常に重要視される。






『薩摩島津兵、その狂気の士気』




兵の士気を某"野望"風に表現すると。


一般的な足軽:40


参加が略奪目的のため決定的に負けるまでは粘る。


でもヤバくなると結構、逃げる。


尾張兵:30


基本、極度の飢えを知らないから踏ん張りが無い。


ひどいビビリで、追い込まれると逃亡する。


傭兵(牢人)足軽:20


"命あっての物種"であり士気は尾張兵より軟弱。


不利っぽく見えると即座に逃亡。


三河兵:55


ド偏屈で頑固者、三河命で拘りが非常に強いため。


(というか三河以外の常識を知らない田舎者)


忍び衆:なし


ゲリラ戦オンリーでそもそも前線に出ない。


むしろそういう契約をしない。


一向一揆:90


既に現世に希望が無いからタヒぬまでフツーに戦う。


(現世に未練が無い故に宗教に深くのめり込む)


薩摩島津兵:95


"タヒね"と言われるとホントに絶命するまで戦う。


覚悟の決めっぷりが何かおかしい。



士気95は、ほぼ異常値と言ってもいいモノです。


コレ、士気崩壊よりも先に部隊が全滅します。


ほとんど一向一揆なみに士気が超絶高いんですよ、


薩摩島津の足軽達って。


明らかに他と比べてちょっとおかしい。



ちなみに、尾張牢人兵の士気が低いのは、


出来高払い・その場限りの契約社員扱いだから。


土地を与え終身雇用にすると一気に70近くまでUP。


この尾張兵・牢人兵の極端な士気の低さが


ノッブ氏の"不利になったら即逃げる"という


特殊戦略構想につながります。



※"大阪の陣"で牢人衆の士気が激高だったのは、


豊臣が負けると牢人雇用システムが消滅するから。


牢人雇用システムは世に戦が無ければ用済み。


牢人=無職の社会的地位が暴落する事が決定的で、


彼等にはもう後が無かったからです。


なお戦後、彼等は東南アジアなどで傭兵となる。


確かに強かったものの、報奨をケチるとキレるため


ムチャクチャ扱いづらかったそうてす。


(キレるどころか反乱とかもする)






『修羅道と餓鬼道』




仏教における輪廻転生の候補のひとつ。


修羅道は阿修羅(闘争大好き神)達が住む世界。


年がら年中、戦争と闘争に明け暮れており、


猜疑さいぎ・嫉妬・執着心に満ち溢れているとか。


醜く争う人間世界を暗に示している。



餓鬼道は"餓鬼"が住まう世界。


常に極度の空腹状態に置かれ、どれだけ食べても


満腹感を一切に得られない有り様という。


常時、飢饉ききんの状態といえるシャレにならない世界。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ