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鵬、天を駈る  作者: 吉野
7章、『○○○○○○○○』
210/248

第○話 一周年記念 "武家社会という、○○○○○"・下(超口語訳版)




基本的に外伝的な"第○話"は原則として、


ちょっと物騒な話題を採用することが多いです。


しかしまあ、余り気にしないで下さい。







「―――――大きく歪めた、ですか。


おおよそ推測出来てしまう辺りが、少し嫌ですが。」




「…………凡そ、そのとおりだね。


『承久の乱』の結末は、武家を大きく歪めた。


一番に悪かったのは"勝ってしまったこと"。


仮にもこの国の最上位に、だ。


この事が武家社会の在り方を深刻に歪めてしまう。


仮令たとえ相手が畏れ多くも国の頂点(ミカド)であろうとも、


合力すれば勝てる勝ててしまう。


そのような悪しき前例を創ってしまったのだよ。」




「…………最悪の前例ですね。


どう考えても明らかにロクでもない事になる。」




「実際にそうなるな。


以後、武家は明らかに朝廷勢力を低く見下す。


いざとなれば戦にて下してしまえば良いと。


"荘園運用の代行"や"治安維持"などの


一見では正当で真っ当な建前の名の下に、


近隣に在る貴族の荘園や朝廷の御領ごりょうなどを


武力行使によって公然と横領を始めるワケだ。



"自分の土地と食扶持を暴虐から護る為"だけに


牙を剥いていた『蛮族』達はこれ以後、


"他者の土地と生活を喰い物にする為"に


力を以て踏みにじるという『兇賊きょうぞく』共へと


オゾましくも変貌ヘンボウを遂げる。」




「……………………()()武家の原点、ですか。」




「"武功と勇名"で領地を治めていた武家たちは、


この辺りから様子が変わる。


鎌倉代に『男衾三郎絵詞(えことば)』というのが有ってな、


(もしくは『男衾三郎絵巻』)


その作品の中に、


"庭には生首を絶やさずにぶら下げておけ"だとか


"乞食や行者を見かけたら弓の練習代にしてしまえ"


なんて言う狂気の発言がある。


多少の過剰誇張は有るだろうが、


この頃から鎌倉武士という輩は明確に、


"殺戮と恐怖"で領地を治めはじめるんだよ。


(何か西部劇(マカロニウエスタン)外道な無法者(アウトロー)共みたいだな)」




「………………」




「ただでさえ裏切りや殺戮・謀略が


平然と横行していた鎌倉という武家の時代。


鎌倉府の滅亡に加え、応仁の乱を経たことに


よって理性のくびきが完全に外れる。


支配層の頂点である武家ですらも、


親兄弟を疑い殺すという病んだ世。


当然にその影響は商人にも工人にも村衆にも及ぶ。


騙し奪い壊し殺し。


すぐ間近に飢えと破滅と死が存在する、


今の世はまさに現世の地獄だよ。」




「地獄とまで言い切りますか。」




「それはそうだろう?


なんせ今の武家の言い分なんてだ。



『――――――おう?


オメェらだって痛ェ目なんぞあいたくねぇだろ?


これよりココはオレらの"シマ"だ、いいな?


ハ、物分りのいい奴は好きだぜ?


じゃ、町内会の総年収の半分が"ショバ代"な。


よろしく頼むぜぇ?


………………あ゛?


テメェも今認めただろ、ココはウチの土地だぞ?


ヒトの土地にタダで居座るとか、


そんな非常識なハナシはねぇだろうが?


ちょっと、常識で考えろよ?


――――ああん?


年収150万しか稼いでいないのに


そんなに取られたら食っていけない?


仕方ネェなあ。


カチコミの時にウチの鉄砲玉やってみるか?


危険手当込みで一人一回、10万円出したるぞ?


それでも足りんなら、カチコミの時に


敵のシマで強盗してもええで?


オッケーオッケー、それぐらい許したる。


それで喰っていけるやろ?


―――――いやー、オレって太っ腹!


……………………感謝せぇよ?』


(何度も言いますが超口語約です)



ぶっちゃけ、こんな感じのコト言ってるんだぞ?


こんなコト言われて、お前さん仲良くできるか?」




「………………あ、はい。」




「"武家が村衆に敬愛される"なんて言われるが、


そんなワケが無いだろう、当然おべっかだ。


相手は刃物持ったキチだぞ?


向こうだって死にたくないんだから、


下手に出てご機嫌を伺うに決まってるだろ?


その辺を理解しろよ?」




「―――――ア、ハイ。」




「お前さんも、立場を利用している私も。


結局は同じ穴のムジナ、同じクソだ。


多少の施しで"善君"と称されるのはだな、


『近隣の腐ったクソよりはマシなクソだ』


って喜ばれているんだ。


いずれにせよ、強盗や殺人という大罪を成さないと


家族を養い生き延びる事すらできない。


地獄であることには、何ら変わりは無いんだよ。


最初から他の選択肢なんて無いんだから。



現世はまさに飢えと苦しみの生き地獄。


死後は罪の重ね過ぎで地獄ゆきは確定。


ならば来世くらいは、マシであって欲しい。


多くの者がそう願うのは当たり前なんだよ。


(……そしてその想いを一向宗に利用される)



……………そう考えたら、私が銭やメシを


あちこちにばら撒くのも理解出来るだろう?



この、クソみたいな現実を少しでも改善したい。


叩き壊してやりたいだけなんだよ。」








正直なトコロ、戦国時代という時代は。


たとえどの職種・どの地位に産まれようが、


絶え間なく続く飢えと殺戮と裏切りによって


結局その先には漏れなく生き地獄が待っています。


現代人のモラルのままでは発狂してしまう様な、


どこまでもイカれた世界です。


誤解を恐れずあえて言うならこの時代は、


致命的モラルハザードにより悪徳に呑まれた世界。


現代人にとって戦国時代へのタイムリープは、


『ダークファンタジー系和風世界』への


ある種の『異世界転生(転移)』と言えます。


現代人にとっては完全な"異界"なんですよ。



よく『戦国時代には野望やロマンがある』


なんてセリフがありますが、コレ実際には


当時の世相を完全にナメきった発言。


もしくは現代では危険すぎるサイコパスです。



故にこそ、秀貞の戦略構想には最初から


『大衆の基礎生活レベルの向上』が含まれます。


戦国時代の存在を許容していません。


"クソみたいな現実"をその根底から、


根っこからひっくり返そうという戦略なんです。






マメ知識





『西部劇のアウトロー共みたい』




例えば、だが。


当時の武家の統治手法を西部劇で有りがちな、


"僻地の町を無法者が不当・不法に武力制圧した"


というシチュエーションに当てはめると、


何か妙にシックリと来る。


例えば"庭に生首を常にぶら下げる"のは


"占拠した屋敷で見せしめに絞首死体を吊り下げる"


(暴虐により抵抗・反抗する意思を奪う)


例えば"余所者ヨソものを弓の練習に射殺す"のは


"恐怖を蔓延まんえんさせるついでに旅人を狩猟ハンティング感覚で虐殺"


(外部への"治安崩壊した現状"の情報拡散を防ぐ)


と置き換えると、実はほぼ同じ様な事をしている。


かなり凶悪な恐怖政治をしていた可能性がアリ。


更にこの絵巻では死んだ兄の領地の横領もしてる。





※1:乞食や行者は職業スパイが変装する典型例。


地方では生活がその地で完全完結しているために


基本的に外部者の存在や干渉は不要。


故に武家がかれらを外敵として付け狙うのは


ある意味では理に適っていることでもある。


あくまでも、"ある意味"程度でしかないが。




※2:ちなみにこの説が間違っていた場合は、


"常日頃から人の死に慣れるため"という


SAN値直葬系のグロすぎる理由が次に浮上する。


…………より一層、タチが悪いよ。





なお雑学だが西部劇="マカロニ"ウエスタンなのは


これがイタリア製映画だから、らしい。


ただしマカロニウエスタンは日本オリジナル表現。


本来はスパゲティウエスタンと言うらしいよ?


"スパゲティでは貧弱に聞こえるから"だそうな。






『"マル暴"用語』




①シマ:ヤクザの縄張り。


②ショバ代:ミカジメ料ともいう。元は場所代。


用心棒代(の名目)として金を取る事。


③カチコミ:ヨソのヤクザ事務所に襲撃すること。


④鉄砲玉:ヤクザが敵対者に放つ刺客。


放ったら返ってこない使い捨ての者、という意味。



なお、"マル暴"は警察が使うヤクザを示す隠語。





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