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鵬、天を駈る  作者: 吉野
7章、『○○○○○○○○』
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第199話 厄介系イベ、『正徳寺の会見』開始




ちょっと長めにお待たせしました。


いよいよ"本番"となります。







3月24日、例のイベントの当日である。


結局、今日に至るまで斎藤方が


策謀を仕掛ける形跡は見えなかった。


この会見が織田方に対する策の足掛かりである


という分析はどうやら誤りであったようである。


―――少なくとも今はまだ。



完全に終わるまでがひとつの"事"である。


会見が無事終わり、双方が別れた後に


何の(さわ)りなく那古野の館まで帰り付くまでが


この一件の完全なる終結。


最後まで集中と緊張を切らすわけにはゆかない。



一説として云われた通り、


『この会見が道三による謀殺の機である』


という可能性が否定しきれないからである。


迂闊(ウカツ)に隙を見せれば喰い付かれるのがヘビ殿だ。


毛先ほどの、寸毫(すんごう)の油断すらも出来ぬよ。



まあその警戒は裏方の仕事、私の区分である。


事に向かう当人達には関わりの無いハナシ。


何の気兼ねもなく事に赴いてくれたまえ。


表方を歩む者は裏方の苦労を知る必要もなく、


裏方を歩む者は表方にでしゃばる必要もなし。


それが分業というものだ。





先方、斎藤側より先触れが届いている。


ヘビ殿ご一行は既に現地に到着。


こちらを待っている模様である、とのこと。


しかしこちらも別に遅刻しているわけではなし。


予定よりは少し早め程度に到着するはずだから、


気を遣って脚を早め急ぐ必要もない。


単に向こうの到着が早すぎるだけである。


気にすることではない。


予定通りに、行程通りに動くだけである。







さて?


史実で語られるこの有名なイベントの情景。


よく知られているだろうが、一部を抜粋(ばっすい)する。




『噂の"うつけ"っぷりでもを見てやろうと、


斎藤道三は数人の供回りの者と共に


道中にある民家に(ひそ)かに身を潜める。


窓から覗き見たその姿は。



テキトーに紐で縛っただけの茶筅(ちゃせん)(マゲ)


上半身は着ていた浴衣をはだけてマッパに。


太い荒縄で刀やら雑品を腰に雑にくくりつけ。


下は虎だか豹だかの皮で作った半ズボン。


その姿は(まさ)に噂に違わぬ"うつけ(バカタレ)"な(ザマ)



しかしその後方に付き従うのは、


6m前後の長槍を持つ槍兵たちに


最新鋭兵器の火縄銃300を担いだ兵達。


弾正忠家の侮れぬ底力を見せ付けたのであった』



要約すると、織田三郎という若造(ガキ)


義理の父親に面会する時に


"うつけ(田舎ヤンキー)ファッションで会いに行った"


ということ。


御自慢のコレクションを担いだ手下を連れて。


一応、一族の棟梁という立場であるにも関わらず。



()めてんのか、このクソガキ』という話である。


………………いや、ホントに。


いくらなんでもヒドすぎる。


例えこの後のエピソードが追加されたとしても


ちょっと冗談抜きに常識の無い行いである。





つまり、何が言いたいかというと。


『私が居てそんな馬鹿なコト、させるわけが無い』



――――当たり前だよなぁ?


"弾正忠"という地方役人程度ならともかくとして


"尾張守"という一国の首長たる地位の者に


そんな格好なんぞ許すワケが無いのである。


しかも武家が勝手に名乗る"自称"で無く、


正式に中央より任じられた正式な官職だぞ?


織田一族の面子(メンツ)だけでなく、


下手をすれば任命した朝廷の面子にまで傷がつく。


イチャモンでもつけられて(こじ)れたらもう大問題だ。




というか昨年度末にキチンと断言している。


『"尾張守(国の顔)"になった以上は、来年度以降に


あの"寝惚けた田舎蛮族な格好"をやったら


私と藤吉郎と勘十郎くんとで


全方位から嫌がらせ(ハラスメント)の限りを尽くしてやる。


泣きっ面(パオンすら超えて)で五体投地して謝罪したくなる程にな』



せっかく苦心して造り上げたイメージ戦略を


安易に叩き壊すようなら、此方も容赦はせんと


散々に脅しあげている。




やれるものなら、やってみろ。


人前(はばか)らず、本気で泣かせてやる。







いよいよイベントの開幕です。


まだまだ序盤も序盤、ちょっと引っ張ります。



というか史実のノッブ氏、


良く良く考えると大概に非常識かつ失礼なことを


やらかしていますよね。


まあ、実際にこのイベントでやっているのは


明らかに『先に覗きに来た者へのパフォーマンス』


であり現場ではTPOを読んでますから実はセーフ


………なんですがね。



道中の私服(カッコ)なんぞ、どうでもええやろが?


現場で正装(シャンと)しとんやし、(べっつ)にええやん?





※結構スレスレのセーフです。






マメ知識





『五体投地』




仏教における最敬礼。


あえて異名をつけるなら、"ダイナミック土下座"



立った状態から両ヒザをついて正座の状態になり、


そこから両ヒジをついて土下座の状態に移行。


更に完全にうつぶせに寝そべって拝礼する、


"五体(全身)"を"地"に"投げ出す"意味となる。



似たような表現に"土下寝"があるが、


こちらは五体投地の全過程をすっとばして


一気にうつぶせに寝るという行為。


謝意を示す最高表現ではあるが、


現代社会においてソレが理解される事はほぼ無い。


むしろ一般的にはギャグやネタとして扱われる。



更にギャグに特化した類似(?)表現として


"ごめん寝"とか"スマン寝"とかがあるwww





※なお日本仏教における五体投地は、


ただ土下寝しながら拝むだけ。


両ヒザ(2点)+両ヒジ(2点)+頭(1点)で5体。


"五"体が地に着いているからOKだよね?


という解釈らしい。




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