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鵬、天を駈る  作者: 吉野
7章、『○○○○○○○○』
200/248

第○話 通算200話記念、余り表沙汰には出来ない『邪説解釈・焚書坑儒』(超口語訳版)




今回で通算で200話となります。


というわけで記念となる(?)閑話です。



そこはかとなく不穏なハナシですが。







「―――――――そういえば、以前に


『焚書坑儒』の話をしたと思うが。」




「当時の儒家をコケにしたようなアレですね?」




「――――ええ。


ついでですからもう少し深く掘り下げてみて、


更に(えぐ)ってみようかと。」




「不穏さしか無いのですが。」




「……………兎も角。


儒家って良く説きますよね?


『統治者は高く徳を積め』って。


では、その『徳』って何ですか?


具体的に説明して下さい。」




「……………………うぇ゛!?


―――――えっと、アレ?


……善行を為し善政を敷け、という事ですよね?」




「具体的には?」




「……………………えぇっと。」




「まあ、そういうことだね。


儒学における『徳』には、具体例がない。


これはちょっと"奇変(おか)しい"ことなのだよ。」




「"奇変しい"、とは?


確かに具体的に説明しない、出来ないのは


かなり可笑(おか)しいことなのですが。」




「儒学が生まれた当初は超長期の大戦乱の時代。


こんな人心が乱れに乱れきった世の中では、


時代の権力者達は『結果』を強く重視する。


抽象的に『徳を積め』と言われても納得しない。


分かりやすく実例を出さないと、


追放どころか処刑すらもあり得る。」




「………………確かに。


荒廃した世では"確かな実益を出せ"となります。


其を今の武家たちが出せないからこそ、


一向衆などの宗教へ現実逃避されるのですから。」




「つまり、だ。


当時の"孔"先生、孔仲尼大先生とその弟子達は


その問い掛けに対する明確な解答を持っていた


……………という事になる。


さもなくば"弟子が某国で要職に就いた"という


記述は存在し得ないからな。」




「実績があることこそが、事実を示していると。


確かにいい加減な理論では雇えませんからね。」




「…………と、一概には断言しきれない。


当時の"(マツリゴト)"は未だ"祀り事"であったそうだ。


卜占(ぼくせん)が、(うらな)いが当然の様に国政で使われていた。


儒学者という儀礼祭官が要職に就く事は、


この時代なら普通にあり得たりする。」




「……………………えぇ?」




「今でも有るだろう?


戦勝祈願に験担ぎの儀式をしようだとか。


その日は不吉だから出陣を延期しようだとか。」




「―――――そう言われれば、確かに。」




「故にこそ、"無くはない"のだよ。


ともあれ、当時の儒学が高等政治学の要素を


大なり小なり持っていたのは間違いない。


そうでないと大派閥なんぞにはなれないからな。」




「それは間違いないかと。


一定以上の高等政治学を持っていない者が、


一定以上の地位に就くのは流石に無理ですから。」




「――――――が、歴史の中で彼らが歪む。


具体的には儒学が宗教化したあたりから。


"高等"学問を"大衆"宗教に変えようとした


大馬鹿野郎が現れたその時から。」




「と、いいますと?」




「宗教として儒学を大きく広めるには、


その趣旨を民間にまで知らせる必要性がある。


高等政治学なんて"小難しい理屈"は、


宗教化させるにあたって障害・問題となる。


そもそも民に政治学なんぞ教える必要もない。


ならどうするか?


結果として儒学が儒教に変遷する過程において、


経典たる『論語』から高等政治学分野が


ゴッソリと削除される事となってしまった。


…………まあ、恐らくだがな。」




「――――――えっと、アレ?


それってかなりの大問題では?」




「そうだねぇ、凄い大問題だ。


なお悪い事に『論語』以外の孔先生直伝の


政治的説法がほぼすべて失伝してしまっている。


つまり()()()()の教育は『論語』を以て行われる。


コレ以後の"儒学者"たちに対しては


高等政治学分野が教育される事はない。


むしろ教育が出来ない。


この事が示唆する可能性としては、


古代大陸において"儒()学者"たちは


『自称高等政治学者なのに政治学の素人』


というちょっとどうしようもないような


"無能な連中"であった可能性があるのだよ。


――――明らかに政治に関わるくせに。」




「………………いや、それって。」




「デカイ面して政治に口を出してくる素人だ。


コレ以上ない迷惑な連中だよ。


更にもっとロクでもない事にな、


連中には常日頃から口にするひとつの口癖がある。


特に『漢』の時代だな。


何か問題が起きると連中は必ずこう言うのだよ。


『災いが起こるのは君子に徳がないからだ』


ソレが日照りでも洪水でも冷害でも反乱でも、


それどころか自分達の失政でも。」




「最悪じゃないですか!?


究極の責任転嫁ですよ!?


政に関わる者が言って良い台詞(セリフ)でないでしょう?


しかも自分達の皇帝(トップ)に対して抜かすとか、


本気でいい度胸してますよね?


フツーに死罪案件でしょう!?」




「それがなぁ、当時は『儒教万歳』な時代で


以前の皇帝が許してしまったらしくてな。


もう、コイツら仮にもイチ配下のクセして


最高権力者に対して言いたい放題なんだよ。」




「………………本気で最悪ですね。」




「――――――で、コレを踏まえてだ。


秦国の始皇帝の前でこんな儒教学者らが、


ロクに政事もまともに出来ないクセに


『コレは貴方の徳が無いからです』


…………なんて言ったらどうなると思う?」




「間違いなくブチ切れられますね。


問答無用の即時処刑事案です。


……………ええと、つまり『焚書坑儒』の現実は


こんな(ヒド)すぎるシロモノであったと?」




「まあ何だ、あくまでいい加減な可能性だがな。


だが否定しきれない。


充分にあり得たりするのだよ。」




「本当だったら本気で嫌なハナシですよね。」










200話記念ですが、かなりロクでもない話題です。


実のところこの話、(あなが)ちにも


陰謀とか言い掛かりなどと言いきれません。


『三国志の時代の"孔融"』という、


ちょっと笑えないサンプルがあるからです。


コイツ、評価がとんでもなく乱高下するんですよ。


私の邪説の根拠はコイツだったりします。



なお後漢の時代において、


儒者が『災いが起こるのは君子に徳がないからだ』


と言っていたのはどうもマジらしいです。


当時の皇帝とか、クッソ腹立っただろうなあ。






マメ知識





『"孔融"の逸話』




①コイツ、北海国に赴任していた期間に


マトモな政治をやっていなかった疑惑がある。


『形式的なばかりで現実性のない政治をしていた』


『不正にロクに対応も出来なかった』


『クソ偏屈で学のある者を"形だけ"厚遇した』


などの記述が存在する。



②袁紹の息子の袁譚に攻め込まれた時、


攻められている最中にも関わらず


指示も指揮も取らずに本を読みゲラゲラ笑ってた。


挙げ句にロクに抵抗もせずにサッサと逃げた。



③自分の才能を過信しており、曹操に事あるごとに


屁理屈とイチャモンを吹っ掛けて(イラ)つかせた。


有識者や知識人を厚遇していた曹操が、


唯一ブチ切れて自ら処刑命令を出した逸材()。



・・・どんだけだよ。





※曹操は悪口雑言(あっこうぞうごん)・人の罵倒ばかりで有名な


禰衡(でいこう)ですら(自分では)殺さなかった。

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