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鵬、天を駈る  作者: 吉野
2章、『◯◯◯◯◯◯』
20/248

第20話 若者の、決断

19話の続きとなります。

 途中から(ほとん)ど強引に決めてしまったことを


()び、いくつかの伝言を残して解散とする。





事実上の出来レースじみたことになったため、


今回の大路の工事は追加予算をかけて、可能な限り


それぞれの意見を採り入れようと思う。





無論、全部入れて出来の悪いモザイクタイルの様に


なっては意味がない。







そのあたりが、藤吉郎()と調整役との


腕の見せ所であろう。







「そのあたり、まだ君は不慣れであろう。


学びながらやってみるといい。


人の動かし方など見て覚えることは


――――いくらでもあるぞ?」




呆けたような顔で(うつむ)きぎみな頭の


つむじに向かって声をかけてやる。






「村井……………さま………、」



板の間を見つめたまま、力の無い声があがる。





本人も訳がわからんだろうな。


止める間も無く責任者に抜擢(ばってき)され、


否定する間もなく一万貫の借金を押し付けられた。




自分の城に、尻に火をかけられたのだ。






 ノロノロと上げられた顔は真っ青で、


目の焦点も合わず…………ぼんやりとこちらを


見上げる。







「おいらは……………、



『雁尾屋』は……



どう………なるの……ですか………?」




ただ…………、そう聞いた。











「……………何も変わらんよ。



こちらが言い出したことだ。


一万貫についてはこちらで肩代わりする。



君らは自分たちの稼ぎの中から、


無理をしない程度に返してくれればいい。」




―――――そう、



命を質に取られた自身の扱いが、


その程度で済ませてもらえた。






今はそれでいい。











「―――――――――――おいらは、


…………何をすればよろしいので?」






…………ホントに(さと)いな、コイツ。




こっちの()()をキッチリ読んで来よった。




「なに、そう構えんでもいい。


ひとまず君には、村田の下に入ってもらう。



『村田に従う"雁尾屋"』だ。




自分でも知っていようが、


今の君はまだまた足らないことが多いだろう。



だから少々……厳しくなるかも知れないが、


様々な教えをその身に叩き込んでもらう。





いつかは一万貫、


返すこともできよう。



―――後は、




まあ………その時に考えるといい。」







その辺りまで束縛するつもりもないさ。


それは安心するといい。





   無論、



その時に君がどう……思うかは



  君次第であり――


そして私次第でもある……




   のだがね。







「…………ひとつ、お聞かせください。



あなた様にはどのような利がございますか?


………おいらに、…どのような利がございますか?」







やれやれ…………大したものだ。


ここでそんな事をきいてくるか……





自分の、夢を諦めないといけないかも知れぬ時に。







「――――私が手に入れるのは、


……そうさな、例えるなら


若くしてひと山の財を稼げる一廉(ひとかど)の船乗りだ。



  私が君に与えられるのは…………


君がどうしようもなく阿呆(アホウ)にならない限り、


  たとえ何度船を沈めようが


    君の気が済むまで



 新しい船を用意してやれることだ。」






自分の船を沈められたのだ。


わびとは言わんが、





替わりの船は用意するさ。






















「わかりました。


よろしくお願いいたします!」




しばらくうつむき、


考え抜いて上げた顔は






幼いながらも何かを決めたものであった。







いわゆる労使交渉?のようなもの。


船乗りと船の例え………


現実にはこんなことを言ってくれる上司は


存在しません。


悪しからず。




マメ知識


※さんざん探し回ったのですが…………


今回はナシ。


…………無念!



敢えて言えば、上の船乗りと船の例え。

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