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鵬、天を駈る  作者: 吉野
1章、『◯◯◯◯◯◯』
2/248

第2話 天文18年、安祥にて

第2話です。このタイトルで『ピン』と来る方は、


結構な歴史好き



 時は天文18年(1549年)、昨年に三河 小豆坂にて織田家の軍勢を打ち破った今川勢は3月に軍師 太原雪斎(たいげんせっさい)を大将として勢いのままに安祥(あんじょう)城に攻め寄せた。

織田軍は辛うじて今川勢を退けるものの、同年9月に雪斎は再び安祥の城へ向けて出陣する。

周辺の城を落としながら攻め寄せる今川勢に織田家は平手政秀を援軍として派遣した。







「平手様。」


 荷車から降りて声をかける。



うむ、頭がグラグラする。

長時間歩き詰めよりはマシかと思っていたのだが


…………………………うぷっ



モノの見事に車酔いしてしまった、無様の限りだ。




「おう、村井のところの孺子(じゅし)か。」

先に到着して陣立を整えていた平手様が振り返る。

いや、クソガキって…………間違いではないが。


「………………………おい、随分顔色が悪いぞ?大事ないか?」


「はは……お恥ずかしい。どうも荷車に揺られて酔ってしまったようで。」


振り返るなり心配された。相当ヤバく見えるらしい。

フラついてはいるが死ぬ程でないから問題はない。

軽く手を振り安心させる。




……片手で口を押さえながらではあるが。





「これから今川勢に横槍を入れますか?」


「……うむ。よもや加勢に来た我らの目の前で安祥を落とされる訳にもゆくまい。」


おぅ、流石は歴戦の老将……圧が凄い。

頼もしい限りだ。



 ふぅ………そろそろ多少は気分も落ち着いてきた。

改めて居住(いずま)いを正す。





「そうですね。それでは、(かね)てよりのお願いの通りに。()()()()()()()()()()()()にてお願いします。」



微妙な笑みをされる。

他人事(ひとごと)だと思うておかしな無茶をいいよるわ。」


「まぁ……生憎と、初陣もまだの孺子に斯様(かよう)塩梅(あんばい)の指揮など出来ませぬゆえ。」


大将が雪斎の今川勢に未熟なガキが挑んで勝てるワケがない。当たり前だ。だからこそ……




「適所適材と申すものです。」

肩をすくめながら告げる。




「……………歳に似合わず(さか)しげなことだ。」


呆れたようなジト目でため息をつかれる。まあ……小賢しいと嫌われるよりはマシであろう。




「では、奮戦を。無事をお祈りしております。」

ぺこりと一礼を。無事に帰ってもらわねば困る。




なにせ、


「目一杯、雪斎坊主の目を(くら)ませてくだされ。」










働きどころは今ではない。









 さて……と、




平手様を見送ってよりしばし。


「では皆の者、それぞれ手筈(てはず)通りにな。ぬかるなよ。」




私達も()()を始めよう。








細工は流々、仕上げを御覧(ごろう)じろ。








「うぇっぷ」



………………………………………締まらんなぁ。



作風が第1話とは変わります。


まだまだ何が書きたいか分からないかと


思いますが、しばらくお付き合いください。





マメ知識


孺子(じゅし)


『孺』という字は「乳飲み子・幼子」という


意味があり、"か弱い"というニュアンスが付く。


『孺・子』で、"か弱い・子供"となる。



ただし、時代の流れとともにこの単語に


『クッソ生意気な・口先だけで経験も能力も足らぬ』


といった否定的なイメージが付くようになり、


いつしか中高年が若者を頭ごなしに否定・罵倒する


セリフの代名詞となる。



昨今で有名な使用例は


『金髪の孺子(こぞう)』(ヲイ)。





『細工は流々、仕上げを御覧(ごろう)じろ』



「しごとのやり方(流儀)は人それぞれ、


(文句なら)結果を見てから言ってくれ」


という意味となる。


時に「うっせぇわ!!黙ってろ!」という


ニュアンスで用いられることのある


()()()()の言い回し。




まあ、『そういうこと』である。

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