第191話 "古"都、大和(対上方施策その4)
対上方施策シリーズの最後です。
このシリーズは短めなので、更新サイクルも
短めとなっていました。
次からは少しばかりサイクルが延びるかも?
大和国。
近畿、畿内圏の中央に在る。
いわゆる大昔の『大和朝廷』の"ヤマト"であり、
今の奈良県にあたる。
昔に"平城京"が在った所だね。
今では政治から離れて久しいが。
大和国は、上半分は平野が多いのだが
逆に下半分は山ばかりという
何ともピーキーな感じの国である。
根本的なハナシとして。
何で大和国に平城京が築かれたか。
その理由とは?
―――――この一帯、平地が多いのである。
それもかなりの大平野である。
イコール、食糧生産が極めて安定している。
発展が簡単なのである。
しかも大和国は全面を山に囲まれている。
防衛もまた、容易なのだ。
中規模国家を造るには最適なのである。
中規模国家を造る分には。
…………………なら、何で朝廷は京に移転したの?
などと思うことだろう。
実はコレもシンプルな理由がある。
―――――坊主らの力が強くなりすぎた、のだ。
奈良と言えば、東大寺。
そしてソレに並んで建つ興福寺である。
東大寺は朝廷が建てた巨大寺院。
興福寺は藤原氏の菩提寺である。
どちらも持っている権力が強すぎるのだ。
そのために朝廷は彼らと縁の無い
山城国(京都)に新たに移転をすることになった。
トンズラした、とも言う。
――――――さて。
大和国の勢力といえば?
この頃は筒井家である。
大和国といえば後世に知られているのは
"ギリワン"こと松永久秀だが、
まだ彼は大和への侵攻を始めてはいない。
まだ筒井家がメインの時代である。
まあ、その筒井も当主が2年程前に死んで
今は逸話で有名な"木阿弥"の時代。
宙ぶらりんの状態ではあるのだが。
なお、この筒井家は興福寺の門徒である。
……………一応、ではあるが。
この頃の大和国の勢力図は、
ほぼ筒井家が一強状態であると見れば良い。
大和国については、今のところは特に変化ナシ。
今まで通りに興福寺などの
(生臭な)坊さん連中をカモにすること。
筒井家とそれなりに交易をしておいて、
敵対しないようにやりくりすること。
それ位である。
――――大和という国は。
放置するにはもったいない。
しかし統治するには面倒すぎる。
そういうトコロだ。
現在の大和国にはそこまでの重要性が無いのだ。
だから積極的には干渉を行う予定はない。
ココが注目すべき場所となるのはもう少し先。
三好の俊英、松永久秀が侵略を始めてから。
その瞬間から、一気に油断も隙もならなくなる。
今は監視だけでいいのだ。
あとは南の山間部に小さい国人連中がチラホラと。
彼らについては"目"だけを付けておいて
放置で良い。
基本的に山間部の国人連中は、
生きるだけで精一杯である。
周りの国人たちとケンカはしても、
率先して大きな動きをすることはない。
…………滅多に無い。
大規模な戦略的改新を行うだけの余裕がないのだ。
保守的なモノが多いからな。
だから"動く"ことにだけ注目していればいい。
動く者にだけ注目すればいい。
動くだけの決意が出来る勇者が、
『選ばれし者』だ。
大和にも"今の所は"店を出す気はない。
京と同じで絡まれる未来しか見えないから。
ココには今は伊賀経由の行商だけでいい。
もしくはあちらから商人を招くだけで事足りる。
特に大きくは動く必要はまだ無い。
―――――結局は何の事は無い。
畿内には直接的な手出しをしないということ。
長年に積み重なった歴史が有るが故に、
畿内の地には雁字搦めの柵が存在している。
そのガチガチの柵が強く排他的な環境を作り上げ、
新規参入者にはまったく優しくないのだ。
そういう閉鎖的な所は今も昔も、そして未来でも
日本はそうそう変わらんなぁ。
この状況を打破するには二つある。
力業で抵抗する間もなく一気に柵を潰すことと、
内にジワジワと浸透して中枢に食い込むこと。
前者が織田信長がやったことで、
後者が藤原氏や平清盛がやったことだ。
どちらにも強い抵抗がある。
長らく凝り固まった偏見のためも有れば、
自身の生活を護るためでもある。
抵抗があって当然なのだ。
この畿内における頑強な抵抗を貫くためには、
自分達の"政治的・軍事的な論拠"を
一緒に持ち込む必要がある。
身一つで乗り込んでは確実に潰される。
己の鎧兜と櫓を共に持ってこないとダメだ。
よって、現行では村田の畿内進出は無い。
天の理、地の利に人の和が。
その全てが無い状況で挑むなど無謀でしかない。
やるだけムダだ。
正直なトコロ、別に奈良については
ここで説明する必要はまったくない。
しかし今回は畿内と、上方と題してしまった。
つまり奈良を入れないとダメなのである。
しかし現行において奈良には特記すべきはナシ。
ありきたりな代物となります。
短めなのはそのためです。
マメ知識
『ピーキー』
英語で、"peaky"と書く。
山などの頂上を意味する"ピーク"の語系列であり
"尖った"や"針の様な"、"山の様な"という意味。
ここから俗語として、
"能力が極端すぎて扱いがすさまじく難しい"
という車両操作系の用語として使われる。
類義語は、"上級者使用"とか"じゃじゃ馬"など。
『ギリワン』
某"野望"のゲーム(初期)において、
松永久秀の隠しデータである"義理"は1。
ほとんど無いも同然の数値である。
ここから、松永久秀のアダ名が"ギリワン"となる。
"義理がONE"ということ。
そのためゲーム中での彼(CP)は、
寝返り工作などがかなり簡単。
逆に簡単に裏切ったりもする。
『木阿弥』
いわゆる"元の木阿弥"のこと。
2年前に当主が死んだ筒井家は、
継承者がまだ2歳の筒井順慶しかいなかった。
それを誤魔化すために、先代によく似た坊さんを
替え玉・影武者として利用した。
この坊さんの名前が"木阿弥"である。
筒井順慶が成人して家を継承すると
木阿弥は用ナシとなって、元の坊さんに。
殿様としていい暮らしをしていた木阿弥の地位は、
ただの坊さんに戻ってしまった。
このことを"元の木阿弥"という。
せっかく獲得した成功などを失って、
成功前の状態に戻ってしまう有り様を示す。




