表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鵬、天を駈る  作者: 吉野
2章、『◯◯◯◯◯◯』
16/248

第16話 村田屋、ある1日(其の一)

いわゆる番外編。

 ある日、思いついて店のほうの様子を見てみる。





店の前には大きめの広場を作っており、背もたれの


ないベンチとテーブルを幾つも置いている。








その前で村田から七つの仮設型の店舗を作って、


テーブルで飲食をしてもらうようにしている。


店自体は銭と品物の受け渡しのみ。




七つあわせた屋号を




曰く、


『 七 福 神 』。








いわゆるファストフードとフードコートだ。




が……この時代は火の扱いが怖いので、


(かまど)は一ヶ所に(まと)めて作り


そこを半円状に囲むように屋台を置いた。


そんなイメージをしてもらえばいい。





ラインナップは簡単な弁当から軽い一品物に定食、


飲み物はまだ茶の単価が高いために


『柿の葉茶』を試しに出してみた。


あれは何気に健康にいいからな。






それから忙しくて来られない商人(あきんど)たちには


使いを寄越してくれれば内容を書いた木札を渡して


後で宅配するサービスもしている。






頼む側の店としては使用人の(まかな)いに薪や時間


の消費を抑えられるとなかなかな好評だ。








 一ヶ所である程度には頼む物を選べ、なおかつ


白湯ではなくなかなかに(うま)い飲み物を


出してくれるとあって………………





最近では行商人たちが


集まって休憩がてらに腹ごなしをするように


なった。




あくまで自己責任で……という但書(ただしがき)つきだが


休憩場所や、簡易ながら素泊まりの宿泊所も


併設している。



それは重宝(ちょうほう)するだろう。






集まってワイワイと(うわさ)のやり取りをするため、


こちらは場所を提供するだけでタダで情報が


集め放題。








行商人サマサマだ。






立地条件が悪いからこそこういう大きな場所が


取りやすい。短所も使い様だ。




立地が悪いというなら町の入口で案内看板と共に


呼び込みを置けばいいだろ?








 むしろ町衆に誘いをかけて『自分の店の場所』


の表示と『商いの紹介』を置ける大型の看板……


それこそ町全てを網羅(もうら)する巨大な『熱田案内』、



いわば観光案内マップを共同で出資して


町の入口に作ったくらいだ。


マップをパネルで細かく分けているため、町が


様変わりするとそこのパネルだけ取り替えればいい。




後乗りで記載を望む者達には月極(つきぎ)めで銭を取って、


出資者で山分けしている。





結構に好評だ。






 今では案内板の前で通行などの邪魔にならぬ程度に


呼び込みがそれぞれの店の案内をする、というのが


見慣れた光景になってしまっている。




初めて熱田を訪れる者や、ひさびさの者は何事かと


目を白黒させるところまでが熱田の大門での


名物になっている。









 ぼんやりと村田屋のほうを眺める。



テーブルには数組、休憩がてらに命じられたウチの


"サクラ"が食事をとりながら話している。






業務命令だからな、


彼らのメシに費用はかからんぞ。



賄いがわりだ。





賄いを兼ねているからウチの『七福神』は


高いレベルで栄養バランスを考えている。







軽食ばかりだと栄養が片寄るからな。


ウチのも、行商人も。





偏食しないようにサクラにはそれぞれのメニューを


順に頼むように厳命している。









 店の前には二人、用心棒がわりにガタイのいいのを


雇って立たせている。





先を鉄で造らせた『刺股(さすまた)』を持たせており、


片手に丈夫に造らせた木の盾を着けさせている。


ウチでオリジナル制作した軽鎧を着させているため


まあ、目立つ。






時に子供にまとわりつかれて困っているのを


見かけたりして、クスッと笑われていたりする。











 少し前に冗談で二人をモチーフにして、


『厳めしくに立ったコイツらの顔を模した家守(やもり)


のゆるキャラを木彫りで造らせてみた。






わが()()る心強き、其の名も


『仁王家守』!!







ついでだからと熱田の神宮でお祓いをしてもらい、


木の台座に朱印を押してお札付きで


売ってみたところ…………………












  売れた。


 バカ売れだ。








あっという間に在庫が消し飛び、


(あわ)てて彫り師を集めて大量生産の体制を整える。





………………今度は形や造形の違いに味がある………



とコレクター魂でも刺激されたか?


木彫り人形単体でも売れ始める。








何でやねん。






お陰で村田屋の予想外のヒット商品となり、


定期的にデザインをかえた新モデルが


発売されている。







時々人形が買われるのをみて二人がビミョーな


顔をしているのは公然の秘密。









    熱田に来たなら家の護りに


     熱田名物『仁王家守』、


      買っていきな!!

其の一………で分かるとおり、シリーズ化する予定。


番外編のつもりではじめたのに、筆(指)がノって


気が付けば本編なみ。







マメ知識




『屋台とベンチ』



そのまんまデパート等でよくあるフードコーナー。


地味にトラックステーションの機能持ち。


宅配サービスまで付けている。




『観光案内マップ』



どちらかというと企業広告にあたる。


共同出資者の数をワザと絞っているため、


実はなかなかの収入がある。




『刺股』



「指叉」、「刺又」とも。


時代劇の捕り物で使われる、槍の刃先のかわりに


U字の金具を着けた例のアレ。


先で相手を押さえ込む。


なお、木の盾は少し大きめのバックラーを


イメージしてほしい。




『仁王家守』



二章の構想中に突発的に生まれたゆるキャラ。


人面ヤモリとかでなく、かわいらしくデフォルメの


された二匹のヤモリがおっさんみたいな面で


"キリッ"


とポーズを決めている感じ。


鎧、盾、刺股も装備してます。


仁王像と同じく『阿形(あぎょう)吽形(うんぎょう)』がある。


※口をカッと開けたのとキュッと閉めたもの。



何か時代を先取りしすぎた感と変カワ感とで


妙な売れ筋商品になった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ