第143話 弾正忠家と、大和守家(触り)
今回のオハナシの導入部分です。
『何があったか?』
の前の話題、『何をやったか?』という事の
触りの話です。
さて。
先程も言いました通りに、大和守家が動きました。
いえ、むしろ。
どうしようもなく派手にやらかしました。
…………………少し、追い込みすぎましたかねえ?
こうなってはもう、フォローのしようがないわ。
大和守家についてはもう破滅の選択肢、
その一択しか存在しない。
憐れな事よ。
…………内容については
少し頭の痛いハナシでありますので、
まずは経緯からお話します。
―――――――ご存知の通り、
大和守家は本来は弾正忠家の上司にあたります。
大和守家にとっては部下の三奉行の
ひとつでしかない、その筈の弾正忠家です。
ところがその部下の家が尾張で銭利権を握り、
上司を圧倒的に上回る破格の権勢を得ているのが
今の現状となります。
大和守家にしてみれば格下の部下でしかない家が
随分とデカイ面をしているわけですね?
其は不快なこと、極まりなし。
…………と、言うことです。
現在の両家の対立はコレが原点にあります。
――――どちらが悪いかと言われますと、
実は弾正忠家が悪いのですよ?
全面的に。
とは言うものの。
……………所詮は今の乱れた世で。
部下に隙を見せた大和守家がアホウなのですが?
つまり、大和守家は建前上において
未だに弾正忠家の"主家"にあたります。
こちらから故もなく大和守家を害することは、
主に背く不忠に該当します。
―――――まあ?
そんなワケで弾正忠家が動くためには
『明確な大義名分』が必要となります。
主たる大和守家を、
部下たる弾正忠家が"どうにか"するためにはね。
乱れた世とはいえ、ヒトの耳目は健在です。
ロクでもない風評を得ると、外部の者達に
ロクでもない目で見られるワケですよ。
これを見くびった為に滅びた一族は、
歴史上において川砂の粒の如くに存在します。
―――――案外に怖いのですよ。
ヒトの風評というモノは。
ともあれ、この話はこれくらいとしましょう。
要は大和守家を"どうにか"するには、
大義名分を仕立て上げる必要があるワケですね。
弾正忠家が自ら動かず、
悪名や泥を大和守家に被ってもらう事が
当方といたしましては必要となります。
――――――――ところで、勘十郎さま?
数年前から殿よりいただいていました
『年賀の祝い銭』は如何でしたか?
――――――お役に立ちましたか?
…………勘十郎くんの顔がひどくしかめられる。
真っ青な渋柿でも噛ったような顔だね。
そうさな、
随分とヒドイ目に会っただろうから。
「…………………………………ああ。
―――――――なるほど、成程?
つまり、そういうコトですか。
・・・・・はは。
それは大和守家も御愁傷様ですねぇ。」
―――――――――――どうやら話の展開に。
"仕立て上げた"内容に察しが付いたようだ。
ほとんど答えを言っている様なモノだからな。
まあ解らないとダメなのだが。
…………ではこの際ですから、
"仕立て"に予想の付いたであろう勘十郎さまに
ひとつ説明をしていただきましょう。
他の方はこの話については部外者ですからね。
皆に理解できるように、お願いしますね?
「…………………む。
――――はあ、わかりました。
ではひとつ説明をさせて頂きます。」
渋々に了承する勘十郎くん。
何のことやら何の話やらわからない一同と
面白そうな表情の三郎さまに、
元部下として感慨深げな柴田さま。
それぞれの顔を一回り眺めてから、
勘十郎くんが語りだす。
「大和守家が、何らかの理由で暴発したようです。
――――――――という事で、
その"何らかの理由"についてお話しましょう。
…………………………何せ、私も喰らいまして?
私と林の爺が膝を屈するに至った、
その主要なる原因のひとつでしたから。」
うーん。
何が起こったかは、後に語ることとします。
といいますか、
展開をビミョーに決めかねているのですよ。
現在、この話の後に続くのは2パターンあります。
次回がカッツ君の語りパートでありますので、
次までには決めたいとはおもいます。
『織田大和守家』
かつての超巨大勢力であった斯波家の部下。
斯波家が尾張守護、大和守家は守護代の地位にある。
副官的な立場。
現在、大和守家は斯波家を傀儡にしているが、
当の大和守家が坂井大膳に傀儡にされていたりする。
………という、なんだそりゃ?
なそんな状態にある。
なお、対外的には弾正忠家は大和守家に対する
"下剋上の実行過程"の状態にある。




