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鵬、天を駈る  作者: 吉野
6章、『○○○○○』
132/248

第128話 柴田さまと、異端なヤカラ




…………何故かは分かりませんが、


何やら妙なプチスランプでした。



何でか文章が浮かんでこない。


妙な難産でした。




お待たせしてすみません。








―――――――――村井家の四男。


アレは異質な小僧である。





その風聞は悪いの一言に尽きる。




ひとつ。



幼いころから好き放題。


武家の一門に有りながら商人の真似事をして、


薄汚い銭にすがり付き(こだわ)る。



使用人のみならず、


町から氏素性(うじすじょう)の知れぬ者を引き込み


街角の屋敷に集まっては何やらやっておるとか。



村井の家門を乱すバカ息子だと。






ひとつ。



父親の創った分家"村田"に(まと)わり付き


彼らから銭をせびる。



たびたびに村田が営む商家に訪れては、


共の者に銭の束を持たせ


帰って行くのを町の者に見られている。



一門がせっせと村井に尽くしているのに、


その足を引っ張る穀潰(ごくつぶ)しであると。






ひとつ。



いくら内務に偏った村井とは言え、


武家の一員であるのにまともに鍛練をしない。


何をするわけでもなく町中をぶらついてばかり。



同じ武家としていい面汚(ツラよご)しであると。






そういった役立たずの親不孝者、


どうしようもないロクデナシという噂が主流だ。


――――――()()()()()()()






しかし実像はどうか?




市井では商人との会合を


(しき)りにやっているとは聞いている。



尾張領内の商人たちと


一定以上の交流を持っているとの話だ。



身の程知らずの真似事風情で、


それが果たして可能なことか?



それは本当にバカ息子であるのか。







平手どのと共に美濃の斎藤家に赴き、


交渉に関わったとのウワサもある。



ただの臑齧(すねかじ)りの無能であるなら、


美濃の使者として同行することなど


到底許されることではない。



それは本当に穀潰し程度の器であるのか。







いくら乱れた尚武の世の中とはいえ、


腕っぷしのみ、力のみでは


世間は上手く回らないのは周知の事実。



天下を動かすには知恵もまた必要なモノ。


その事は歴史が証明している。




その事に目を背けて"武が足らぬ"とは、


いかなる妄言か?



武にのみ頼り文を侮り軽んじる。


それはどちらが面汚しであるのか。








城内と城外の話に食い違いが見られる。


どちらがどうとはハッキリとは言えないが。





実際に目にした印象はどうか?




(トボ)けた事をやってはいるが


儀礼作法は万全。



(ゆる)める所は緩め、締める所は締めて


場の流れを取り仕切る。



子供であるにも関わらず子供らしくはなく


ひどく落ち着いている。





何より先の評定での態度・行いはどうか?


軍理に明るく各将に的確な助言と指示を出し、


政略にも通じて領内の開発に主軸として関わる。




つい先だってまで尾張に在ったにも関わらず


状況を掴み敵味方を動かす。



その有り様はまるで北伊勢の軍師だ。




そして何より、


その事に対して誰も何とも思っていないこと。




最年少の小僧が智者の如くに振る舞う事に


誰も文句も違和感も持たないことである。



(あたか)も、()()()()()()()()()かのように。





それは北伊勢に来たばかりの


"佐々"の若いのですらもそうであるのだ。







即ち、これこそが小僧の真の姿なのであろうか?



何らかの理由でその事を世に伏せている。



……………そうであろうな。






家の家人と共にコトコトとまだ軽い足音。


戸口の前まで至り、引戸ごしに声をかけてきた。




"承諾(しょうだく)"の意を告げると、木板が開けられる。





「夜分、遅くに失礼します。


柴田さまは私とは馴染(なじ)みがありませんので、


()()()話の摺合(すりあわ)せをしておこうかと。」





仰々しい一礼の後に、その様に述べた。








史実でもそうですが、


柴田さまは別に脳筋一筋の武将ではありません。



内政だってそれなり以上にはこなしています。




たとえそれが部下の功績でも、


内務の重要性を理解してそれを配下に任せるだけの


度量があるなら別に問題は無いのです。




それが上に立つ者の行いです。



全てを自身でやる必要など、


一方面を任された司令官にはありません。



身が持ちませんからね。






まだ経験が浅いので


今はまだ"それなり"程度でしかありませんが。







『村井藤四郎の風聞』




柴田さまがこの誤差に気付けたのは、


あくまで彼が"弾正忠家の所属であるから"。



他家の所属では、表層の"武家の風聞"までしか


届かないようになっている。



(彼が美濃に同行したという情報は、


弾正忠家でしか取得できない。他家ではムリなこと)




そもそも当時の人間の風聞に、


"表層"と"深層"がある方が異常なこと。



普通では"表層"で判断を終えてしまう。






『尚武』




軍事を重要視する思想のこと。


要は予算配分で軍部が予算を多く取るための名分。






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