第13話 妙見丸への、恩賞
第2章、『◯◯◯◯◯◯』の開幕です。
◯の数が1章、2章ともに6文字なのは全くの偶然です。
後から気付きました。
特には意味はありません。
「……………父上、これだけの事を成した妙見丸に
褒美が無しというのは……」
三郎五朗様が口にされる。それはそうだ。
放っておけば、
『秘して命じられた任はタダ働きでいい』
という悪しき前例になりかねない。
それは上に立つものとしては見過ごせなかったろう。
「ああ、問題はないのですよ。少なくとも今回は。」
こう口に出すと疑問を顔に出される三郎五朗様、
そして平手様。
やはり"貰う側"としては気になっていたようだ。
古今東西にタダ働きは遺恨にしかならん。
が、先ほども言ったように問題ない。
そう、今回の場合は。
なぜなら、
「既に、前払いで頂いているからです。」
「前………………払い?」
何とも、心底に顔に出される平手様。
曰く………
「前払いとはそんな話、
聞いたことがありませんな。」
……………………言った、実際に。
それはそうだろう、恩賞の前払いなんて普通あり得ない。
失敗してもいいと言っているようなものだからだ。
これが通常の恩賞なら
「大丈夫だ。
なんせ儂はこやつに物はやってない。」
殿がキッパリと言いきる。
つまり……先んじて与えられた恩賞とは、
口約束である。
「私が頂いた恩賞は4つ。
ひとつは勝利の暁には
荒川山に坊主を派遣して頂くこと。」
殿に三河の勝利のダメ押しをして頂くことである。
これは既に果たされた。
「ひとつは『村井の数寄者』と言われる私の行いに
お墨付きを頂くこと。」
武士として奇人変人扱いの私の行いに、
『殿のお墨付き』という論拠を与えることだ。
なんせクソ野蛮なくせに頭ばかり固いこの時代、
これはありがたい。
「ひとつは私に津島・熱田の町衆と
『織田家の名で』交渉、折衝する権利です。」
実のところ、最も欲しかったのがこれだ。
無論、織田の名前を使うならば事前に内容を伝え、
相談しなければならないが。
『 報 ・ 連 ・ 相 』 ってな。
「こざかしいことにな………こやつは
『許す』と言った途端にそれを求めて来おった。」
からからと殿が笑いながら言われる。
横からお二人のジト目が注がれるが
そのようなこと、
「小僧と侮って言質を取られる方が悪いのです。」
そ知らぬ顔で流す。ま、そういうことだ。
そもそも許しがなければ先の策を成せなかったのだ。
必要経費と思ってほしい。
「最後に私が村井の分家を起こす許可です。」
「……………分家? 何故?」
平手様が尋ねられる。――――だが、
「まあ、考えるところがある訳………ですよ。」
肩をすくめて、はぐらかす。
だが、
残念だが、言っても武士にはわからんだろう。
最後まで見ないとわからない1章に比べて2章の
伏せ字はまあ、分かる方もおられるかも。
マメ知識
『報・連・相』
報告・連絡・相談の略。
最近は『確認・連絡・報告』の"かくれんぼう"
がいいとも言われるが、今回の場合は上司の名前
を使うために重要なのは『報告』と『相談(説得)』
になる。




