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鵬、天を駈る  作者: 吉野
6章、『○○○○○』
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第124話 柴田さまと小僧な面子




完全な新キャラ"柴田さま"、


入ります。



………ところで、柴田勝家の印象と言えば?








直属として在るは、昔から三郎さまと共に


野山を駆け巡って来た元手下衆。



与力として柴田 権六郎 勝家どの。


ついでに私と佐々 内蔵助 成政のアンちゃん。




これが北伊勢直轄領の陣容である。




・・・・・ひとまずは、柴田さまだけしか


借りれなかったともいう。







さてさて?


性急(せっかち)なところのある三郎さまに


呼び出されないうちにさっさと、



「三郎さまが皆に集まるようにと。」




・・・・・・・・やれやれ。





安濃津、城の奥まった所に在る広間。


皆が集まる所に(おく)()せながら行く。


箱を乗せたお手製の台車をガラゴロと転がしつつ。



―――――少々、遅れたようですね。


いやはや、申し訳ない。



入り口で一礼をもって入り、末席につく。


箱の中より30ほど、


タイトルを上にした竹簡の束を並べて。



相変わらずの珍奇そうな視線と、


不躾(ぶしつけ)なモノを見るような柴田さまの視点。



――――柴田さまは私とは交流無いからねぇ。


体育会系のこの人には私の在り方は、


相性が悪いかもね。



この場でキッチリと説明しておこうか。






まずは話題は北畠との安濃津攻防戦に。


竹束の中から三つ選んで、ジャラリと開き並べる。



「 小 僧 ォ ッ !!


主の前でその態度は何だァ!!」


広げたところで、


柴田さまが"ドカン"と床板を右の拳を叩き付け、


虎の如き勢いで吠えた。



――――――――(およ)そ、予想通りに。








先ずは一礼。




―――お気を悪くされたならば謝罪致します。


三郎さまと柴田さま、


そして皆様に非礼をお詫び致します。




…………ところで、柴田さま。


この竹簡の束がどの様なモノか、ご存知ですか?





「……………どういうことか?」



この御仁は、勇将ではあるが蛮将ではない。


理をもって語れば話を聞いてくれる方だ。



それゆえに、"利"ではなく"理"をもって語る。







私は先程まで北伊勢に居りませんでしたから、


北畠との(いさか)いが如何(いか)に推移したかを存じません。



知らない以上は、人伝(ひとづて)でしか知り得ません。


人伝となりますと、


どうしても話し手の主観が混ざります。



結果として正確な話の伝達が


阻害される可能性が出てきます。




先の戦の折に、


柴田さまも気付かれたかと思われますが。




竹束に何やら書き連ねている者が数人、


傍に居りませんでしたか?






北伊勢の方では、


幾つかの新しい試みを行っておりまして。




コレはその中のひとつ、


"観戦書記"という制度です。



戦において原則として三人の者を同行させ


彼等に戦の経過を精密に、客観的に(しる)させます。




少しずつ主観が混じっても、


三つ有れば客観性は得られます。




正確な戦の記録は、大変に貴重な情報です。


これを各将に共有させれば、


間接的に戦の経験が得られます。



敵方の戦の傾向や、"指し手"としての方向性。


将としての性格とそれがもたらす"戦の癖"。




―――――――柴田さま。


これは大変に重要な事かと存じますが、


どの様に思われますか?






「―――――む。



斯様(かよう)な物が有ればまさしく万金にも勝る。


…………成程な、その竹束はその記録か。」





はい。



"知らぬ"以上はその情報を極めて厳密に、


そして客観的に集める必要があります。



今回の話し合いが終わりましたら


柴田さまにお渡しします。



この中では戦に最も長じた柴田さまを中心に


北畠の戦の傾向と癖を議論してみてください。




"敵を知り己を知れば"です。


皆様で北畠方の持つ


『付け入る隙』を見出(みい)だして下さい。



それをまた、尾張の弾正忠家の皆にも


共有させたいと存じます。




「……………………そうか。


それが上手く行くかはともかく、


取りあえずはやってみるがいい。


役に立つなら、其は(つわもの)の力と成ろう。」




――――ありがとう御座います。


無論、私とて最初から成功するなどと


(おご)っては居りません。



順次、計画の試作と調整、改善と試行とを


繰り返しながらの事となるかと。





この三十近くの竹束は戦の記録だけでなく


北伊勢で行われた内務の記録も含まれています。



今は只管(ひたすら)に数を行わせております。




――――何れは満足出来る結果も得られようかと。






「―――――それは心強いことだ。


………期待せずに待つこととしよう。」







・・・・・ありがとうございます。








皆様もご存知かと思いますが、


柴田 勝家は超体育会系です。



体育会系の者は礼儀に厳しいために、


秀貞の坊の奇行とかモロに腹を立てます。



このヒトもややこしい方ですので


最初から利で語ったりすると


史実の秀吉との関係みたいに思いきり(こじ)れます。



まずは理から始めないと。






"コイツはそういうヤツだから………"


正直、柴田サン以外は全員そう思っています。




少しずつ、慣らしていくわけです。



なお、秀貞の坊は礼儀が無いわけではありません。


使うべき時はキッチリ使います。






マメ知識




『観戦書記』



文官らしいロジック。



戦闘データを蓄積させて、


"傾向と対策"を得ようとする試み。



"成功さえすれば"かなりの収穫となる。





『敵を知り己を知れば』



百戦、危うからず。


ご存知、"孫子"の一文。



ちなみに現在に伝来している孫子は、


三国志の曹操の注釈本のモノ。



つまり"孟徳新書"であるとされている。


原本は遺失。


(もしくは秘匿)





『計画の試作と調整、改善と試行』




つまりPDCAサイクルの事を言っている。


Plan(計画立案)→Do(試行)→Check(確認・改善)


そしてAction(行動・)を意味する。



Actionが済んだらまた新しいPlanを練る。


そういう改善の流れ。





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