第112話 北伊勢基礎構想、軍務と政務
軍・政における具体的な方針となります。
北伊勢における基礎的な戦略の説明ですね。
国人たちが激減した北伊勢の政務の話にも
入ります。
さきほどの話にも出ましたが、
対六角のためには"千種"と"関宿"辺りに
防衛用の軍事拠点を造らねばなりません。
"千種"拠点にて『八風街道』と『千種街道』を。
"関宿"拠点にて『東海道』の鈴鹿の関所を、
それぞれの要害に砦を築き軍事的に封鎖をします。
この三つの砦は少しずつ増築を行い、最終的に城に
……………いえ、要塞にまで発展させます。
この防衛二拠点に、
守勢に優れた将を一人ずつ配置します。
将来的には安濃の商業城下町にも
"李部"北伊勢支部を置くことになります。
三砦には、伊勢の常傭兵を
交代制で1000人いつでも常駐させておきます。
現地での訓練などを兼ねながらですね。
その他の者は休養させたり普請に参加させたり。
その辺りは尾張と同様です。
北伊勢の南方の、北畠との境界である安濃川には。
この川沿いにある"安濃津"の城を大きく西に
拡大させて支城を増やし巨城に仕立てます。
長野家が運用していた対北畠防衛体制を、
更に高度に運営するかたちですね。
ここで北畠勢を一度受け止め勢いを殺した後に、
強烈な反撃をもって北畠を敗退させます。
敗走する北畠勢を追うフリをして彼らを追走。
その勢いを利用してそのまま北畠の次の拠点、
北に突出した木造城を落とします。
そうですよ。
最初からココを落とす、万全の準備をします。
そうして雲出川以北の領地を実効支配する。
ここで先程の話。
名門の"名"を護るために、ここを棄てさせる。
晴れてこの地は私達の手に。
これで伊賀の百地さまの領地への街道が、
一つ手に入ります。
そして北畠は屈辱の極致に至りますねぇ。
近い内に必ず復讐戦に参りますよね?
後は少しずつ、無理をしない程度に北畠の領地を
ジリジリと削り続けます。
都の使者どのが忖度を止めるまで。
――――――のんびりと行きましょうや?
この対北畠戦略を実行するために、
殿から"柴田 権六"どのをお借りしましょう。
数え29歳と未だお若いながらも、
豪勇で知られた勇将です。
三郎さま一味には、戦の経験が浅いですから、
大軍を運用する北畠と対すれば覚束ないでしょう。
皆様には弾正忠家の英傑の下で経験を積んで、
一人前の武家として独り立ちしてください。
――――――――さて、
ここからが本題となります。
現在、北伊勢では統治していた四十八家の内
三十五家が断絶・消滅しております。
これによって北伊勢の政務機能が死んでいます。
このままでは北伊勢がガタガタに荒れますので、
政務機能の復旧が急務となります。
―――――――などと少し、脅してみましたが?
確か言いましたよね?
提出した事業計画書に、
『その後の事後政策まで突っ込むスキの無い』
そのようなモノを作り上げたと。
そもそも北伊勢は新しい政務体制の
実験場となる予定だったのですよ。
最初から。
先にも言いましたが、
北伊勢は元来の領主が居ない状態です。
ですがこれは好機でもあります。
今まで国人・地侍などと、ちっぽけな縄張りで
区切られバラバラであった北伊勢を
巨大な一つの区域として見ることが出来ます。
一つの区域として一括して開発が出来るのです。
領主ごとに個々に文句を言い合い、
自分達の身勝手な主張をぶつけ合うことで
計画が挫折・妨害をされることも有りません。
巨大な溜め池を造ることも。
村々に均等に水路を行き渡らせることも。
川沿いに上流から下流まで一気に堤防を築く事も。
新しい大水路を掘り進める事も。
幾つもの村が共有で使える大型施設を造る事も。
新たに地方を跨ぐ一大開墾計画を練ることも。
今まで手付かずだった湿地を、美田に変える事も。
そして小さく細かく個々に耕された田圃を、
一つの巨大な大水田に変えることも。
これらを"李部"の力を借りながら、
圧倒的な人数で一気に切り拓きます。
こうして、北伊勢の生産力は大きく拡大します。
地方ごとの生産効率が大幅に上昇するのです。
これで北伊勢が豊かになる事が出来れば、
弾正忠家の力は大きく増します。
これが弾正忠家の次世代の開発制度。
"開発代官"というモノの原型となります。
この制度は"代官"の名の通りに、
それぞれの領主から開発を任されます。
この代官は、開発のみを担当します。
領地の政務には関わりません。
複数の領主から任されることで、
代官の任地は大きな地域となります。
こうすることで北伊勢と同じく、尾張でも
大規模な開発を行う事が出来るようになります。
尾張は巨大な大平野ですから、大規模開発を行った
効果は恐るべき結果を残すことになります。
また、複数の代官が協力する事で
長年に渡り民を苦しめる尾張の暴れ河に対して
一大治水工事・大型の用水路工事が可能です。
この制度はまだ試作段階です。
完成して制度が成功すれば、
尾張の石高を倍増させることも夢では有りません。
そうなれば、
弾正忠家は近隣を圧倒する超大国となります。
斎藤も六角もこちらを恐れ伺うような強国にね。
前半が軍事計画、後半が政務計画です。
前半は前話の補足。
具体的な北畠への侵攻計画となります。
その最中にナチュラルに引き込まれる柴田 勝家。
おかしな反乱分子に巻き込まれない内に
こちらに引きずり込みます。
"かかれ柴田"が北畠への鬼札にして切り札。
三郎さま一味を彼らの下で経験を積ませる。
まさに一石二鳥。
後半は、"開発代官"という概念の話。
第63話の『見返しの三太』に出てきた"代官"。
このプロトタイプに相当します。
"村"レベルでなく"市"や"県"レベルにおける
超大型開発の実行。
これは中世封建体制では実行不可能な行為。
北伊勢において領主がほぼ全滅したために
初めて可能となった行為です。
北伊勢は圧倒的な生産力を獲得できる可能性が
これによって生まれます。
マメ知識
『千種城』
この城跡の住所は
"〒510-1251 三重県三重郡菰野町千草851"。
現在は空堀の遺構と記念碑が有る様です。
気になる方はどうぞ?
『関宿』
東海道の宿場町の一つ。
昔ながらの宿場町の姿が残っています。
観光に良いかも知れません。
『安濃津城』
今の津城です。
藤堂高虎が改修したために、当時とは完全に別物。
築城の大名人、藤堂さんの城を見るのも一興かと。
『木造城』
津市の木造町の真ん中、田圃の側にあるそうです。
………城跡が。
具体的な住所が出ません。
土塁の跡がわずかに残り、石碑と案内板があり。
………重度の城好きはどうぞ?
『百地の領地』
実は名張市にあたる。
名張市も昔は伊賀国の扱いでした。
正直、最初は作者も知りませんでした。
『柴田 勝家』
実はまだ若手に入る。
まだ華々しい武功はないが、実力は確か。
実質的な青田買いにあたる。
未来の織田家最強は伊達ではない。
『鬼札』
花札におけるジョーカー。
これは引くと何にでも変換することが出来る。
そんな超ラッキーな札。
11月の札で、"赤と黒の雨の札"がこれに相当。
鬼や雷を示しているとか。




