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鵬、天を駈る  作者: 吉野
5章、『○○○○○○○』
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第99話 北伊勢よりの、火種




尾張の帰り道で聞いた報告。


報告を聞いた後に・・・。



何かノンキに動いているな?








翌日の昼すぎ。



ノコノコと殿のところにお邪魔する。


武家武将の誰もいない城の中。




当たり前だが軍議は、


昨日の内にとうに終わっているそうだ。




伊勢の異変については私と同時に殿のところにも


話をもって行くように指示をしていた。




そのために"あちら側"の軍議が終わった直後に


こちらに話が届く。





―――――――何故、その様に話が早いかと?




現在、弾正忠家に(やいば)をむける可能性があるのは


尾張内の各種織田家と伊勢の連中しかいない。




三河は松平家が壁になっており、


今川・反織田勢が介入する余地がない。



(ついで)にいうと安祥の城下町が


大型商業都市になってきており、その恩恵が


三河中に届いて対織田の不穏分子が


順次に消滅しつつある。


正しくは、()()()()()()




(つら)くて苦しくて悲しくて(ひもじ)いから不満があるのだ。


それが薄まれば、安らげば。


いくら()()()()き付けても不満の火は立ち消える。




悪いのは苛政(かせい)だ。


なら改めればいい。



西三河には全土に農業開発支援をかけている。



生産性そのものが上がれば同じ土地でも


暮らしは楽になるというものだ。




――――――何?


税が上がれば意味が無くなる?




………そんな無能は排除されても仕方ないよな?



後は知らん。





美濃については斎藤家と同盟を結んだばかり。



斎藤家は美濃の不穏分子を押さえる義務が生じる。


同盟というのは、締結直後は絶対の安全性がある。



―――というより、ここで破るバカはいないから。


破ってしまえばもう信用取引の類は、


もはや二度と成立しなくなる。



『だってアイツは信用出来ないし』となるのだ。





ゆえに美濃はほぼ危険がない。


…………この状態でも"ほぼ"なのが悲しい事だ。






結果として今、織田弾正忠家への害意を持つのは


上記の二種となる。





なら。



わかっているなら耳を澄ませるのは当然の事。



伊賀の方に依頼をかけて、


連中の足元に耳を置いている。



『命を粗末にするな。バレない事こそ肝要だ。』


これを言い聞かせて、


絶対に帰ってこいと厳命してある。




高高度技能者を、命を使い捨てにするとか


なんて勿体(もったい)ない事よな?



(ほとけ)さまだってそれは怒るぞ?




などと話して聞かせると彼らは驚く。


どんな粗末な扱いをされてきたのやら。




そんな連中、その程度の(やから)など。


こちらから見捨てて、見離(みはな)してしまえ。



と言ってやれば、泣き笑いの顔をしていた。






―――――話がズレたが。




そんな感じで連中の情報は、


限りなくリアルタイムに近い状態で流れてくる。




ある意味において、


向こうよりも早くリアクションも出来るわけだよ。







「ずいぶんと、呑気(のんき)登城(とじょう)だな。


もう皆は動いておるぞ?」




などと殿が揶揄(やゆ)する。



まあ確かに、皆は防備のために動いていますね。




ですが戦に出ない、出るつもりの無い私には


あまり関係の無い話です。



…………出ても役に立たない、とも言いますね。





よって、急ぐ必要がなかったのです。





「口の減らんことだ。



―――――――――で、


状況はわかっているな?」




ええ。



伊勢の連中の侵攻。



目的は急激に豊かになった弾正忠家への


略奪による小遣(こずか)(かせ)ぎ。



―――まあ、狙いは津島あたりでしょうか?





参加した家は"北勢四十八家"のうち三十五と、


"関"と"長野"そして"神戸"。




"北畠"以外のほぼ全部が動いた感じです。


その分、万を越えるかも知れませんがね。





大本命の北畠が動かないのは良いことです。



北畠に長野と仲違いさせるような噂を流したのが


効果があったようですね。



元々、因縁のある両家ですし。








おおよその戦場予定地は、


"桑名"を越えた長良川の川岸あたり。



津島の西あたりかと。





桑名に手を出すほどアホウではないでしょうから


桑名は素通り。



"長島"はまあ、意図的な形で


中立にでもさせておけば良いでしょう。



下手に味方に付けようと交渉するよりマシです。




織田の各家が連動して動く可能性がややあり。



ひとまずは流言飛語で多重に錯綜(さくそう)した情報を


垂れ流しておきましょうか。





噂に混乱している間に防備を固めます。



むしろ動くなら、ペテンにかけてもいいですね。






"李部"から、長良川の戦場予定地へ


"黒鍬(くろくわ)"を向かわせて先行して野戦陣地を


5~6日築かせておきましょう。



同時に向こう岸には戦術的に


徹底的に不利になる工事を仕掛けます。



ズタズタに荒らしておきますよ。





連中が来る前日には撤退させます。


………残りは兵達で構いませんね?





最後に、


『伊勢懸案:否式・丁のろ型、4番』。



これを用いた今回の戦は


()()()()()()()()()()()()()、そして


()()()()()()()()()()()()()を目的とします。




他の将達には上手く話しておいて下さい。


重要なのは堅守すること。温存すること。




そして、


()()()()()()()()()()ですね。








今回は、全面的な説明回となります。


前回で(にご)した伊勢からの情報です。




今回の戦術プランは『伊勢懸案』。


内容はこの先で。



お楽しみ?に。





マメ知識




『各種織田家』



織田家には守護代たる惣領の伊勢守(いせのかみ)家、


その部下で又守護代の大和守(やまとのかみ)家がある。



弾正忠家は更にその部下。


ニ家は潜在的な敵である。




『苛政』



字をバラすと、"ひどい政治"。


つまり極端な悪政。




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