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大人の童話  作者: 大人の童話
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老女とオウムだけが知っている女王の秘密

信号を無視して走る人たち。

クラクションを鳴らす車。

赤や黄、緑といった色とりどりのネオンが不快感ともいえる高い気温と高い湿度の

中、燦々と輝き、町を彩っていたんだよ。

でもそれはあくまでも表の顔さ。

ちょっとばかり裏通りを歩けば、今にも壊れそうなアパートの小さな窓から洗濯物を

干していたり、薄汚れた洋服を着た子どもたちがいたり、痩せ細った野良猫が餌を求めて歩いたんだよ。

みんながその日を生きていく事だけ考えていた。

なあんにも無くって、町の喧噪とは縁がなかったんだ。

それがあの場所の本当の姿さ。

あの子はそんな裏通りの中で一番って言ってもいいくらい、長屋にいたんだ。

長屋はヒビだらけで、ジメジメして、一日中光なんて当らない暗いところにいたんだよ。

いつ産まれたのか、いつからそこにいるのか…。

そこに居る事すら誰も知らなかった子だった。

その子は部屋から出ることもなければ、子どもらしく泣いたり笑ったりすることもなかったからね。

でも、ある日その子に大きな変化が訪れたんだ。


その子の存在を周りが知ったのは、その子にお迎えが来たときだったんだ。

真っ黒で大きな車が狭い路地を通って、その子の部屋を開けて迎えに来た男が三人ば

かりだったかねえ、抱き上げて車に乗せたんだよ。

「あれはどこの子どもだ?」「奴には子どもがいたのか」なんて声がいろんな所から

聞こえてきたもんさ。

普通の子どもなら、いきなり知らない人が来て連れて行かれようもんなら、泣き叫ぶ

んだろうけれど、その子は何にも言わず、抵抗せず連れていかれたんだ。

なんでかって?

その子には名前もなければ、話す術も無かったからだよ。

だから迎えに行った男達はこう呼んだんだ「女児ニューアル」って。


女児が連れて行かれたのは、あの裏通りじゃ普通の事さ。

どうしようもない父親がいて、毎日飲んだくれて食事だけ女児に与えて、一言もしゃ

べらず、相手もせずそのままだったんだ。

父親は金が無くなってどうしようも無くなったから女児を売ったのさ。

でも女児の母親が誰かなんて誰も知らない。父親も何も言わなかったからね。

男達にしてみれば、そんな事はどうでもいいから聞きもしなかった。

だから女児がいつ産まれて何歳で…なんて事もわからないまま、置屋に連れていった

んだ。


ここまで一気に話すとおばあさんは「ふー」と一休みをして、シュンシュンと音を立

てるストープの上のやかんを持ち上げ、お茶を入れました。

おばあさんの部屋はストープをずっとつけているせいで、とても暖かくなっています。

お茶を少しずつ飲んでいるおばあさんの姿を、雪が降って少しばかり薄暗い窓際の大

きめの籠の中から美しい色をしたオウムが見つめています。

オウムはただただ、おばあさんのお話とその姿を見ているだけです。

お茶を飲んで一息ついたおばあさんがオウムを見て言いました。

「さて、続きを話そうかねえ。」

オウムは何も言わずおばあさんを見つめています。


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