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捏造の王国

捏造の王国 その44 GO TO 国会 OR アメリカ!どちらにいっても地獄なのか、ガース総理の暗雲スタート

作者: 天城冴

意味不明、論理不整合、前後矛盾の国会答弁で野党のみならず、地獄の書記官という人外に、しかもプライベートのくつろぎの場でも追及されるガース総理。ドランプ大統領再選及び大統領自らのご招待に浮き立つが、地獄の書記官の身も蓋もないご指摘を受け…

猛暑の次は急激な寒さとアップダウンな気温に四季ある国はどこへやらのニホン国。気候と同じくハチャメチャな政治状況に慣れすぎた国民の緩い政治的関心に胡坐をかき続けていた官邸でも、忍び寄る暗雲にヤキモキしていた。

『どうですかあ、慣れないアニメセリフを喋って白けられ、前後矛盾だらけの答弁でジコウ党のお仲間にまで不安視される国会は楽しいですかあ?自著も改ざんして、都合のいいことを隠すなんて流石ガース総理ですねえ。そんなことしたって、前の著書持ってる人はすぐわかりますよねえ。せめて回収して焚書すべきでしたねえ』

相も変わらず謎の自称“地獄の書記官”の声に悩まされるガース総理。声を無視して

「いや、学術ニホン会議任命問題で多少騒がれたとしても、雇用を維持すれば大丈夫だ。国会答弁について、いかに陰でバカにされ危ぶまれようとも、最低の食い扶持さえ与えておけば、どうせ下級国民どもは文句をいわないだろう。ゲームにライトノベルなどの暇つぶしを与え、難しい書物を読ませないように適度にブラック企業で働かせればなんとか」

と、鎮静作用のある茶を飲みつつ、穏やかどころか庶民真っ青なセリフを吐くガース総理。が、

『あ、無視しようたって駄目ですよお。にしても緑茶飲みながら黒いお話ですねえ。地獄のようなコーヒーよりもブラックですねえ』

と湯飲みに浮かぶのはニヤニヤした中年のオジサン、地獄の書記官の顔。

「ぎょええええ、や、やめろ!茶が飲めないじゃないか!」

『無視するから、鏡でなくて水鏡ならぬお茶鏡にでたんですよお。そんなことも予測できないなんて俯瞰的総合的判断が泣きますねえ』

「そんな妖怪の出没予測なんてできるか!妖怪漫画家じゃないんだぞ、私は!」

『世界的に有名な妖怪漫画家が聞いたら嘆きますよ、だいたい国民で妖怪好き多いじゃないですかあ。新型肺炎ウイルスよけに妖怪アマなんたらを持ち出すぐらいですし、呪術的思考っていうのが、お好きですよねえ。まあ、あんまりガチガチに理性的、論理的思考ってのをやられると私らの出る幕がないですけどお。西洋的先進国なのに非論理的、法律ガン無視ってのは、不味すぎじゃないんですかあ。ウイルス対策もせずにぃ電話料金下げとか、任命拒否とか、正式に総理になってもいないのに外遊とかあ』

「ウルサイ!こ、国会は開いたからいいんだ!支離滅裂答弁とか、スカスカのカス・ガースとか、無能総理二世とか言われようとやることはやってる!GOTOだって、経済をまわしさえすれば、なんとかなる!どうせ新型肺炎ウイルスには私たちは罹らん!」

『根拠もなしにそんなことよく言えますねえ。せめて疫病の神様に聞いてみた方がいいんじゃないですかあ。まあ、聞いたらかえって怒り出してすぐ第二波だか第三波がきそうですけど』

「なんてことを!私が来ないといったら来ないんだ!パンデミックだって、地震だって!」

『あ、長官時代にオーサカの議員さんに南海地震なんて来ないなんて、いい加減なこといったそうですねえ。呆れちゃいますよねえ、地獄の住人も無知蒙昧、傲慢さに唖然ですよお。いっそ、なんちゃら構想投票日に一発、メイジの党への懲らしめにもなるから、地を揺らすかあって意見もあったんですけどねえ。それはさすがにねえ、他にも被害でますから。アホな住民の責任は自らでとらせるか、まあ地獄行きが多少増えるけどってのが、多勢を占めまして。地獄で皆さん少しは冷静な思考が身についたらしくてね、ニホン国の生者どもと違ってマトモな意見が大半ですよ。ある意味更生に最適ですよお地獄は。あ、長官じゃない総理もこられますよねえ、お知り合いもお待ちかねですよお』

「不吉なことをいうな!私は各国のトップのもとに行くのであって」

とガース総理が独り、大声をあげていると

「そ、総理、そのドランプ大統領から」

とおずおずと入ってきたのはニシニシムラ総理補佐官。

「(ま、まさか、今のを、聞かれていたか。なんとか取り繕わなければ)あー、ニシニシムラ君、ちょっと今、グループ記者会見のための録画とりの練習をだな」

「お、お邪魔して申し訳ありません。ですが、ドランプ大統領から、その直々のご招待が、お互いの当選を祝いたいと」

「な、何、わ、私がホワイトハウスに呼ばれるのか」

政治家を志し、幾年月。根回し、隠蔽、談合、会食、裏工作にエトセトラをやりつづけ、ようやく宗主国もとい世界の大国のトップとじかに話せるという栄光をかみしめるガース総理。

しかし

『いいんですかあ、あのドランプ大統領ですよお、選挙後のアメリカですよお』

と、再び聞こえる嫌な声。

「な、何だ、なにか文句でも!」

と、思わず叫ぶガース総理。

「あ、あの総理」

ガース総理の様子に困惑するニシニシムラ総理補佐官。

「あー、すまん、ニシニシムラ君。ちょっと嫌なことを思い出して、つい声を荒げてしまった」

「そ、そうですか。だいぶお疲れなのでは」

心配そうな様子のニシニシムラ総理補佐官に

「そ、そうだな。大統領からの招待となると、アメリカ行きの準備をしなければな。かなり大変なことだから、少し休むか。しばらく一人にしてくれないか」

「は、はあ…今までもお一人でしたが…。そ、そうですね。僕らも急ぎ準備にかかります。日程などは調整ということになりますが、その今直ぐにいかれますか、巷の噂でもパイデン氏ならともかく、ドランプ大統領当選なら、すぐ総理が渡米すると言われてますが」

「な、なんだね、すぐにアメリカに行くと何か不味いことでも」

「そのう、国会開催中ですし、何分今のアメリカの状況では」

「何、大統領選の直後で…、ま、まさか!やはり自称当選なのか!」

「と言いますか。パイデン候補の票が多数といわれている郵便投票の集計がまだ終わらず、さらにドランプ支持者が郵便投票の箱を奪っただの投票所でパイデン支持者を威嚇したことが報道されまして、その…さすがに問題に。しかも“投票所やパイデン氏支持者集会近辺でのドランプ大統領支持者の妨害行為は選挙違反!ドランプ大統領が妨害行為を煽っているのだからドランプ大統領の再選は無効!”とパイデン支持派は主張してまして。それに対してまたドランプ大統領派が暴力で黙らせようとし、それに対抗してパイデン派も武器を取れ、と互いの応酬で、そのう」

「つまり、混乱というか内乱というか、内戦寸前かああ!」

思わずムンクの叫びを真似するガース総理。

『あ、よく似てますねえ、特に頭頂部が。ほぼ若人キャラしか出てない漫画、“滅鬼の日本刀”の真似よりいいですねえ、絶望感がヒシヒシと伝わってきますよお』

との声が

「あ、ニシニシムラ君、その件はだな、ほ、他の閣僚やらジコウ党の幹部とも相談して」

「わ、わかりました、すぐに皆さんに連絡をいれて、そ、その、招集をかけます!」

ニシニシムラ総理補佐官があわただしく出ていくと

「なんてことを言うんだ!ドランプ大統領の再選と私の総理就任が絶望なんて!」

『あ、酷い。超有名でホントに才能ある画家、ムンクの絶望になぞらえてあげたのにい』

「だから、なんで絶望なんだ!」

『え、だってえ、あのアメリカですよ、ホントに貴方って、思慮が足りないというか』

「だから、それが余計だ!だいたい何が心配だ!内戦不安があるとはいえ世界一厳重な警備がされている場所にいくんだぞ!しかも世界一の大国の」

『お忘れですかあ、あの方新型肺炎ウイルスに罹ったんですよお。しかも周りの人もうつりましたよねえ。しかも自分の言動で国を内戦状態にしたも同然の方ですよお。そんな“危険すぎるアホ”に会いに行って大丈夫なんですかあ。ハグされたり、握手されたりして。それにい、一触即発なら皆さん他の場所にいけないからホワイトハウスに缶詰め、三密ですよね、ウイルスの移りやすい、さ、ん、み、つ』

ハッとするガース総理。

「し、しかし、もう治ったし、症状もないし」

『あれえ、検査は間違うこともあるって言ってましたよねえ、総理の御用学者。アメリカでは絶対間違わないんですかねえ。だいたいドランプさんの主治医さんはウイルスの専門家じゃなくて整体とかなにからしいですしねえ。CDCとか医学会の意見は無視してますしねえ。それに無症状感染者っていましたよねえ、潜伏期間も結構長いしねえ』

徐々に顔から血の気がひいてくるガース総理。

『それにい、内戦とかになったら、帰るに帰れないですよねえ。だいたいドランプ大統領がホワイトハウスに立てこもって、戦闘の巻き添え食うとかあ。暗殺に巻き込まれて仲良く一緒にあの世行きとかあ。あ、あちらはキリストさんのHELLで、貴方は閻魔様のいる地獄なんで行き先が途中で別れますけどお』

「そ、そんなことにならない!内戦もない!ドランプ大統領からも移らない!」

顔面蒼白になりながらも、なんとか地獄の書記官に反論しようとするガース総理。

『根拠もなしによく言えますねえ。相手を知らないのに総合的に考えて任命拒否なんて、わけわかんないこというガース総理ならではの御発言ですねえ。ま、内戦になったら、そもそもアメリカには行けませんしねえ。それにドランプ大統領たちから移らなくても、国内もそろそろヤバいですけどお。疫病の神さん、やっぱ怒ってるというか、あきれてんじゃないですかあ、都合のいい時だけ、妖怪だの神様だのに頼るしい』

「いや、その、ワクチンの確保はし、したし…」

『治験中止とかあ、いい話ないですねえ。それにメイジの党の市長と府知事がなんちゃら構想に固執し続けて対策怠って、あそこの府でも市でもどんどん増えてますよねえ、感染者。まあ雨合羽が防護服の代用になる発言とか、うがい薬が効く発言とか滅茶苦茶でしたからねえ、あの方たち。まあ、貴方も同類ですねえ、国会での答弁聞いてると』

「わー、い、言うな、そ、それを言うなあ!」

思わず喚くガース総理。国会答弁での自らの想定外失敗と、嘲笑と同情と憐憫の混じったジコウ議員及び側近の視線に珍しく傷つきまくっている精神を何とか持ち直そうとしている矢先なのである。しかし、そんな総理の事情に1ミクロンの配慮もせず、地獄の書記官は続ける。

『名実ともにマイティフールの後継者って言われてますもんねえ。いや、アベノさんのように明るく誤魔化して笑いをとることもできなくて、ただ目を覆うばかりだから、ワーストマイティフールになるんですかねえ。あ、私、主に東アジア地域の方々を扱う地獄の所属なもんで英語間違ってるかもしれませんけどお』

「み、妙な話で流ちょうに誤魔化すより、いいじゃないか、前後矛盾がなんだ!」

『事前に質問わかってるのにい、答弁ペーパー間違えたり、前の答弁とつじつまが合わないこと言ったりい。まあ、アベノさんもやったけどお、全く別のペーパーを渡されるなんてえ、アベノさんの側近より迂闊なんですねえ』

(ああああ、くそお、ニシニシムラか、せめてシモシモダがいてくれればああ。他の奴等は私のため、ではなくて、私を利用できるから私に付いているだけだからな。私が劣勢になれば、すぐ裏切る。い、今だって、わざと違うペーパー渡してる疑いが。ミヤコ構想否決になった途端、協力したとのソンカ派の密約ばらしたハシゲンと同じだ、信用ならん。しかし、あのニシニシムラたち二人はあくまで裏方で国会にまでついてきてくれーん)

根回しと恫喝はうまいが、前アベノ総理のようにオトモダチに好かれようと媚び売りまくるチワワのような芸当は無理なガース総理。当然ながら彼の周りには利害のみでのつながる人間関係、本人に対して好意を抱いて側にいるものは皆無に等しい。

「わ、私だって記者会見とか、その」

『あー、長官時代にメディアを縛るだけ縛った、台本アリの予定調和会見なら平気なんですよねえ、世界の記者から侮蔑を買いまくった、情けないアレ。アレで質問に誠実に真面目に答えるとかあ、想定外の質問にアドリブでウケをとったりするのが下手になったんですねえ、マトモに質疑応答する訓練サボったから。というか国会で鋭い質問を野党側から集中砲火受けることは想定外ですかあ。しかしジコウ党議員の“総理はお母さんに毎日電話されてるそうですね”質問は爆笑モノですねえ。あれで議員報酬もらえるっていうんですから、前総理の迷走政策でウイルス蔓延したせいで失業、廃業した皆さまは、さぞお怒りでしょうねえ。当然、彼らは野党議員にウイルス対策皆無で自らの利権まみれキャンペーンばかりに税金投入のガース総理を追及しろと言い出すでしょうねえ』

「り、利権はその、学術…」

『え?学術ニホンだかに利権?毎年、秋ごろになると予算不足で、院生までボランティアに駆り出す学者さんの集まりが利権ですかあ。それなら、もっと研究だけで食っていけますよねえ。研究者も論文も減って隣国にも抜かされそうなんですけど、利権とかあ、ウマい話があったら、もっとヒトも業績発表も増えそうですけどお。総理擁護の方は、学者さんのお業績知らないって、きちんと皆さん発表してますけどねえ。総理の支持者ってホントに地道に調べるとかあ、地味でたゆまぬ努力嫌いなんですねえ、類は友を呼ぶって、言いますけどお。確かに小賢しく振舞い中身無しって方多いですねえ。そんな学者さん軽視で、未知のウイルスとかの対策できるんですかねえ。感染対策には人の社会的心理とか、経済の動きとかあ、社会人文学系の研究も必要って、北欧だかどっかの比較的成功した国の方々もいってましたけどお』

「わー、私の言うこと聞かない奴なんていらん!」

『はあ、他人に教えを一切請わない、自分が絶対正しいなんて、貴方、神様ですかあ、それとも万能の天才とかあ?ダヴィンチとか、聞いたらのけぞりそうですねえ。賢い人ほど自分の能力不足を恥じて研鑽するっていいますけどお。貴方も前総理も、自己向上のための努力はお嫌いなんですねえ。ま、側近のお二人除いて、貴方の周りとかそういう人多いみたいですけど、メイジの方々とか』

「そ、そんな個人批判はどうでもいい!」

おちゃらけた口調ではあるが情け容赦ない地獄の書記官の御言葉に、胸をえぐられ続けるガース総理。

(こ、このままニホンにいたら国会では野党に追及され、自室ではコイツに言われ続けるのか、まさに生き地獄。家でしか休め…いや妻がいないときにコイツが現れたら、どうしよう。いっそ、アメリカ訪問、いや内戦と感染が!ああ、ど、どこにいけばいいんだ!)

野党の質問攻めのニホン国会と、内戦ぼっ発寸前の上、新型肺炎ウイルス蔓延疑惑のあるアメリカのホワイトハウス。どちらにGO TOすべきか迷い続けるガース総理であった。


どこぞの国の大統領選では、どっちが勝っても非難、暴力の応酬になるのではという予想で怖いですねえ。民主主義、世界の大国とか自負してたのがどこに行っちゃったんでしょうね、理性と誇りは。まあ、現在の大統領自らウイルスクラスターを発生させているという恐怖の研究結果もありますんで、支持者ともども自然の猛威にやられ、最終的に対立する党が勝つような気もしますけどね。どこでも最後は知性が勝つんですねえ、まあホモサピエンスの世界だから当然ですが。

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