「神のみ心に従いなさい」から「反撃」
前書き
時の流れを例えるなら、無限に拡大してもつなぎ目の無いのが宇宙である。つなぎ目が無いから、滑らかで柔軟で澱みがない。時間を止める事が出来るなら、世界を見渡す事も出来るが、時の秒針は刻まれるのでは無く、刹那さえ動きを停めることはない。
しかし、世界は心ならずも突然現れた新型ウイルスによって人々の思考が止まろうとしていた。
吾輩は猫である。数千年の記憶を持つ猫である。あれからイエス・キリストもローマに帰り、特に変った事は無いが、都庁のホームレスの数が増えた気がする。孔子先生の姿も最近は見かけない。とりあえず、街の見廻りだ。
「神のみ心に従いなさい」
あのスピーカーを屋根に街宣するワンボックスカーはどうしているのだろうか。イエス・キリストが日本のしかも街の片隅に確かに存在していた事に気づかず、何度も彼の目の前を街宣した愚かさを恥て、自己嫌悪に陥っているのだろうか。
コロナは人々の活動を完全に抑え込んだかに見える。繁華街は人通りも無く閑散としているが、今まで通り、ネオンサインの電気は夜通し入ったまま、街角の大型スクリーンが朝のニュースを流していた。
「本日より感染症対策として、全国的な除菌消毒に着手します。」続けて、「今後予想される新型ウイルスに対処する為にも、恒久的インフラとして国費を投じて整備、維持管理していきたいと考えております。」
テレビに映っていたのは、コロナ対策に初手から遅れを取り、無策、無能と嘲りを受けていた安倍川首相と、その傍に孔子先生の姿があった。孔子先生は某大学の学長であったが、引退してからホームレスの後、コロナ騒ぎで再び学長に戻り、医学部研究室を指揮していた。
首相の顔は疲れているのか少し浮腫んでいる。しかし、目には力があり高潮している様に見える。
と云うのも、孔子先生の研究所でウイルスの除菌に成功したと聞かされたからである。しかも「人体無害」というもので、ウイルスを破壊し続ける、と言うのである。
「総理はかつての護送船団方式を復活させるのか!」
「そこまで国が面倒を見る必要が有るのか!」
激しい反発が財務大臣、財務局局長から挙がった。
「燎原に広がる大火災を目の前に、批判を恐れ何ら手を打たないのは私達の本意では無いはずだ。今、消火設備同様のインフラ整備で新たな2波、3波のウイルスに対抗出来るとしたら、やってみる価値がある。その為に財政出動をする時だ。」
債務超過を危ぶむ財務大臣に党内若手議員から声が挙がり、財政出動の決断を迫った。
即日、官邸で臨時会議が持たれ、首相の鶴の一声で予算が組まれた。翌日から除菌水と噴霧器の大量生産に入り、一週間後には街中の散布が始まった。
道路側から噴霧専用車両により、歩道、建物、歩く人までお構いなしの散布だ。白い防護服に身を包んだ一団が至る所を隈なく、虱潰しに消毒液を振り撒いていく。
最初の散布は正に「人海戦術」だったが、やがて鳥獣の棲み家を狙った「ドローン」による空中散布、商店街の入口に設けられた「ミストアーケード」など、先新技術の散布も現れた。
「完全対策のライブハウス再開!」
「深呼吸出来る店」を謳い文句に、消えかけたホストクラブ、キャバクラ、風俗店、銀座のクラブなど、3蜜の代表格が明け方までの深夜営業再開を決めた。
「夜の街」の若者たちは祭の衣装で市中を練り歩いた。神輿に見えるが内部には器械が仕掛られ、「除菌ミスト」を空中に振り撒いていく。さらには、赤穂浪士の討入の扮装をした一団が現れ、大石内蔵助らしき者の采配が振られると大小の劇場に突入、除菌水の散布を始めた。ドーム球場、アリーナは歓声が上がる度に花吹雪と共に除菌ミストが空中に舞った。スポーツジムは息苦しいマスクの不要を決めた。やられっ放しの新型ウイルスに反撃の掃討作戦が始まった。それは「密な」空間ほど効果を挙げたのである。
新たなインフラ整備は投資と雇用を生み、日本経済はコロナショック以来のV字回復を果たしたことは言うまでもなく、崩壊の危機にあった医療現場を救い、病院の倒産を寸前で回避し、患者、関係者に笑顔をもたらした。
海外からは「安心安全の日本」「ウイルス対策先新技術国日本」を学ぼうと、コロナ対策班と専門家集団が世界中から飛行機、船舶で訪れた。
日本の代表格の航空会社2社、日本航空と全日空はインバウンド激減から倒産の危機にあったが、国の「除菌、抗菌インフラ整備事業3000億」の一貫として、機内除菌、抗菌対策の支援を受けたが、航空機の整備メンテナンス、検温システム、人員の配置などは自己資金を投入し再起に賭けた。
世界のグローバル化が今回の感染拡大を引き起こした事は明らかであり、世界の片隅の感染症が人や物に取り憑いて、世界中に拡散するのである。
今のままでは世界経済の縮小しか選択の余地が無く、人的物的鎖国に陥る事を意味している。一部の自分さえ良ければそれで良いという、保護主義に柁を切る大国を除き、それだけは避けたいというのが、世界の指導者の大勢であった。正に、「渡航者の安全」がパンデミックを避ける最大の必須要件となったのである。
世界はワクチン接種に希望を繋いでいたが、供給量と副作用に問題があり、その後現われたコロナ新型には全く効かないという迷宮に陥った。
半年後の日本、完全除菌対策が進んだ首都圏ではマスクをしている者は皆無となり、全国の人々は忘れかけていた、当たり前の日常を確実に取り戻しつつあった。日本の感染症制圧は世界に衝撃的に伝えられ、やがて日本の感染対策に学んだニューヨーク市や、世界各国の大都市から、コロナウイルス殲滅のニュースが届くようになった。
日本から始まったコロナウイルスへの反撃は世界の国々を巻込みながら確実に勝利を重ねたが、全世界の完全除菌達成まで数年に及んだ。また、「除菌技術」は更に進み、「紫外線」「オゾン」など人体有害ではあったが、ピンポイントの除菌技術として、自動車産業、生産ライン、流通センターなど、非生体エリアで活躍する事になった。
吾輩は猫である。夏目漱石の生まれ変わりであることは「神のみ心に従いなさい」の「コロナ編」で語った通りだ。今日も繁華街を見廻りながら、ゴミ箱の中を漁る。それが猫と生まれ変わった最大の目的であり、その事に何の恥じらいも無い。今では市中見廻りに使命感さえ感ずる程だ。街に賑わいが戻れば、あの高級食材にもありつけるはずだ。
「バーバラ!こんなとこにいたの?探したんだから!」
声の主はかつての飼い主の若い女性だった。
「自由に生きるのが今の私に、、え!」猫の私
「ほ〜らつかまえた!」若い女
パロディ「神のみ心に従いなさい」 反撃 終
後書き
中世の「ルネッサンス」は復興と訳されたが、曾てのギリシャ文化、ローマ文化を再認識する復古運動であり、キリスト教でありながら「人間主義」の復活を目指していたのである。当時ペスト大流行によって強いられた長い夜が漸く明け、人々は新しい文化に心を解き放った。
「歴史は繰り返す」と云うが、繰り返す歴史など無い、預言された未来など無い、ただ酷い痛みから逃れる為には、全ての人々と一緒に知恵を絞り、手探りで行動し、やがて試行錯誤の末に待望の薬を得て、世界は安堵すると信じたい。
追記
世界はコロナ禍の真っ只中にある。出口の見えない明日を如何に生きるか、全ての人々にこの企画書が希望となる事を祈って。
参考
「霧のいけうち」社 ミスト噴霧器
「Santa Mineral」社 化学薬品無しの除菌水
「E3X」家庭用除菌水生成機
「クボタ」社 微酸性電解水 空気清浄機 実証実験
「ガラスのドーム都市」ル.コルビジェ
「エァドック」空気清浄機 実証実験
「紫外線殺菌ロボット」
「オゾン発生装置」株式会社ジョイントプラザ
「浅草モデル」実証実験
「蛍光灯でウイルス分解」実証実験
「除菌技術で感染対策」特殊清掃社
「無香料洗剤」「ヤシの実洗剤」サラヤ
「コロナ不活化除菌脱臭機」カルテック(加賀電子協業)
「Hydro Ag⁺アルコールクロス/スプレー(80%)」富士フ
「222ナノメーター紫外線」コロナに有効、人体無害
「低濃度オゾン0.00001%発生装置」藤田医科大 村田貴之
(除菌関係情報はリアルタイムで更新中)