ロボット死闘人「石狩の福次郎」第9回
ロボザムライ駆ける第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第9回
「石狩の福次郎」第2章ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第2章レイガン島
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第2章レイガン島
第2章レイガン島(1)
「お前さんが福次郎さんかえ。名前は聞いている。まあ、ここでは気楽にしなせえ」
福次郎は、ロボット牢獄βベースNo.15へ連れてこられた。牢名主らしい男が、最初にこう口にした。
「それで、お前さん、どんな罪を犯したのだえ。言っておくが、娑婆の動きはここにいる 皆が知っている。ただ、お前さんの本当の考え方というものを知りたいのだ。と言うのは、この牢獄に、お上からスパイを送り込んでいるという噂が、かなりあるのだ。そういった意味で、お前の身の証しをしてもらわなくちゃならないのだ」
「身の証しといいやすと…」
「ロボット一人を殺してほしいのだ」
「ロ…、ロボットを。仲間ではございませんのか」
「いやいや、だからね、福次郎。このレイガン島に裏切り者がいるのだよ。西日本政府に通じているロボットがね。そいつを密かに殺してほしいのだよ」
「いやかね。いやならば、今度はお前を始末しなきゃならないのだ」「そうなのだよ、福次郎。このレイガン島にはね、一定の生命液しか供給されてはいない。だからね、住んでいるロボットの数は一定なのだよ。だから、口べらしをしているのだよ、我々でね」
「べらぼうな。そんなことを政府が許しているのか」
「ふふう、言っただろう。ここにはここのルールというものがあるのだよ」
元締めはにやりと笑う。
「どうしてもお前が我々の命令を聞けぬとならば、お前さんを始末しなきゃならないからね」
と、側の一人がにこりと笑う。それがまた凄みがあるのである。「わ、分かりました。それで、一体誰を」福次郎は諦め、そう答えた。
「そうと決まれば、話は早いや。お前も知っての通り、同じ獄にいた侍ロボットだよ。そいつを殺してもらいたいのだ」
「それ、福次郎、ここから覗いてごらん。あやつだよ」
元締めが指し示す方を見ると、そのロボットはあの名刀空陣の侍ではないか。
「しかし、あの侍、かなり弱い、頼りにならぬ侍ロボットでございますよ」
「それはさ、いつわりの姿さ」
「樋口さん」福次郎はその侍ロボットに呼びかけていた。
「おお、これは福次郎殿ではないか。貴公も、この島に来られていたか」親しげに話しかけてくる樋口に福次郎の心は痛む。
「樋口さん、あんたには、何のうらみもないが……」
樋口はようやく、福次郎のただならぬ様子にきずいた。「死んでもらいやす」
「待て、何ゆえに拙者を」
「いえね、あっしが生き残るためでさあ」
その言葉を聞いて、樋口はにこりと笑う。
「しかたがないなあ。お互い生き延びなければならんしのう」
「どちらが勝っても恨みっこなしだ。よろしいですねえ、樋口さん」「承知」と叫びやいなや、樋口の体は跳躍している。どこからか、刀が手には握られている。その剣が福次郎の頭頂をねらっていた。先制攻撃である。
(いけねえ、やられる……)
思った一瞬、また福次郎は気を失っていた。
『おいおい、頼りにならぬ奴』
例のもう一人の福次郎の人格が、福次郎の意識をもどした。
「う…、いったい…、俺は死んだのでは」
が、目の前には、樋口が倒れている。
「樋口さん…」福次郎は樋口の側に。
「福次郎殿、み…見事だ」
何かが、樋口の体を貫いている。
「どうやって…」福次郎は自分で、自分がわからぬのだ。が、恐るべき殺しの技である。
樋口が苦しい息のしたで福次郎を呼んでいる。
「福次郎殿、お前を男と見込んで頼みがござる」
「何ですかい。お前さんの最後の頼みなら、聞いてあげましょう」「このデータファイルを届けてくれぬか」あるCDを震えた片手で差し出すのである。
「じょ、冗談を言っちゃいけねえよ。俺はこの島で生き残っていたいのだよ」
「福次郎殿、甘いな。この島がどのような状態になっておるのか、分かっておらぬようだな」
「…」
「よいか、この島は犯罪者の島でありながら、今やロボット犯罪の巣窟となっておるのじゃ。この島に、政府に対するロボット対抗運動の指導者がいることを、私は突き止めたのだ。頼む。よいか、これは我々ロボットが生き残って行くためにやることなのだ。我々ロボットは、人間と仲良く暮らして行こうと考えておる。このような運動が起これば、我々もまたロボット奴隷の立場に追い込まれる。いやもっと悪いことが起こるかも知れぬ。これは一人私だけの問題ではないのだ。分かってくれい、福次郎殿。役目を思い出すのだ…」と言って事切れた。
「おい、しっかりしろい」
福次郎の手には、しっかとデータファイルのCDが握られている。
「ふふん、福次郎とやら、お前はやっぱりただのねずみではなかったようだね」物陰から女ロボットが登場していた。かなりの美人である。
「侍だけかと思ったら、お前も政府のスパイだったのかい」
「何を言う。俺は今こやつから資料を手渡されただけだ」
「ふふん、そうかい。まあ、いいや。じゃ、そのデータファイルをお寄越しよ」
女の背後から何人か、ずらっと手下が姿を現している。
女の顔に何か記憶に引っ掛かるところがある福次郎であった。
「姐さん、お前には、しゃばで一度でも会ったことがあったかな」 と、呟く
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