ロボット死闘人「石狩の福次郎」第8回
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
第8回
(8)
運送船関州号奪取に見事に失敗した福次郎は、裁判を受け、ロボット監獄に送り込まれ
ることになった。霊戦争の後、大阪湾上に小さな人工島が作られていた。西日本都市連合
が共同管理し、各都市で犯罪を犯したロボットが、その島に送り込まれているのだ。島の
名を通称レイガン島という。
レイガン島は周囲一五kmで、中央部が霊山と呼ばれる三二七mの山であり、南半分が
おだやかな緑に包まれている。ここは西日本都市連合の共同管理地となっている。が、北
半分はまったくの荒れ地で、地肌も荒々しく、荒涼たる風景が広がっていた。
この霊山も霊戦争の前は、何かのタワーであったのではないかと言われているのだが、
今となっては調査方法もないのだ。
島の親分衆・七人委員会が仕切っているレイガン島の犯罪人牧場は、この北の荒地に設
置されている。犯罪人を働かされる場所は、牧場と呼ばれているのである。この荒地は、
先の霊戦争の折、何かの光線攻撃を受けて、地層全体が何か別の物質に地下深くまで変化
しているのだ。それがある種のエネルギー源になることを、西日本政府の秘密調査部隊が
発見したのである。それ以降、犯罪人が送り込まれ、鉱石の発掘作業に従事させられてい
るのである。
二十人ほどのロボットを乗せたモーターボートが、俊足に大阪湾を駆け抜けて行く。そ
の中に福次郎の姿が見える。白波を蹴立てるその姿は勇壮なのだが、中に乗っているロボ
ットたちは皆憂鬱そうだ。五人の看守ロボットの姿が見える。赤色とオレンジ色に塗り立
てられたモーターボートを見ると、湾上に航行する船は、かかわりあいを避けて、船足を
変えていた。赤・オレンジのツートンカラーを持つ船は、すべて囚人輸送船なのである。
が、この囚人輸送船に似合わぬ、数人のロボットと人間が乗っていた。その数人の男た
ちの会話が、福次郎の耳に入って来た。
「ふふう、この世の中にあのような愉楽があるとは、この年になるまでしりませなんだ」
中年のたかぶったような声だった。
「ふふう、奈良屋殿も好きものじゃ。お竜が泣いておりましたぞ。後々使いものにならぬ
と…」別の声が言う。
「ふふ、ひひ、いやはや、お前様こそ。年甲斐もなく、ロボット美女に入れ込まれてのう」
奈良屋と呼ばれる男が言う。
「いやはや、西日本政府の奴も、悪い遊びをはやらせるものよ」
「ところで、この船には女の囚人は乗っておらぬのですか」奈良屋の声がうわずっている。
「おやおや、奈良屋殿。早速新たな女ロボットに、目をつけるおつもりか」
「皆様方、お許し下さい。今回は男どもです。例の反乱の…」船員の声が静止しようとし
たようだ。
「嘘をおっしゃい、本当は隠しておるな。ちゃんと見せて下さいませ」奈良屋は、無理や
り覗こうというのだ。
「奈良屋殿、そうは参りませんぞ」が、窓がすこし開く。覗く眼。その奈良屋と呼ばれた
男が、囚人だまりをのぞき込んっでいる。
「本当だ。貧相な男ロボットばかりだ」
「貧相なとは酷いなあ、ははは」
「よいか、お前たち、生きて帰れると思うな。あそこはロボット地獄なのじゃ。ふっふっ
ふっ」
看守長が、船室の中で、収容されている犯罪ロボットたちに向かって、偉そうにのたま
わっている。一応、福次郎たちは無期懲役なのだが、どうしても生きて外には出さぬとい
うのが西日本政府の方策のようだ。ロボットに対して、西日本政府は何やら、いろいろと
恨みがあるようなのだ。そこが初めから解放されていた東日本とは違うのだ。
レイガン島の桟橋に着いた。先刻の商人たちは、別のブリッジからレイガン島へ上陸し、
迎えの馬車が待っている。いずこへとも走り去るのを、福次郎はぼんやりと見ている。
「くそっ、あいつらいいことしゃがって」
と看守のつぶやきが、福次郎の耳に入って来た。
福次郎を初めとする囚人ロボットは、いくつかの班に分けられた。各々の班が、このレ
イガン島を治めている七人の親分衆、七人委員会のところへ連れて行かれるのである。
ちょうどそのころ、島中央にある会議所で、島の七人委員会の会議が開かれている。
「どういたします。あの福次郎とかいう男」NO.2が問題を提示する。
「しばらく様子を見たらどうだね」穏健なNO.3が考えを述べた。「何、福次郎ですって。
そいつは石狩の福次郎って奴じゃないのですか」 NO.7の女ロボットが声をあげてい
る。なかなかの美女ロボットなのである。
「おやおや、お竜姐さん。あのような男が好みなのですか。ふふふ」 と、お竜に少しば
かり気のあるNO.4の権太親分が嫌みを言う。「あんたに関わりはないでしょう」
と、権太の方を向いて、キッとした表情を見せ、
「私にその福次郎とやらを預けていただけませんか」
と会議の議長NO.1に言った。
会議後、先刻のNO.4が全ロボットデータベースを探っていたようなのだ。NO.7
のお竜の言葉が、どうも気に掛かっていたらしい。データベースのモニターを見ながら、
「そうか、そういうことなのか。これは面白い関わりではないか」 と、独りごちて、N
O.1の議長の方を向いた。
「NO.1、どうやらNO.7と福次郎はすくなからぬ関わりあいがあるようです」
「何、NO.7本人とか…」
「いえいえ、そうではないようなのです。NO.7の姉とね。どうぞこのモニター画面を
ご覧ください…」
「ふむふむ、そういうことなのか。それでは一度、NO.7に当たらせてみるか」 NO.
1もにんまりとほくそ笑んでいた。
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ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
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