ロボット死闘人「石狩の福次郎」第6回
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
第6回
(6)
「う、腕が高鳴るう」
名刀空陣のロボ侍が叫んでいた。攻撃当日なのである。他のロボットたちの興奮も同じ
ようなものなのである。西日本のロボット制打破の戦いが、大阪湾上で行われて、何年か
過ぎている。それ以降、大きな戦いはないのであった。
「我々はどこへ向かうのでございますか」
松前屋がキャプテンに尋ねていた。
「よろしいですか。向こうは東日本政府の船、おまけに大金を積んでおります。襲撃に対
する構えもしておりましょう」
「それゆえに…」
「皆様方のお力が大切なのでございますよ」
松前屋は攻撃ロボットたちを前に、しゃべりかけていた。
「御用船の防備は我々に任せて下さい」
キャプテンチムニーが大見えを切った。
「あなたがた方は、御用船の内部を制圧するだけでよいのです」松前屋が、重みを持って
言った。
帆船の姿が、彼らの目に入って来た。帆船と言っても、帆はソーラー受光器なのである。
東日本政府の御用船『関州号』である。全長二〇〇m、重さ三〇〇万トン。甲板上に特別
に設置された兵器が見えていた。上室には、監視用の飛行船が、低空飛行をしているのが
目に入って来る。後ろと前には小型の護衛船がいる。『ゲルマニア号』からは密かに小型船
が三隻発進していた。
1隻には飛行船対策である。他二隻は関州丸の護衛船を襲う役割である。船足の速い小型
船が使われているのも、そのためなのである。
この襲撃団に集められた無頼ロボットたちも、各々にテストを受けているらしかった。
それでなければこのような大仕事はできない。とりあえず西日本にいる腕自慢のロボット
が集められたと言えよう。 福次郎は大穴での恐ろしいテストを受けてからは、丁寧な扱
いを受けていた。しかし、福次郎は、
(もう一度あのような事ができるのだろうか、それにその黄金の腕を使った折の記憶がな
い)
というのが不安の種だった。
(まさか、本番の時に、できません、開けられませんでは、このロボット盗賊団五百人か
ら、どのような仕打ちを受けるか考えただけでも恐ろしいではないか)と、福次郎が考え
ている間、見る見る内に東日本政府の小型の護衛船に、福次郎たちの別班が襲い掛かって
行く。別動隊であった。
これといった抵抗もなく、関州丸に接舷して、甲板に乗り込んだ福次郎たちだったが、
(あまりにも無防備過ぎるのでは…)福次郎の胸の中に疑問が生じてきていた。福次郎の
勘というものが働いているのだ。
「何かあやしくはありませんか、伸藤さん」
福次郎は、浪人ロボットの頭と目されている伸藤に話しかけていた。
「お主もそう思うか。実は私もな…」
が、有無を言わせず、六十人ばかりのロボット盗賊団が、御用船甲板を上にずりあがっ
ていた。各々の手には刀をはじめとする武器が手にされているのだ。具合よく、御用船の
側を航行する船は居ないようだった。
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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