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ロボット死闘人「石狩の福次郎」第5回

ロボザムライ第2部

ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yama-kikaku.com/

第5回


(5)

 霊戦争の後、人類及び全ロボットは、冷子星の監視下に置かれている。神の眼ボルテッ

クスは地下上空三〇〇〇kmに数基設置されている。現在、全人類は上空一五〇〇km以

上を飛ぶ飛行体の開発は禁止されていた。その禁を犯すものはボルテックスのレザー光線

が情け容赦なく打ち込まれるのだった。

 そして、地球上における大出力のレザー武器も禁止されていた。全人類はローテクの兵

器を使用しながら、人類の再生をはかっていた。

 しかし、一部には、世界史後、新たな戦国時代ではないかと考える社会学者もいた。い

わば弱者は強者に飲み込まれる事態になったのである。その時期、ロボットのスタンスは

非常に微妙なものになっていたのである。

 ロボットを味方に取り入れる勢力は、ある種のパワーを見方にしたも同然であった。ロ

ボットの存在が勢力圏活動において、大いなるキャスティングボードを持つこの時代を後

世の学者は、『ロボット重要主義の時代』とも、『ロボット帝国主義の時代』とも呼んだ。 

この時代の人々は、まだ新たに勃興する第三勢力である『機械生命』の存在に気付いてい

なかったのである。


 福次郎は船のハンモックに押し込まれて眠った。次の朝。

「こ、これはどうしたことだ」

 気が付くと、福次郎は高繊維ロープで、ぐるぐる巻にされている。「一度、あなた様の腕

をね、確かめておきませぬとね。我々も他のロボットの手前、示しが付きません。あなた

の腕前を見せていただきましょう」遠くの方から、松前屋の声が響いてきた。

 どうやら深い穴の中に、福次郎は降ろされているらしい。何か横合いで時間を刻むもの

がある。それらを見た。巨大なドラム管が二個、加えて何かの制御装置が上部に付けられ

ている。

「松前屋、これは一体」

 福次郎は、穴の上部にいる松前屋に怒鳴り掛けていた。

「よろしいですか、福次郎様。あなたのその横に転がっているのは、陽子爆弾です。その

横にあるのは、御用船に使われているのとほぼ同じタイプの鍵なのです。その金庫の中の

タイマーを止めることができれば、その爆弾を止めることができますが…」

「で、できなければどうなるのだ…」

 福次郎の人工皮膚にうっすらと、人工汗が滲んで来ている。かなり緊張しているのだ。

「それじゃ、上でお待ちしておりますよ。あなたの黄金の腕をお見せ下さいませ、福次郎

様」

「ま、待て」

 福次郎の叫び声を後に、松前屋は、穴のうえのハッチを締めてしまった。真っ暗闇なの

である。聞こえてくるのはタイマーの音だけだ。(くそっ、俺は単なる経理屋でというのに、

なぜこんな目に会わなければならぬのだ。くそっ、桃太郎め、きっと覚えていろ。生きて

会う機会があるならば、きっと首をかき切ってくれる。が、あやつ俺が、何か別の存在の

ような言い方をしておったから、気に掛かる。いやいや、今はそれどころではない。とに

かく、この戒めを解き、タイマーを止めなくば、俺のからだが吹き飛んでしまう。本当に

俺はその『黄金の腕』を持っているのか)煩悶する福次郎であったが、そのうちにも非情

に時間は過ぎ行きて行くのである。何かが、福次郎の心の中で起き上がって来た。それは

普段の福次郎が思いも掛けないものだったのである。攻撃的で非常に頭の良い、野生の動

物のようなものだった。そいつが福次郎に話しかけていた。

『悩むのではない、福次郎。動け、早く動かぬとお前が滅んでしまう』

「一体、お前は何なのだ」

『私が、お前の別の人格なのだ。本来は奥深い所に潜んでいるのだが、このような危険な

状態ではお前では切り抜けることはできまい。私のために体を明け渡すのだ』

「お前に体を明け渡すだと…」

『わからぬのか。私の方が本来の福次郎の人格なのだ。何故に石投げの福次郎と呼ばれる

のか、また黄金の腕と呼ばれるのか分かっておらぬのか、ばかものめ』

 福次郎は急に表出してきた別の人格から、ばかもの扱いをされているのである。これに

は、さすがの福次郎もむっとしてしまった。「何をいいやがる。俺は自分の人格で切り抜け

てやる」

『ほほう、大見えを切ったな。それじゃ私は消えさせてもらうぞ』 怒りの言葉を発した

ものの、このような状態になれてはいない福次郎、急にびびってきた。

「いえ、そのあの、すみませんが、この事態では…」

『早く決めろ。この事態では、さすがの黄金の腕の私でも、時間が掛かるのだ』

「わ、分かりました」

『それでは』

 急に福次郎の意識は無くなった。後は何がどうなったことやら、元の福次郎の意識が戻

ってみると、

「いやはや、さすがは福次郎殿だ。あのような難しい鍵を開けられるとは。さすが、さす

が」

 回りには松前屋などが取り囲んで、ほめそやしているのである。どうやら成功したよう

だ。福次郎は気になることを聞いた。

「ところで、松前屋殿。あの爆弾は本物なのですか」

「何をおっしゃっておられます。本物でございます。あれ、いかがなされた。おい、大変

だ。福次郎殿が倒れたぞ」

ロボザムライ第2部

ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yama-kikaku.com/

第5回

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