ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃第3回 ●編集中です。
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
第3回
3)
料亭の裏は、新道頓堀だ。ここから新しい水路となり、大阪湾に通じている。
時間は夜の八時過ぎとあって、酔客でごった返し、喚声があちこちで上がっている。皆
なごやかで、楽しげなのだ。その喧噪の中で、一人苦り切った表情の福次郎が、促される
まま堀に滞留されている川船に乗り移って行く。
「どこへ連れて行くのだ」
「まあ、よいではないか。黙っておれ」
桃は命令していた。後もう一人、四十がらみの男が乗り込んで桃の字に挨拶する。白い
波を立てて、川船のモーターは動きだし、かすかな潮風が、福次郎の頬をくすぐっている。
大阪湾に滞留されている外国船の一つに向かっていた。船名は『ゲルマニア』。どうやら
神聖ゲルマン帝国の船らしい。読者は覚えておられるであろう。あのルドルフ大帝が率い
る、今やヨーロッパ随一の大帝国なのである。
「お主、まさか、外国にその魂を売りやがったか」
「やかましい。金儲けに、日本も外国もあるものか」桃が睨みつけた。
その船に着艦し、タラップを促されるまま登る、福次郎。
「おお、これは桃さんに、松前屋さんではありませんか」
大仰な時代劇じみた仕草で、外国ロボットが近づいてきた。ウェーブの掛かった洋鬘で、
薄く化粧をしているのだ。おまけにきついオーデコロンで、ぷんぷんなのである。なぜ、
オーデコロンかというと、ロボット特有の機械油と生命液の匂いを消すためなのである。
もう一人の男は、『松前屋』だったわけだ。
「この男が黄金の腕、福次郎です」
「おやおや、はじめまして。私はキャプテン、チムニーです。お見知りおきを」手を握ろ
うとする。
「おや、どうも、ごきげん斜めのようですな、ミスター福次郎は…」「いや、我々の間で、
少し行き違いがありましたな」
「ほほう、日本側の問題ですな。私は内政には干渉しませんよ」
(てめえ、そう言いながら、日本の金を盗もうとしているじゃないか、この悪党め)
と、福次郎はにこやかなキャプテン・チムニーの顔を見ながら思った。
『福次郎さん、たとえ頭の中でも私の悪口を言わぬ方がよい』
急に、福次郎の頭の中に、考えが流れ込んできた。(何だ、これは…)福次郎は急なこと
で戸惑う。
『ふふう、あなたは超能力ロボットのことを聞いたことがないようですね。私がそれです』
電流が福次郎の体を通ったようだった。
超能力ロボット、略してER、噂には聞いたことがあった。が、会うのは初めてだった。
体に触れなくても、相手のデータを読み取ってしまう、そんなロボットがいると聞いてい
た。(本当に存在するのか)
『そうです。驚きましたか』
福次郎の顔からたらりと冷や汗が出ていた。
「どうした、福の字。顔が真っ青だぜ」
桃が不思議そうに、福次郎をのぞき込んでいる。どうやら桃太郎はキャプテン・チムニ
ーがそんなロボットERとは知らぬふうである。
「この船にいるロボット全員が、我々の仲間なのだ。驚いただろう、福の字」
中央集会所に入るドアを桃太郎が勢いよく開けると、一斉にロボットたちが、福次郎た
ちの方を見た。その数、ざっと五百名。かなりの数を集めたものだ。(が、なぜこんな多数
のロボットがいるのだ)不思議に思う福次郎だった。
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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