ロボット死闘人「石狩の福次郎」第2回
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
第2回
(2)
福次郎は怒りの表情で、二人を睨みつけている。
「まだ、思い出しちゃいないようだな、福次郎。自分の正体をさ」 意外なことを桃が言
った。
「何言ってやがる」(正体だと……)
「お前、本当に…」
桃が福の顔をずっとのぞき込んでいる。
「福よ、我々の本当の職業はわかっているのだろうな」
「何をいいやがる。俺が経理屋で、お前が不動産販売の町人ロボットじゃないか」
福次郎は、桃太郎に向かって言い放った。
「おいおい、どうしたのだ。俺とお前の仲だよ。本当のことを言っても、問題はないのだ
よ」
重ねて、桃太郎が意味ありげなことを言うのだ。
「俺を怒らすなよ、桃の字」
が、桃太郎は中西の御前を見て、話しかけている。
「こりゃ、ひとつ荒療治が必要かもしれませんねえ、中西の御前」
「ここはひとつ、お主に
任そう」
中西の御前が言う。中西の御前も、本当は東日本の侍ロボットではないことになる。
「そうさせていただけやすか。きっと、あっしが、この福次郎を元に戻してみせやす。よ
ろしゅうござんすか」
「いいとも、お主の好きなようにな」
中西は頷いている。二人は昔からの上下関係があるようだ。
「やい、桃の字、お前を友達だと思っていたのになんてことだ」
「やい、福の字、どうしてもこの俺の言うことをきけないとならば」「何、きけないとなら
ば、どうするのだ」
「これを見な」
桃は後ろのふすまをすっと勢いよく開ける。
「ちゃん!」
「あなた」声が飛んできた。
福の字の家族のロボットがぐるぐる巻にされ、転がされているのである。手下らしいの
が二人見張っている。
「どうだい、わかったかい」
にやりと笑った桃の顔は、友達の福次郎の知らない別の顔であった。
「ひ、ひきょうだぞ、桃」
「いいかい、あっしらも必死なのだよ。お前の腕がどうしても必要なのだよ」
「俺の腕でと…」
「思い当たらないのかい、黄金の腕」
西日本政府公認の経理ロボットだけが、アクセスすることのできるキーコード。それを
福次郎は知っている。(が、黄金の腕とは…)
「あんた、お願いだから、悪いことだけは止
めておくれ」
福次郎の妻、妙子が、涙ながらに訴えているのである。
「だから、桃太郎みたいな不逞の輩と友達付き合いをするなと、私があんなに言ったのに
…」
ここまでくると、グチになっている。それを聞いた桃太郎、思わずカッときて、
「やい、この女、静かにするのだ」平手打ちを嫌わせた。
「えい、何をするのだ。手も足も出ない、か弱い女を打ちすえるなんて。なんて男だ。え
~ん」と後は涙である。
「黙れ、黙れ、おい、お前たち、何とかしろい」
「何とかしろといったってね、桃親分」
子供二人も母親につられて泣き始めたから、さあ大変。
「ええい、三人ともさるぐつわをしてしまえ」
中西の御前が、たまりかねて命令を下した。
「まあ、とういう訳だから、福次郎さん、私たちの命令に従ってもらいましょうか」と、
福次郎を見て、にやりと笑う。
「卑怯だぞ」
「卑怯。卑怯かどうかは、お前さんの体が、いずれ思い出すだろうさ」と、何とも意味あ
りげな言葉を吐くのである。(一体、俺は何者なのだ。単なる経理ロボットではないと二人
は言っているのが)
「福の字、ここは黙って我々について来てもらおうか」
ロボザムライ第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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