ロボット死闘人「石狩の福次郎」第10回
ロボザムライ駆ける第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
ロボット死闘人「石狩の福次郎」第10回
第2章レイガン島(2)
「このロボット獄門島、通称レイガン島ではな、普通の掟は通じないのさ。それをお前の体でわからせてやろうじゃないかえ」
「何を言いやがる。ロボット奴隷制が廃止されてから、もう大分とたっているのだ。何をアナクロなことを言ってやがる。このでしゃばりアマめ」
「おやおや、強気なことよ。いいかい、皆、このレイガン島の掟というものを、この新入りロボットの福次郎とやらにたんと教えてお上げよ」
「へい、わかりやした、アネゴ」
「おやおや、怖いお兄さんが、このあっし一人をそんな多勢で取り囲んで、簀巻きにでもしようとしなさるんで」
「そういうこった。覚悟しな、福次郎とやら」
「う…うう」例の別の人格が登場しなければ、格段に弱い福次郎である。
すぐにグルグル巻にされて、お竜の家につれていかれた。
福次郎は、クローンネットで縛り上げられていた。何か黒いものが、福次郎の方へ流れとなってやって来る。ついには、その黒いものがゾロゾロと集まり、福次郎の体をはい回っているのである。ロボゴキブリであった。
「や、止めてくれ。俺はゴキブリが大嫌いなのだ…」
が、お竜はその華奢な指先でピアノを弾いている。その音声にあわせて、ロボゴキブリの群れが、福次郎の体をダンスをするようにはい回るのである。生きた気のせぬ福次郎である。
「ま、まさか、お前は…。その曲には覚えがある…」
「やっと思い出したかえ。姉さんのことをね…」
「姉さんだと…」
「そうさ、黒姫ゆり子を思いださないかい…」
「く…黒姫の…、ゆり子…だと」
「そうさ、私は黒姫竜子だよ…」
ぐっと思わず息を詰まらせた、福次郎。
「遊び人だったお前が騙した姉は、今ロボットふうてん病になり、長くは生きていなかったさ。その様子を見、私はその敵を取ろうと待っていたのさ」
「が、俺が、このレイガン島に来ることが…」
「中西の御前さね…」
「くそっ…、あやつが…、すべての…」
「さあ、私のかわいいゴキブリたち。この男の体に入り、体の内部機械を食い尽くしておしまい」
「ぐっ、止めろ、竜子。俺はお前の姉さんを騙すつもりはなかったのだ」
福次郎は昔ロボット無宿人として、関東地方を転々としていたことがある。そのおりに石投げの福次郎としての死闘人としての名を高めていたのだ。そのいくつかの殺しの中で、殺しの仕組みを作るとき、娘を騙していたのである。それが『黒姫ゆり子』であり、その妹が今目の前にいるお竜こと、黒姫竜子なのであった。
ロボゴキブリたちが、続々と集結し、福次郎の体にはい上がって来た。頭と言わず、手と言わず、足と言わず、所かまわずである。おまけに、このゴキブリたち、液体を調合する機能を小さな体に内蔵している。この液体はロボットの体を溶かすのだ。縛り付けられた福次郎は、ボロボロの体になるのは、運命である。お竜ならぬ、黒姫ゆり子の指は、その福次郎の運命を表現する悲愴な曲を紡ぎ出している。
「ぐっ、げげ…」
「ふふ、どうだい。お前の嫌いなロボゴキブリの味は…」
「ご、後生だから、止めてくれ。お前のいうことは何でも聞く」
泣き叫ぶ福次郎。
「だめだね。お前がゆり子姉さんの最期を実感するまではね」
「わかった。ゆり子のことは、俺が悪かった。許してくれい」
「許すだって。そうはいかぬさ。私はこの七人委員会の一人だからね。島の掟があるのさ…」
その時、突然にお竜の隠れ家を突き破って来たものがある。
ロボザムライ駆ける第2部
ロボット死闘人「石狩の福次郎」
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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