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ロボット死闘人「石狩の福次郎」ロボザムライ第2部

ロボ侍の後日談です。ロボザムライ第2部。ただし未完です。


ロボザムライ第2部

ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yama-kikaku.com/



(1)

「福さん、ひとつ、話にのっちゃくれないか」

 桃太郎が考え深げな顔で、福さんこと福次郎に思いをぶちまけていた。

「そうか、桃さん、思い詰めた顔をしていたようだが、やはり、何か大きい問題をその頭

に詰め込んでいたのか」

 福次郎は、幼なじみの桃太郎から頼まれれば、いやとは言えない。が、まさに桃は福の

その性格を読んでいたのである。

「ああ、そうなのだ。この俺の小さな頭脳の情報処理では、残念ながら手に負えないのだ。

それこそ、優れた経理ロボットとしての、福さんの腕を見込んでいるのだ。これこの通り」 

桃は頭を深々と下げている。目の前の酒盃はどちらもからっぽだ。福次郎は、今経理事務

所の事務職町人ロボットとして勤めていた。むろん、桃こと桃太郎も町人ロボットなので

ある。

「よしなよ、桃さん。お前さんと俺の間柄じゃないか。水臭いよ。おい、もう一つお銚子

をくんな」

 福はここ、ロボット居酒屋『いろり亭』の主人に言った。二人が飲んでいるのは、ロボ

ット向けのロボット酒『よいそろ~』である。これを飲むと、微妙に電子頭脳の働きがよ

くなると言われている。話を切り出しにくそうな桃に、福は尋ねた。

「そいでお前さん、どんな問題を抱えているんだい。ことと次第によっちゃ、俺が乗りだ

さなきゃならないという訳だろう」

 福は、桃の顔色をじっと見ている。ロボットの人工皮膚は、人間と同じように感情を表

現する。

「そ、そうなんだよ。俺はさあ、一大事に巻き込まれているんだ」「その話は…。ここでは、

できないという訳か」

 ちらりと、福は桃の顔を一瞥する。

「そういうことなんだ。福さん、騙されたと思って、あっしについてきてくれねえか」

「こ、これからだって…、いったいどこへ…」

 思いがけない提案だった。悪い予感がした。

「そ、それは悪いが言えないんだ。黙って俺を信じてくれないかい…。この友達の俺を信

じて…」

(友達の桃をな。確かに信じたいのだが…、今までも偉い目にあっている)その考えが頭

を巡る。福はぐっと…、つばを飲み込む。(何かからくりがあるのではないか…、でも桃の

ことだから)福次郎は自分で自分を納得させる。

「まっ、まさか、桃さん、その仕事は…」

(少しばかり、悪いイメージが頭を回る…)

「おっと、いけねえ、いけねえ、その先は言っちゃ、お手が後ろにまわるかも知れないよ、

福さん。まあ、黙っていておくんなさいよ」 二人は、桃にうながされるまま、居酒屋を

出た。ここ新大阪市は、西日本都市連合がロボット奴隷制を暫定的に廃止することが決ま

っているので、活気に満ち満ちている。道行くロボットの顔も明るいのだ。ロボットの未

来は光り輝いているように思える。西日本と東日本は、霊戦争後、ロボットに対する支配

態勢がことなっていた。西日本はロボット奴隷制が施行されていた。

 二人は、盛り場の人込み、ロボット込みの中をかき分けて歩いて行く。町行く人々の風

体、身なりは江戸時代のままなのである。因に二人は、町人ロボットだ。また、大阪弁I

Cは開発されているが、二人には装着されていない。ロボットの大阪弁を嫌う大阪人は多

い。それゆえ、大阪弁をつかえるかどうかで人間とロボットの区別がつくのである。

「ここだよ、この店に入っちゃくれないか」

 桃は、福をある店の前で促した。が、

「だって、桃さん…、この店は…」

 福は店の佇まいを上から下まで眺めている。

「いいから、いいから、さあ、さあ入って…」

 むりやりに、桃は福を押し込んでいた。

「いいからって、お前…」

 その店は西日本政府ご用達の老舗『松前屋』である。格式の高いことでは西日本一であ

ろう。店に入っても、店の使用人が、ジロジロと二人の風体を見ている。その目にはあき

らかに、(ここはお前達の来るところではない)という意味が込められていた。服装が二人

ともみすぼらしいのだ。

「さあ、さあ、気にせずに…。ずっと上がっておくれ」

 福次郎は桃太郎に促されるまま、バイオ木材できれいに仕上げられた渡り廊下を歩いて、

奥深い一室に通された。欄干の仕上げなど見事なものなのだ。一瞬、福はそう思った。

「いま、お着きになられましたか。お連れさまは、お待ち兼ねですよ」

 ロボ仲居が二人に気付き、一室の障子をスッと開けた。中には、覆面をした侍ロボット

が一人、ぽつねんと座っている。かなりの老体らしい。体の動きから見て、福はそう思っ

た。(動くとギシギシと音が出るのではないか)

「御前、お待たせいたしやした。こ奴が、あっしのだちで、福次郎と申します。おみしり

おきをくださいまし」

 桃太郎が、畳に頭を擦り付けるように、お辞儀をする。

「おい、お前もするのだ」と福を促す。

「おう、そちが福次郎殿か。初にお目にかかる。桃太郎殿から、そちの話はよく聞いてお

る。気にせず、ささ、中へ」

 促されるままであった福次郎は、ここで桃に逆らう。

「桃、こりゃ一体、話が違うぜ」

「いいじゃないか、ここまで来たんだから」

 福次郎に二の句を告げさせないのだ。

「この面体でお許しいただきたい。実は拙者、東日本都市連合から新大阪へ遣わされたも

のでな、中西と申します。経理ロボットとして福次郎殿、なかなかのお仕事ができるとこ

の桃太郎殿より伺い、ぜひに、ぜひにとお願いしたじゃ」

「福次郎殿、西日本がロボット奴隷制を廃止するのを祝って、東日本都市連合から、かな

りの援助金が新大阪城にある金庫に運ばれるのはお聞き及びだろう」

「へえ」

 経理ロボットである福は、噂でそれを知っていた。

「それを盗んでいただきたいのだ」

 いとも簡単な仕事のように言い放った。

「ち、ちょっと待っておくんなさい。そういうのは泥棒というのでは…」

「その通り、我々は泥棒をするのじゃ」

 一瞬、福次郎の中では、何かが爆発していた。

「桃、騙しやがったな。俺を犯罪人にするつもりか。俺にはかわいい妻二人と子供一人、

じゃなかった、かわいい妻と子供二人がいることを知っているだろう」

 福次郎は恐ろしい表情で、桃太郎を睨んでいる。

「まあまあ、福殿。そうお怒りにならずともよい。話をよく聞いてくだされ」



ロボザムライ第2部

ロボット死闘人「石狩の福次郎」第1章 襲撃 第1回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yama-kikaku.com/


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