ギルド追放
大きな建物の最上階、ギルド長の部屋にシュランは呼び出されていた。
彼はちょうど追放されようとしていた。
ギルド長のアレンは言う。
「別れるのは惜しいが仕方がない。これ以上君の失態を庇い続けることはできない」
酷い仕打ちだった。
俺のパーティーは数々のダンジョンを踏破し、S級のモンスターも軽く倒せる実力を持つ、世界に名を轟かせたパーティーだった。
このパーティーの活躍は、シュランのパーティーメンバーの指導のおかげだった。もちろんシュラン自身も相当強かった。
無名だったギルド『戦士の足跡』は金が金を呼ぶように、優秀な人が集まり、今となっては魔術師、回復士、戦士を多く抱える数少ない大手ギルドとなっていた。
シュランの手柄をアレンや、パーティーメンバーに譲り、このギルドに数多く貢献してきた。
そんなことをし続けた結果、アレンがどんどん昇進していくのに対し、シュランはずっと末端。有名なパーティーのリーダーにも関わらず無名だった。
シュランが居なくてもパーティーはどんどんモンスターを倒し続け、シュランの存在を嫌うようになってきた。
なので用済みになればすぐに切り捨てることなんてわかり切っていたのだ。
シュランはアレンをお睨みつける。
アレンはニヤニヤ。彼の秘書であるシシリーは馬鹿にするような笑みを向け
「マスターを睨むのはおかしいですよ。護衛の任務もままならず、物は壊すし、こちらとしても損害が大きくてですね」
彼女はそう言うが、俺は確かに護衛の人では、何者かによる悪質な妨害。物に関しては、確かに渡した筈のものが壊れているのだ。
「新人でもできそうなことをベテランの君がこんな失態をし続けるのはありえないよ。俺も昔のよしみで庇ってきたけど……これ以上はねぇ。君ばかり庇っていては、頑張っている他のメンバーに示しがつかないよ」
そう言いつつも、彼は自分のお気に入りにはやたら贔屓しているのを知っている。
アレンは、金貨の入った袋を投げつける。
「退職金だ。君にとっては破格の待遇だろう。これをもって、今すぐこのギルドを去るんだ」
シシリーをはじめ、彼の取り巻きの女の子たちがクスクスと笑う。
シュランは袋を片手にギルド『戦士の足跡』を立ち去った。
ここを去ったとはいえここからは一人だ。自分の足で探さなくては勝手に仕事が舞い込むはずはない。
自分にできるものを探しにクエスト受付へと向かうと元同僚のパーティーメンバーがいた。
シュランは驚いて柱の影に隠れる。
「あぁ、笑った笑った。まさか本当にシュランの奴が首になるとはな」
戦士ルクスが話題を切り出す。彼は貴族の出でいつも人気があった。
「本当よ。アレンもたまにはやるじゃない」
魔術師シュナは続く。今日も派手な高級装備を身につけている。
「……」
あと一人、回復士のステラは何も喋らない。薄く青味がある髪がたなびいている。
あのパーティーにいなかったらこんな話をしているのかと悲しみを覚える。
彼らが立ち去ったあと一人で受付所へと向かうのであった。
「シュランさんですか」
だるそうに受付嬢は答える。俺が辞めたことはすでにして渡っているらしい。
彼女は淡々と俺にぴったりの仕事を探そうともせず。ただ、
「残念ながら、あなたにぴったりの仕事はないようですね、お疲れ様でした」
面倒な手間を取らせやがってと言わんばかりの態度で俺をカウンターから退かす。
詰んだ。酒場のカウンターテーブルに座って酒を飲んでいる。
酒場の親父とは仲良しで、話を聞くなり、
「そりゃ災難だったな。まぁ、これでも食って元気を出せよ」
そう言って出したのは俺の好きな鳥刺しだった。
礼を言って食べ始める。
「これからどうするんだ」
「……」
「そうか……」
そのまま沈黙が続く
親父が口を開く
「そういえば、お前さん教授のところに相談に行けばどうだ」
「え……」
俺は目を見開く。教授というのは国立トルネア大学校で、非常に可愛がってもらい、俺がとてもお世話になった人だ。
『何かあれば相談にこいよ、必ず私が力になってあげるからな』
そう言われたのを思い出した。
俺は、教授のことを思い出し、涙があふれていた。
「決まったみたいだな、それじゃあ行ってこい」
「ありがとう親父」
背中を押され、俺はこの街を離れることにした。




