異世界ならではの買い物
それから俺は白蛇さんと行動を続けた。白蛇さんから、白蛇さんは鎖や刃物にも変化出来ることを教えてもらい、それを知ってから俺は悪者退治を加速させ、その際に手に入れた金を、元からあった知識と白蛇さんがくれた知識と合わせて、応用しながら更に金もうけを続けまくる日々を過ごし、ようやく目標の金額に辿り着き今は宿屋で祝杯をあげていた。
「よっしゃー! 金が集まったぞ!」
「ようやく、それなりに集まったな」
「よし、これで買い物ができる」
俺は、ぐっふふと笑いながら、その日が来たことを喜んだ。この日を迎えるまでに金以外にも多くの情報やパイプなどを集めており、俺の夢を叶えるための一歩は確実に進んでいるのだ。
「それで、お前はそんなに金を集めて何を買うんだ?」
「ふっふふ。それはですねぇ」
「いいから早く言え。焦らされるのは好きではない」
「すんません。俺が欲しいのは奴隷です」
☆
次の日、俺は奴隷を買いに手に入れた情報を頼りに目的の奴隷商がいる場所まで歩き進んだ。この奴隷商の店も本来なら入れない店だが、すでに手に入れたとある人の紹介状があるおかげで、こうして出向くことが出来ているのだ。
やっぱりどこでも人脈って大事だよね。
「それで、どんな奴隷を買うんだ? 身の回りの世話用か、それとも愛玩用か、それとも処理用か?」
「いやいや、単純に仲間にする為ですよ」
ここまでの旅は常に一緒に行動しており、俺が手に入れている全てを知っているくせに、白蛇さんもひどいことを言うものだ。
だがこうして奴隷を求めているのも、次に考えていることが一人で行うには困難となった為、ここからは人材を増やしていく予定なのだ。
「ふふ、すまんな」
「別にいいですよ。さて、ここか」
数ある奴隷を扱う店でも、有数の品揃えと言われている店に入ると、その額を油でテカテカさせたのしのしと歩きながら店主がやって来た。
「旦那様。ここは初めての方は来られない場所でして、お引き取り願いたいのですが……」
「この人から紹介で来させてもらっている」
俺は店主に一通の手紙を手渡すと店主は、厚い瞼を押し上げて見開いた。
「おお! この方のご紹介ですか。失礼しました」
「そういうのはいい、早く案内してくれないか?」
「かしこまりました。ちなみに旦那様、今日はどんな奴隷をご所望ですか?」
「それは見てから決める」
俺は自分の運と直感をそして白蛇さんの助言を信じて、品定めをするように檻に入った商品を眺めたが、どの奴隷たちも見た目は充分よいのだが、俺が求めているのはそれではないのだ。
心を殺して、集中するスキルを使って同情せずに、ひたすら求めている商品を探し求めるがいない。俺が求めている逸材が見つからない。
「お客様、こちらの奴隷などどうでしょうか? こいつは、以前王宮で働いていましたが、夫が借金をしまして売り飛ばされた女です」
俺はその怯えた表情の女をじろりと見て、こいつも不遇な思いをしているとだけ思い、すぐに視線を逸らした。申し訳ないが、今は求めていないのだ。
その後も店内を見続けている中で、その管理体制に関心の声を出す。
「さすがに奴隷協定があるから、しっかりと管理されているな」
「ええ、もちろんです。奴隷協定をしっかり守れば、安定して店は続けられますし、病気や厄介な経歴を持った奴もいませんしので安全にお客様に奴隷を提供できますよ」
「そうか。それもそうだな」
この国では奴隷協定というものが存在し、この協定は基本奴隷を守る為に存在する協定なのだ。
奴隷協定は奴隷といえども、国を守る資源と考えられた結果、生まれたもので、主に害が無いと認定された奴隷がその協定を享受することが出来るのだ。もちろん奴隷という身分が無いことが最もいいと俺は思うけどな。
しかし、この奴隷協定にはありがたい部分がある。それは協定により奴隷の詳細が分かっていることだ。
先ほど店主も言っていた通り、この店にいる奴隷は、病気も犯罪歴もない、言わば安全性が保障されている人材なのだ。
仮に適当にスカウトして、何か持マイナスを持っていた場合は金額以上に被害を受ける可能性だって考えられる。その為、こうして安全が保障されているのは買い手にとってありがたいのだ。
でも、俺にはスキルと白蛇さんがいるので、この安全性については見抜くことが出来ていたが、こうしてここまでして来たのも、その協定がされている点を利用して安全性が完備されている場所を始めから求めたからである。
その後も俺は暗い店内を歩き続けていたが、未だに探している逸材を見つけられずに、自身の直感を疑おうとしたその時、探し求めていた逸材をようやく見つけ、駆け出してしまう。
俺は檻に手をかけて、見つめる少女は一切目もくれず、淡々とその小さな手に持つ本を読み続けていた。
まさかこの子が俺の探し求めていた逸材だと思っていなかったが、俺のスキルがこの子のことを気になって仕方がなくなっていた。
「ほお、この小娘。なかなか、いい能力を持っているな」
俺の体に巻き付いている白蛇さんも、高い評価を与えているので、これは間違いない。
「店主! こいつ! いや、この子を俺にくれ!」
檻の中で本を読み続けている、やせ細っていた淡い青髪の少女を求めると、少女はピクリと少しだけ肩を揺らした。
「旦那様。こいつでいいのですか。召使ならもっといい奴がいますが……」
店主がここで、オススメを切り出したのも、俺が用意した紹介状の主を知ってからこそであるが、全ての商品を見終えた俺はこの子以外に選択する気はなかった。
「いや、俺はこの子が欲しいのだ」
「う……いや、分かりました。今から用意しますから先に旦那を部屋に案内します」
俺は少女を待つ間部屋の椅子に座りながら今か今かと待ち続けており、少しして部屋に入ってくるとその少女を思わず見つめてしまったが、少女は気にすることなくどこかを一点見つめており、そのまま契約に移ると白い軽装に身を包んだ少女を横に立たせて店主は、少女の値を初めて俺に伝えたが、ここは値切ることなく、いい値を即決で支払い、契約と協定にサインすると、すぐに店の外に出た。
長い間薄暗い店内にいたのでその暗さに目が慣れてしまった為、店を出た時にとてもその日の明かりは明るく感じられ、俺は目を細めて外を眺め、すぐにその視線を隣にいる少女の方へと向けるとその光は少女にもとても眩しく感じられていた。
「眩しい……温かい……これが一番見たかった世界」
その光の温かさに少女は、呟きながら涙を目に溜めて喜びを感じていた。
「久しぶりに出た世界はどうだ?」
「一番待っていたからとても嬉しいです」
「そうか。それは良かったな」
嬉しいと言われれば、単純に喜んでしまう俺なのだが、その喜びはいつも以上であり、それほどこの少女を求めていたのかもしれない。
「……旦那様、私を買って下さいましてありがとうございます。必ずお役に立てるように頑張りますので、よろしくお願いします」
少女は深々と頭を下げてお礼を言うと、俺は期待を込めて少女に告げる。
「ああ、こちらこそ、よろしく頼む。さて早速だが色々と質問させてもらうと――――ん?」
その時俺の声を遮るように、ぐぅううう。と少女のお腹から唸るような音がすると、少女は耳まで真っ赤して羞恥の表情を浮かべながら謝った。
「ご、ごめんなさいっ! 一番大切な時に邪魔をしてしまって本当にごめんなさい!」
少女は頭をブンブンと何度も上下させ謝罪の言葉を連呼しており、その少女の愛くるしい姿に追わず表情を緩めてしまう。
「いや、気にしていないからお前も気にするな。よし、それじゃあ、まずは飯を食いに行こうか」
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