おりこうさん・・・
(はあっ・・・はあっ・・・
危なかった・・・・・・!)
僕は右手を更衣室のドアに添えて、恐らく心臓をバクバクさせながら呼吸を整えていました。
危うく溺れ死んでしまう所でした・・・・。
こんなところで命を落としたら、それこそ母を初めとした人達に顔向けできません。
ようやく落ち着きを取り戻してバスルームを出たボクは、疲れ果ててベットに直行したのでした。
(ううーん。)
みるみるうちに、ボクは眠りに入ろうとしていたのでした。
自分の意識が遠のいていくのが感じられます・・・。
しかし・・・。
「ダメよ・・・・」
誰かが、僕の安眠への入り口から引き戻そうとしている様なのでした。
そしてその声は、どこかで聞き覚えのある人のものなのでした。
(えっ?)
僕がうっすらと目を開けると、なんと先ほどの白人の女の子の顔が見えました。
彼女の出で立ちは、まさにお嬢様といった感じでした。
お人形のように整った顔立ち、そしてそれにふさわしいヒラヒラの綺麗な洋服・・・・。
とはいっても、僕の妄想の中の人物なのかも知れないのですが・・・。
「忘れちゃだめよ・・・」
(え・・・・・?)
彼女の僕に対する態度は、感情が表情に表れていないにも関わらず、とても優しいものなのでした。
そして自分は、なんだか非常に柔らかいものに、頭を預けている感覚に陥っていたのでした。
しかして、その正体は・・・・・!
なんとボクは、その白人の女の子に膝枕をされていたのでした。
僕の姿は、恐らく彼女よりも、小さい男の子になっていることでしょう・・・。
(一体何をボクは忘れているというのだろう)
この自分の置かれている状況に矛盾を感じる余裕もなく、彼女の質問に対して答えられないので悩んでいました。
「分からないの?」
戸惑っている僕に対して、彼女は率直に尋ねてきました。
「うん・・・・。
わからないよ。
おねえちゃん・・・。」
ボクは、素直にそう答えました。
相手が自分よりも、年上のお姉さんだから、甘えていたのかも知れません。
「もう困った子ね・・・・。」
そう言って、彼女はボクの頭を撫でてきました。
ボクは改めて、意地を張らないで良かった、と思ったのでした。
「ふう・・・・。」
白人の女の子は、軽く目をつむって腕組みして、ため息をついていました。
「そうなのね・・・・。ヒントをあげる・・・。」
そう言って、彼女は腕組みを解かずに、ボクの顔を右手の人差し指でポイントしていました。
「えっ」
急な展開に、ボクはさらに戸惑いました。
(一体、このおねえちゃんは、ボクをどうしようと思っているのかな・・・。)
「私の顔を見て・・・」
いきなり白人の女の子は、ボクの顔に顔を接近させてきたのでした。
(うう・・・・。)
その距離は不自然さ100%の、近さでした。
だからボクは思わず、目をつむってしまいました。
「私をみて・・・。」
ボクの耳に彼女の声が、おしとやかに入ってきました。
その白人は女の子が、ボクに対して優しいのは分かってきていたので、恐る恐る眼を開けていきました。
彼女の整った顔は、本当に真っ白でした。
しかしボクは、白人の女の子が何を言わんとしているのか、今ひとつ分からないのでした。
「うーん・・・、よくわからないよ。」
正直に彼女に対して、今の気持ちを伝えました。
その白人の女の子は、唇を軽くキュッとしているように見えました。
そして次の行動に、彼女は移行したのでした。
「私の手を見て・・・・」
白人の女の子は、ボクの目の前に、両手を差し出してきました。
「う、うん・・・・・。」
ボクはマジマジと、彼女の手を見ました。
とてもとても、真っ白な掌なのでした。
「私の手を触って・・・。」
「え・・!?」
その彼女の甘い囁きのような口調と伴った台詞に、ボクは胸をドキッとさせたのでした。
そしてボクは言われるがままに、彼女の掌を触りました。
(とても柔らかい・・・。)
白人の女の子が差し出す、しっとりとした柔らかさに、ボクは思考が止まりそうでした。
「わからない?」
さらに彼女は、質問をたたみ掛けてきました。
「うん、わかんないよ」
白人の女の子の連続攻撃に参ってしまいそうなボクは、もう白旗を揚げたくて仕方が無かったのです。
「もう仕方がないわね・・・。」
彼女はもう両手を腰に当てて、仕方がない、といった雰囲気でした。
「じゃあ、私の顔を見て、手を触ってどう思ったの?」
なんだかボクは、誘導尋問されているような気分になってきました。
「真っ白で、柔らかいと思った・・・」
感じている事を、そのまま言いました。
「そうよ・・・。
真っ白で柔らかいモノ・・・」
なんだか彼女は、・・・少々怪しい口調でした。
・・・・、意図的なモノを感じるボクなのでした。
「・・・・アイスクリーム・・・・」
そこでボクは、辺り障りのない答えを導き出しました。
「惜しいわね・・・」
白人の女の子のカラダから、残念そうなオーラを感じました。
「甘いモノじゃ無いわよ・・・」
(甘いモノじゃない・・・・・?
んんん・・・・・・・。)
ボクはとても悩んだのですが、子供故に知識の選択肢が少ないのが幸いしたのでした。
「・・・・・そうだ!!
わかった!!」
そこでボクは、閃いたのでした。
「おりこうさん・・・」
その白人の女の子は、ボクの頭を撫でてきました。
とてもとても、柔らかい感触でした。
そしてボクの目の前の光景に、ゆがみが生じ始めたのでした。
そしてベットに寝ていたボクは、パチッと目を見開きました。
(寝る前の歯磨きを忘れていた・・・。)
真っ白な歯磨き粉を、歯ブラシにつけてボクは丁寧に歯を磨いたのでした。
今度こそボクは、眠りに着くことが出来ました。
(あの白人の女の子は誰なんだろう・・・)




