ソバカスがないなあ・・・
======== トントン ======
(ん?)
どうやら誰かが、ドアをノックして来たようです。
入居初日の僕に、誰が訪ねてきたのでしょうか。
僕は、すぐさまに部屋のドアを開けました。
「お疲れ様です。
夏目さん。」
ドアを開けると、そこには長身のイケメン男性がいました。
その人は、僕を案内してくれた刻露さんでした。
「夏目さん。
夕食と買い出しに、ご一緒にいきませんか?」
「はい?」
そう言えば、まだ僕は夕食をとっていなかったのでした。
と、言うことで有り難いお誘いでした。
「さあ、行きましょう。
まだ夏目さんには、このアカデミーの近所は、ご案内していませんでしたから。」
言われてみれば確かに、僕は全くこの周辺がどんな所であるのか、自動車で移動してきたので全く分からないのでした。
そう考えると、チョッピリまだ不安が残るのでした。
そして僕は、刻露さんに連れられてアカデミー内の食堂に行きました。
この食堂は独立した感じの、ごく一般的なレストランの様な感じです。
テニスアカデミーの中の福利厚生という雰囲気は、余りありません。
食堂は、それほど込んでいる様ではありませんでした。
今日の練習は、サンダー・ライトコーチと、僕の部屋のお隣のサニー・ファイン以外は、全く記憶に残っていません。
それ故に周りを見回しても、知った感じの人は見あたらないのでした。
ところが・・・・・・・・
========= いたー!! ===========
なんと見かけた顔が、僕の目の前にいたのでした。
(こ、この子は・・・・・)
僕達の目の前でテーブルに座り食事をしているのは、飛行機で隣に座っていたキャップを被った中学生くらいの可愛らしい顔をした男の子でした。(第78、79話登場)
空港に着いたときは、ジョッカー・チン(アクション映画俳優)と話をしていましたし。
一体、彼はどうゆう人なんだろうか、と思うのでした。
あんまりジロジロ見ていても失礼だから、僕は目をそらしてしたのですが・・・。
====== ガタッ ======
その男の子は、すぐに席を立ち上がり僕たちの前をスタスタと通り過ぎていきました。
別に飛行機で、会話をしたわけではないので、僕は彼に声をかけようとはしませんでした。
「今回はここで、調整するようですね・・・・・。」
そのとき刻露さんは、独り言の様に呟きました。
と、言うことは刻露さんは、彼の事を知っているのでしょうか?
そうこうしているうちに・・・・・
「いらっしゃい!」
とても元気な声で、白人の若い女性が応対してくれました。
この食堂は、普通のレストランの様にウェイトレスさんがいるようでした。
それにしても・・・、彼女とは初めてあった気がしません。
何故なのでしょうか。
なんだか、走馬燈の様なものが脳裏を過ぎりました。
「ご注文は?」
それでも変わらずに、とても元気な調子で、彼女は注文を聞いてきました。
そんなウェイトレスさんをみて、僕はアカデミー内にあるレストランらしく、どこかご近所的な和やかな雰囲気だと思いました。
だから彼女の態度に僕は、結構な安心感を抱いたのでした。
「では、何になさいますか?
夏目さん。」
テーブルの向かいに座っている刻露さんは、手にしたメニューを、僕に向かって開けてみせてきました。 「あ、じゃあこれで・・・。」
とくに悩まずに僕は、欲しいメニューを指さしました。
「では、私も同じでよろしく頼みます。」
「ステーキランチですね。かしこましました!」
ペコっと一礼をして、そのウェイトレスは厨房に歩いていきました。
それにしても、やはり彼女は全く初めて会った気がしません・・・。
どうしてなのでしょうか・・・。
(彼女には、ソバカスがないなあ・・・・。)
僕は独り言を、呟いていました。




