ワクワクしてきたのです
「おっ!!」
僕は部屋に入って、ちょっとビックリしました。
と、言うのも自分がイメージしていたのとは、感じが異なっていたからなのでした。
(意外と、揃っているんだなあ・・・・。)
実は部屋の中には、いくらかの家具が置いてあったのでした。
テレビ・クローゼット・キッチン・冷蔵庫・電子レンジ・トースター・・・etc
どれもそれなりに使われていた様な感じなのですが、それでも非常に有り難いモノでした。
(とりあえずテレビでもつけようかな・・・。)
パチッ
僕はテーブルの上にあったリモコンを取り、テレビのスイッチを入れました。
「あっ・・・・。」
そのテレビの画面に映ったのは、どうやらテニスコートでした。
内容的には、プロ選手へのインタビューの様でした。
「ここは・・・・・・。」
僕は気がつきました。
(そうか・・・・。
ここであるんだ・・・・!!)
そうです・・・、それは、このニューヨークで開催されるのです。
プロテニス最高峰の大会・・・、それは四大大会と呼ばれています。
その中の一つが、全米オープン・・・・!!
ちなみに全米オープンは、ニューヨーク市郊外のUSTAナショナル・テニス・センターで、毎年8月の最終月曜日から2週間の日程で行われるテニスの国際大会のです。
観客動員数・賞金総額はテニス競技大会で最高なのです。
(そうだあ・・・・。
忘れていたあ・・・・。)
プロのテニス選手に成りたいにも関わらず、僕はトンと情報には疎いのでした。
現に僕は、今年まで紅葉さん、や雪乃さんの存在自体を知らなかったのでした。
テニスが上手く成ることのみに集中して、本当にテニス界の事はまるでダメな自分なのです。
そんな僕が高校時代に、テニス部の主将を務めてきたのは何故だろう、と思ったりもするのです。
こんな気の利かない男に、良くみんなついてきてくれたな、とちょっと回想しました。
「先輩、そんなこと無かったですよ。」
高校時代に、僕の補佐をしてくれた和気香が、現れてきました。
「そんなこと無かった、って?」
僕は、率直に彼女に問い返しました。
「だから、みんな夏目先輩の背中を見て、強くなったんですよ。」
和気香は、左手の拳を腰に当てて、右手の人差し指をチョンと上に挙げて、顔を傾けて笑っていました。
「そ、そうなのかなあ・・・・。」
「そうなんですよ!!」
・・・・・・・・・
ここでどうやら僕の妄想が、終了しました。
やはりまだ自分には、故郷の日本に未練があるのでしょうか・・・・。
(ふう・・・・・。)
現実に戻った僕は、ほんの少し寂しい気持ちになりました。
でも・・・・。
「あっ!!」
テレビの画面を見て、驚きを意味する声をあげました。
「お、お、折夫さん・・・・・!!」
そのテレビ番組に、四季折夫選手の顔が出ていました。
先ほどからの内容は、こんど開催される全米オープンの事についての特集の様でした。
有力選手の一人として、彼はインタビューされているのでした。
「ということは、折夫さんは僕が渡米するのとほぼ同じ時期に、アメリカに来ていたのか。」
もっとも、彼は世界でもトップクラスのシングルスの選手だから、当然なのですが・・・。
(おそらく、雪乃さんも近々に、このニューヨークに来るかも。
彼女も世界大会に、出場している選手だから・・・。)
自分がこんなに日本から離れたアメリカに来ても、折夫さんや、雪乃さんみたいなプロ選手はやってきたりする・・・・・。
つくずくプロテニス選手は、国際的な仕事なんだ、と感じました。
自分も、こんな世界に入るために、ここにいることを改めて再確認できました。
これを励みに、僕はくじけずに、これからの修行をこなして行きたい、と思うのです。
少し自分としては、ワクワクしてきたのです。
しかし・・・・、それと同時にとても寂しい気持ちになったのでした・・・。
「紅葉さん・・・。」




