ついて行けてるじゃない
僕は全力で走りました。
一体僕は何をやっているのでしょうか。
こんなことで、モタモタしている場合じゃないのです。
そして、すぐに自分のテニスラケットを持って練習コートに帰ってきたのでした。
これで、ようやく仕切り直しです。
しかし、本当にモタモタするのは、ここからなのでした。
今までの遅れを取り戻すべく、僕は練習に参加し直しました。
しかし、自分の心意気とは裏腹に、満足の行くアクションは実行できないのでした。
やはりこの中では、僕は最年長の部類に入るのでしょう・・・。
それ故に、この集団の中で抜きんでねばいけない、というプレッシャーを感じるのでした。
しかし自分の周りの生徒達は、明らかに自分以上のレベルであることが感じ取れました。
この段階で埋没している人間が、プロの世界で活躍するなどおこがましいのではないのでしょうか。
僕は極度の緊張も加わって、練習が終えるまでひたすら動き続けるだけの操り人形となってしまいました。
そして、はじめてのアカデミーでの練習が終了しました。
練習は朝から夜までというわけでもなく、予想したよりも時間は短く夕方からは完全フリーでした。
休むのも練習の準備として、必要な事だとサンダー・ライトコーチから言われました。
ぴりぴりの緊張感で、僕は疲れ果てていました。
自分の気持ちは、ハッキリ言ってこんな状況でプロテニス選手になれるのか、いやそもそもこのアカデミーの練習について行けるのか不安で一杯でした。
僕は気持ちが汗が冷えそうになっていたのですが、気持ちが落ち着かず一人ベンチでたたずんでいました。
そして誰かの気配に気がつきました。
それは、僕の座っているベンチでした。
いつの間にか自分の横に、桜さんが座ってました。
彼女は、いつも僕が困ったとき・不安なときに、気がつけば隣にいるのでした
「不安なの?」
ズバリ桜さんは、僕に対して直球的な言葉をを投げてきました。
「はい。」
僕は、そのまま相づちを打ちました。
「これからのことが?」
彼女は、徐々に僕の悩みを掘り出そうとしているようでした。
そんな彼女に、僕はそのまま身を委ねようと思っていました。
「ついて行けるか、不安なのです。」
自分の不安と言葉として吐露しました。
「このアカデミーについて行けるか?」
桜さんは、僕の台詞の主語を補いました。
「はい・・・。」
異論はないです。
「もう、今日からとっくについて行けてるじゃない。」
彼女から、思いもよらない事を言われました。
「え・・・・、そんなことないですよ。」
肉体的にも、精神的にもクタクタの僕は、桜さんの言うことを納得出来ませんでした。
自分はこんなに疲労困憊だから、それは当然だと思うのです。
「だってキミは練習を終えて、こうやって私と話をしているじゃない。」
今ひとつ良く分からない返答を、彼女はしてきたのです。
「だって、僕は今日は良く分からないまま練習を消化するだけだったんですよ。
ただ体を動かすだけで、終わってしまったんですよ。
こんなんで、プロになんかなったって勝てるわけ無いじゃないですか。」
ここにきて、僕は思っていることを桜さんに対して感情的にぶつけていきました。
それと同時に、自分に親身になってくれら人に、こんな物言いをして良いのかという罪悪感も生まれたのでした。
「今一度、よく思い出してみなさいよ。」
きつい言い方をしてしまったのに、彼女は穏やかな表情をしていました。
「思い出す・・・。」
特に言葉が思いつかなかった僕は、桜さんにオウム返しの様な相づちを打ちました。
「キミは私に出会うまえから、一心不乱に堤防で素振りをしていたんじゃないの?」
(・・・・・・・・・・・・・!!!)
そうです。
もともと僕は、なにも先の事は深く考えずにテニスに打ち込んできたのでした。
そうやって今、プロの道を志してアメリカ・ニューヨークのテニスアカデミーにいるのです。
またしても、ふと我に返ったら桜さんの姿はありませんでした。
僕は、心の中のかかっていた霧がスッキリと晴れた気分でした。
==================ありがとう 桜さん===================




