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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第2章 修行
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やはり、不安・・・

 「まったく、どんだけそそっかしいんだ。」

 白人の軍人っぽい男性は腕を組みながら、僕のあわてん坊ぶりに呆れていました。

 更衣室でテニスウェアに着替えた僕は、ビクビクしながら直立不動の状態です。

 もっとも目的地も分からずにいきなり駆け出す僕に対して、その様に思うのは自然な事なのでしょうが・・・・。

 「す、すいません・・・。

 コーチ・・・。」

 僕は言い訳も出来ずに、謝罪するしか術はないのでした。

 自分の心の中で言い訳をさせてもらいますと、目的地が分からないのに行ってしまうくらいに、このサンダー・ライトというコーチの威圧感は凄いものがあるのでした。

 「はは・・・、まあまあ気を取り直して。」

 刻露さんが、2人の間を取り持つように言葉を挟んできました。


 「まあいい。

 それでは練習に参加してもらうぞ。」

 コーチはなんだか事務的な言い方で、僕に早速アカデミーの練習に入るように促しました。

 でも、僕としては少々突き放された言い方をされて方が、妙なプレッシャーがかからないかも、と思いました。

 「では、私はここで・・・。

 夏目さん、しっかりやってくださいね。」

 刻露さんは、どうやらここで案内役を終えるようでした。

 本当にここから僕は独り立ちして、アカデミーでやっていかねばならないという事を改めて気がつきました。

 そして、容赦なくツカツカ歩いていくサンダー・ライトコーチに、僕は後ろから遅れないようについて行きました。


 「ここだぞ。」

 ついに僕は、プロのテニス選手になるための登竜門に入ったのでした。

 正確に言うと、十分な実力が備わっていなくてもテニス協会にプロとして、自分を登録することは出来るのかも知れません。

 しかしながら、どんな世界でも目安があると思うのです。

 それは自他共に認める実力・・・・、目に見えることのないモノ・・・・。

 どのレベルまでなのかは、今の僕には分かりません。

 それでも自分自身で決めた以上は、これからのアカデミーでの修行に取り組まなければイケナイのです。


 どうやらコートの中では、すでに練習が始まっていました。

 (やはり・・・・・・・)

 練習しているメンバーは、若い子達でした。

 おそらくほぼ全員、僕よりも年下なのでしょう。

 本当のことを言うと、自分ように高校を卒業をしてから初めてプロを目指す人はほとんどいないのでは無いのか思います。


 たとえば僕の知っている人では、紅葉さんは高校を卒業してからプロになったのですが・・・・。

 彼女は小学校の高学年から頭角を現し、そして中学・高校でも全国制覇するなどの実績を引っさげてのプロへの転向でした。

 そして紅葉さんは、在学中もレッドリーフ・テニススクールで、日向コーチなどに厳しい指導を受けていたのです。

 いわば鳴り物入りでの、プロデビューでした。

 そう彼女はきっと、特別な才能の持ち主なのでしょう・・・・・。


 それと僕の従姉にあたる雪乃さん・・・。

 彼女は高校入学後じきに、プロになるために中退しました。

 そして、このアカデミーに入校してプロになったのでした。

 僕は雪乃さんとは、3歳遅れでのアカデミーへの入校です。

 やはりプロになる為には、何かを捨てるくらいの覚悟が必要になのでしょうか?


 そして折夫さん・・・・。

 彼も、中学を卒業してすぐにプロを志したのだそうです。

 その後苦労しながらも自分のスタイルを確立して、世界でもトップレベルの選手になったのでした。


 やはり、不安・・・

 不安です・・・・。

 

 それでも僕は、そのテニスコートに入ったのでした。

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