悪魔なのかも
「なかなか、いい筋してるじゃないか。」
浅黒く日焼けした肌の男性は、僕対して若干上から目線ととれる感じで評してきました。
正直にいうと、ちょっと彼に対しては苦手な印象を受けているのです。
「は、有り難うございます。
でもオウバーさんも、レイさんもとても上手ですね・・・。」
自分にとって、彼らは明らかに格上と位置付けられる実力を持っていると思われるのです。
だから僕は率直に、考えていることを申したのです。
「俺たちよりも、上手い奴らはいくらでもいるよ。」
そう言ってオウバーさんは、嫌みのないハッキリした笑いを浮かべていました。
「でもな、ミナミだっけ?」
急にオウバーさんは、改まった態度に変わりました。
そして、汗の書いたTシャツを脱ぎながら・・・・
「女には、気をつけるんだぞ。
お前、なんだか女に振り回されそうな顔しているからな・・・・。」
・・・、とても意味深な台詞を僕に対して投げかけてきたのでした。
その時は、オウバーさんの言っている意味が良く分かっていない自分なのでした。
当時の僕は、若かったのでした。
「じゃあな。
また、会うかもな。」
そう言って、オウバーさんは、あっさりと更衣室を出て行ったのでした。
僕も着替えを済ませて、部屋を退出しました。
そう言えば、早くに刻露さんは用意を済ませたようで、もう更衣室にはいませんでした。
どこにいるのか、僕はトボトボを彼を捜しながら歩いていました。
すると・・・・・・。
「・・・・・・・・です・・・・・・・」
(ん・・・・?)
「ええ・・・・・・・。」
僕の耳に、いわゆるヒソヒソ声が聞こえてきました。
「・・・・・・・ですよ。」
それは明らかに、刻露清秀さんの話し声なのでした。
僕はイケナイと思いつつも、彼に気がつかれないように気配を消して耳と傾けてみました。
「ええ、打ち合わせ通りに進めていきますよ。」
これは一体、どうゆう話なんでしょうか?
「はは、ご心配なく・・・。
大丈夫ですよ。
彼に口を滑らしたりは致しませんよ・・・。」
そう言いながら、どうやら刻露さんは笑っているようでした。
これはに何を、誰に対して口を滑られないといっているのでしょうか。
・・・・ひょっとして僕のことを言っているのでしょうか?
「こちらに来られるのは、11月の頭くらいになるのでしょうか?
・・・・さん・・・。」
(ん・・・・?
名前をよく聞き取れなかった。)
本当に、刻露さんは誰と話をしているのだろうか?
「それまでには体調を整えてくださいね。では・・・・。」
そう言って刻露さんは、電話を切りました。
僕は、少し後ろめたい気分になって、その場を離れました。
ちょっと廊下を歩いていたら・・・・。
向こうから、女性が歩いてました。
彼女はなんだか・・・・、いわゆる妖艶と言うのでしょうか・・・?
それに服装も露出が・・・・、多いのではないかと思います・・・。
そんな女性の姿を、僕はまともにみることも出来ず、そのまま目を合わせないようにすれ違おうとしました。
人生初めてのシチュエーションに、僕はドキドキとしていました。
================== またね、坊や ======================
(え・・・・・・!?)
すれ違った女性から、思いがけない言葉を頂きました。
彼女は、先ほどの東欧系(?)の女性・・・、レイさん!?
僕は、ハッと振り返りました。
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
(いない・・・・!?)
なんと廊下はいくらかの距離が、まっすぐに続いているのに彼女の姿は消えていたのでした。
ホントに、彼女は悪魔なのかも知れません・・・・。




