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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
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旅立ち

 紅葉さんへの最後のお見舞いを終えた僕は、寄り道もせずにまっすぐ帰宅しました。

 「おかえり。」

 いつも通りに、母は僕を出迎えてくれました。

 それから、いつも通りに母と食卓を囲みました。

 しかし今日の母との夕食は、少しぎこちないです。

 それは仕方のないことでしょう。

 もう自分は、母ともしばらく会えなくなるのですから・・・。

 僕はなんと母と話をして良いのか、分からなかったのでした。

 「心配していないからね・・・。」

 そうこう考えていたら母の方が、突然に会話を始めてきました。

 しかし母は、どのような意味でこの発言をしたのでしょうか。


 「母さん・・・?」

 僕は良く分からないままに相づちを打ちました。

 「巳波の事は、心配していないからね。

 巳波は大丈夫だと、信じているからね・・・。」

 「あ・・・・・・。」

 僕はこの母の言葉の意味を、ハッキリとは言えませんが察したつもりでした。

 「僕も、母さんの事は大丈夫だと思っているからね・・・。」

 自分なりに精一杯の気持ちを、僕は母に送ったつもりでした。


 それから、それほど遅い時間ではなかったものの、僕は就寝につこうとしていました。

 その時・・・・。

 「久しぶりね・・・。」

 あの女性が僕の元に、姿を現しました。

 本当にこの人は神出鬼没です。

 いまさら、彼女の登場について疑問を持つつもりも僕にはありませんでした。


 「桜さん・・・・・。」

 そうです、いつも僕を見守ってくれていた桜さんです。

 実に、母校への訪問以来の登場でした。

 「楽しみね・・・・。」

 桜さんは、なんだか意味深な事を言いました。

 「はい?」

 彼女の言葉に、僕はなんと応えて良いのかわかりませんでした。

 「巳波君が成長していくのが、とても楽しみなの・・・。」

 桜さんは、クールに瞳を閉じて軽く頷いていました。

 「くれぐれもカラダには気をつけるのよ、巳波君。」

 なんだか彼女は、別れの言葉のような台詞を出してきました。

 「は、はい!桜さん・・・!」

 僕は桜さんのエールに、思わずお辞儀をしました。

 そして、ちょっとの間に僕が伏せていた頭をあげた時・・・・。

 桜さんはいつも間にか、僕の前からその姿を消していました。

 「桜さん・・・・・・・。」

 桜さんは、おそらく明日に渡米する僕を見送りに来たのでしょう。

 僕は最後まで気に掛けてくれていた、桜さんへの感謝の気持ちで心が一杯になっていました。

 やはり彼女とも、これで会えなくなるのでしょう・・・・。


 「それじゃ、行ってきます!母さん。」

 「行ってらっしゃい!!」

 僕がが旅立つ日の朝、母は実家で見送ってくれました。

 「元気でね・・・、母さん。」

 僕はそう呟きながら、重たい旅行鞄を引っ張りながら駅まで歩いていきました。

 いつも眺めていた景色が、一歩一歩歩くにつれて、急に名残惜しくなって来ました。

 そして僕は、最寄りの駅にたどり着きました。


 「ふう・・・・。」

 電車で着席して、僕はとりあえず一息ついていました。 

 しかしリラックスしようとした僕のもくろみは、どうやらそう上手くはいかないのでした。

 ジャカジャカ♪ シャカシャカ♪

 (???????なんだろうか???)

 シャカシャカ♪ ジャンジャン♪

 ヘッドホンから音楽をこぼれ落としながら、なにやらヤバそうな雰囲気の男性が僕の隣に座ってきました。

 その人の、姿はというと・・・。

 その人の背は、僕とそんなに変わらない感じでした。

 服装は一言で言うと、いわゆるラッパー風・・・。

 派手は色遣いの、ラフな服装、唾の大きなキャップ・・・、そしてサングラスを掛けていました。

 怪しい・・・、怪しすぎです・・・・。

 僕はその男性の事を気になっているのですが、気になっていないフリをしていました。

 それは勿論、その男性から自分自身の身を守る為でした。

 すると、突然に・・・・・。

 

 「頑張れよ!!」

 「えっ!?」

 突然の男性の言葉に対して、僕は驚きを隠すことが出来ませんでした。

 (・・・・・・・まさか・・・・・。)

 その男性は、ひょっとしたらと思いました。

 「あ、貴方は・・・?」

 僕は恐る恐る、そのラッパー風の男性に言葉を返しました。

 「まあ、元気にやれや!!」

 その男性は、僕の質問に答えること事も無く、僕の両肩をポンポンと叩いて途中の駅で下車してしまいました。

 「・・・・・・、有り難うです。折夫さん・・・。」

 僕はそのラッパー風の男性を見送りながら、そう呟きました。


 そうこうしているうちに、とうとう目的の空港に着きました。

 空港のロビーに行くと、僕を見送りにテニススクールのスタッフの方々が来ていました。

 その中には、雪乃さんの姿もありました。

 話を聞くと、やはりみんな紅葉さんのお見舞いには行っていた様でした。


 「気持ちで負けるなよ!」

 日向コーチが、とても力強い励ましの言葉をかけてくれました。

 「またいつかは尋ねてくるんだよ。」

 支配人が暖かい口調で、見送りの言葉をかけてくれました。

 「また会うときは、もっと上手くなっているわね。」

 雪乃さんは、表情を余り変えずに言葉をかけてくれました。

 いよいよ搭乗のゲートをくぐる習慣が来ました。

 ついに僕は、今まで見守ってくれたみんなに別れを告げました。

 そして僕は不安で一杯な状態で、機内に入りました。

 ついに・・・・、ついに旅立ちの刻が迫ってきました。


 ================ キイイーン!!!!!! ===============


 あっけなく、僕の乗る飛行機は地上から離れました。

 (とうとう、僕一人で・・・・。)

 18歳・・・、今年19歳の僕が・・・、単身で・・・・・

 理屈では分かっていましたが、いざ実現すると・・・・

 僕は若干に下にうつむき、肩を震わせていました。


 ================ ん!? ====================


 なんだか、ただならぬ気配を感じるのです。

 そして僕の席の横には・・・・・・・・


 「私も、一緒に渡米するわよ。」

 その女性は、僕に優しく声をかけてきました。


 「さ、桜さん・・・・・!」

 何故、どうして、彼女が僕の隣にいるのかは分かりません。

 この際、訳はどうでも良いのです・・・。

 ただ言えることは、ただ一つです。

 

 ・・・・・・・、有り難う、桜さん・・・・・


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