綺麗な白人の女性
どうしても僕は、先ほど病院の玄関ですれ違った女性のことが気になってしまいました。
そうゆうことで、僕は待機時間を設けることにしました。
言い方を変えると、張り込み・・・・・待ち伏せとも言いましょうか・・・・・。
勿論、個人的に彼女に対してストーカー的な事をする意図はないのですが・・・。
(・・・・・・・・・。)
数十分はそのまま待っていたでありましょうか・・・・。
その空白の時間は長かったのですが、不思議と緊張感があったせいか退屈には思いませんでした。
そして、期待していたことが起こりました。
そのお目当ての女性の姿が、今まさに確認できたのでした。
そのとても綺麗な白人の女性は、僕の前をスタスタと歩いていきました。
スカートスーツに身を包んだ彼女の立ち姿は、まさに堂々とした振る舞いを演じていました。
そのままその女性は、僕の視界から姿を消してしまいそうになりました。
どうやら彼女は、僕の事は覚えていなくて全く認知されていないようでした。
・・・・・、でもこのままでは物事は進展しません・・・・。
=========== エイッ!! ==========
僕は自分自身で、己の背中を押したのでした。
「あの、すいません!
ちょっといいでしょうか?」
僕は思いきって、背後から彼女に直接に声を掛けたのでした。
そして、その女性は僕の希望通りにその脚を止めてくれました。
「・・・・・・・。」
彼女は僕の顔を物静かに、なおかつマジマジと見つめてきました。
その透き通る様な碧い瞳に、あんましジッと見られ続けると、僕は我慢できずにサッと目をそらしてしまいそうでした。
それほどに、その女性の顔立ちから全ての美貌は、素晴らしいレベルといえるのでした。
ハッキリ言って、どこかのモデルさんでは無いかと思うくらいでした。
どうやら通りすがりの人も、僕達をチラチラと眺めていきます。
「なにか、ご用でしょうか?」
その女性は、日本語がとても流暢な様です。
彼女はあくまでも事務的な口調で受け答えをしてきました。
「いや・・・、あの・・・・。」
僕はなんとか、その女性を呼び止めたものの、何を言えばよいのか分からなくなってしまいました。
「・・・・・・・。」
その綺麗な白人の女性は、再びジッと僕の顔を見つめてきました。
「ううう・・・・・・・。」
僕は言葉を続けていくことが出来ずにいたのですが・・・・・。
「場所を変えて、お話しましょうか?」
意外や意外!!
なんと彼女の方から、僕に助け船を出してくれたのでした。
================ そして場所を変えました =================
僕と女性は、喫茶店に場所を移しました。
実はこの喫茶店は、紅葉さん達とも行ったこともあるなじみの店でした。
自分が想像していたよりも余りにも容易に、この女性と話を出来るようになりました。
僕はそのことに対して、何やら違和感を感じてしまうのでした。
それでも自分は、このとても綺麗な白人の女性に聞いてみたいことがあるのです。
それゆえにある程度に不自然な事を、そのままスルーすることは僕に取って不可能なことではありませんでした。
「ご注文は、お決まりでしょうか?」
ウェイトレスの女性が、注文と取りに来ました。
僕とその女性は、珈琲と紅茶をお互いに頼みました。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
2人とも台詞を発することを、しませんでした。
沈黙が続きました・・・・。
でも自分は彼女と黙り込んだまま向かい合っていても、全然堅苦しいと感じなかったのです。
そして僕は直感しました。
彼女は、きっと悪い人ではない・・・・。
「お待たせしました。」
沈黙に割って入って、珈琲と紅茶が、運ばれてきました。
コトンと置かれたカップの取っ手に、僕とその女性はすぐに手を伸ばしました。
・・・・・、飲み物にリラックスされてのかやっと拮抗が破られました。
「秋原様の事でしょうか?」
とても綺麗な白人の女性は、紅葉さんの名を出してきました。
まさか、彼女の方から・・・・、実は僕の気持ちを察しているのでしょうか?
「そ、そうですね・・・!」
僕は素直に、相づちを打ちました。
そうしたら彼女は、フウッとため息をつきました。
しかしそのため息は、否定的な感じではありませんでした。
「でも秋原様が、大事に至らないで本当に良かったです。」
本当に失礼ですが僕は、彼女が紅葉さんの体調に言及したことは、とても意外に感じました。
その表情にはあまり表れていないのですが、女性の人間的な部分を感じ取れて僕は安心しました。
そしてこれは自分の思いこみかも知れないのですが・・・、彼女のことがなんだか懐かしい気持ちになってきたのでした。
僕がとくに話さないでいたら、その女性は続けて言いました。
「貴方のことは伺っております、夏目様。」
どうやら推測通り、とても綺麗な白人の女性は僕のことを事前に知っていたようでした。
「そうなんですか・・・。
どうして、誰から僕の名前を?」
僕は率直に疑問を、彼女にぶつけました。
「私は秋原様とは、お仕事の事で繋がりがあるのです。」
どうやら、この女性は僕のことを、紅葉さんから聞いているようでした。
「そうですか・・・。
貴女は、どうゆう関係のお仕事なのでしょうか?」
僕はどうしても知りたいことを、ハッキリと彼女に聞きました。
「それは・・・・。」
彼女は上品に、右手の人差し指を口元に当てて、ちょっと困ったような仕草をしました。
「・・・・・・・。」
僕は、この女性の返答に期待を抱いていたのですが・・・。
彼女は少しだけ、唇に力を入れた感じがしました。
「申し訳ありません、夏目様。
守秘義務がありまして、どうしても今は申し上げる事はできなのです。
それに・・・。」
とても綺麗な白人の女性は、また一呼吸を置きました。
「いまは黙っていることが、秋原様の為であるのです。
ご理解いただけないでしょうか?」
彼女は深々と、僕に向かってお辞儀をしました。
その女性の行動からは、十分に誠意が伝わってきました。
「わ、わかりました。
こちらこそ、無理に呼び止めてすいません・・・。」
僕は彼女の言葉に、嘘は無いと感じていました。「
僕たちは会計を済ませ、分かれることになりました。
「有り難うございます、夏目様・・・。」
彼女はどうも、僕を気遣ってくれているようでした。
具体的な情報を、言えなかった事に対して気まずいと感じているのでしょうか。
「いえ、こちらこそお話しできて良かったです。」
その僕の言葉に、嘘偽りはありませんでした。
何故なら紅葉さんに不吉な事が迫っているのでは無いかという、不安が払拭されたからでした。
「それでは、失礼します!」
僕は、そのとても綺麗な白人の女性に、別れを告げました。
「さようなら・・・。
巳波く・・・、いや夏目さん・・・。」
「え・・・・・・・?」
僕は思わず振り返りましたが、去っていく彼女を再び呼び止めることはしませんでした。




