とても綺麗な白人の若い女性は・・・誰・・・・?
母を紅葉さんの入院している病院で見かけた後に、僕は特に寄り道もせずにそのまま帰宅しました。
短い間に色々なことがあって、僕は肉体的にも精神的にも疲労困憊の状態でした。
しばらくしてから母が、家に帰ってきました。
そして買ってきた総菜を元に手早く用意して、夕食を取ることになりました。
いつもの食卓ですが、何やら僕にとって重苦しい雰囲気を感じていました。
「かあさん・・・・。」
僕は、その均衡を破ろうと試みることとしました。
「どうしたの?」
やはり自分にとって、母はいつもの母でした。
僕と母はとの間には、いつもと変わらずに何もありませんでした。
それでも・・・・、自分には分かる気がするのでした。
僕が母を病院で見かけたことに・・・・、母は気がついていたのではないのかと・・・・。
だから自分と母はお互いに、なにか引っ掛かるものを持っているのではないのかと思うのです。
「う、うん・・・・。
なんでもないよ・・・。」
僕はある意味、元の鞘に戻す気になったのでした。
今は小さいながらも、荒波を起こすようなことは避けるべきではないか、という事を優先させる様にしました。
そしてまた翌日ーーーー。
レッドリーフ・テニススクールでの残り少ない勤務を終え、僕はまた紅葉さんのお見舞いに行きました。
自分的には、彼女の体調は本当に回復に向かっているのか、とても気になっていました。
レッドリリーフテニススクールに在籍してからの四ヶ月間、紅葉さんはいたって元気に振る舞っていました。
彼女が病気を背負っている事など、全く忘れ去ってしまうくらいでした。
でもそれは本当の紅葉さんでは無かったのではないのか、と思ってしまうのでした。
実は彼女は病気を背負っていて・・・・、だからそれを覆い隠すために・・・・、というよりも忘れる為に明るくしていたのではないのかと・・・・。
そう考えると、僕はとても悲しくなってきました。
そして紅葉さんのことを、大事にしなければ行けないと思うのです。
でも・・・・、僕に出来ることはなんなのでしょうか・・・?
そんなこんな考えているうちに、紅葉さんの病室にたどり着きました。
「こんにちは。紅葉さん。」
僕は彼女のアパートに尋ねてきた様な感じで、入室しました。
その瞬間に、僕はそうゆう気持ちでいた事を、ほんのチョッピリ後悔しました。
実は、病室にいたのは紅葉さん一人ではなかったのです。
かのじょと一緒にいるその人とは・・・。
後ろ姿は・・・、誰なんでしょうか・・・・。
でもその人を、僕はみたことがあるのでした。
まさにヒョロッとした雰囲気の、男性の後ろ姿・・・・。
(ああ・・・、この人知ってる・・・。)
しかも・・・・。
紅葉さんは、白衣の男性とトランプをしていました。
しかもカードの扱い方からして、ババ抜きを興じているようでした。
なんだか自分の頭に、今日もデジャヴがよぎったのでした。
そして僕は、その男性の顔をみて驚いた。
この間、テニススクールに紅葉さんを訪ねた来た男性でした。(※第29・30話参照)
(その節は、変質者と間違えてすいませんでした!)
「ああ、こんにちは・・・。
お見舞いの方ですか・・・。」
どうやら男性は、僕と会ったことを忘れているようでした。
もっとも、少しやりとりしただけなので、無理もないのですが。
自分が一方的に、この男性を覚えているだけなのかも知れません。
それでも男性は、僕と気さくに話をしてくれたのでした。
この男性の名前は、影浦涼太。
彼ははこの大学病院のお医者さんだそうです。
嫌みのない男性で、僕はすぐに好感が持てました。
「お邪魔なようだから、席を外すね。
紅葉ちゃん。」
影浦さんは良く分かりませんが、なんだか気を遣ってくれているようでした。
「そ、そんなんじゃないってば!!」
紅葉さんは、いつもに増して強い口調で影浦さんに反応しました。
そのやりとりを聞いて、僕はなんだか、大人と子供の会話みたいだ、と思ってしまいました。
そして影浦さんは、僕たちを見守るような微笑みを浮かべながら、病室を出て行きました。
まさに彼にとっては、紅葉さんはまだ子供のままの感覚なのでしょうか。
僕もその光景を見て、今日もちょっとだけ笑ってしまいました。
「んーーーー。」
そんな僕をみて、紅葉さんはやはり不満な顔でした。
しばらくの間、とりとめのない会話を彼女としました。
「紅葉さん、また明日ですよ。」
僕は渡米まで毎日、紅葉さんのお見舞いに行くことを約束して病院を出ました。
そしてまたまた、病院の玄関で或人物とすれ違いました。
真っ白な綺麗な肌、まるで造形のような美しい顔立ち・・・・。
こないだ刻露清秀さんと、レッドリーフテニススクールに来ていた白人の若い女性でした。(※第63話参照)
そして、紅葉さんと何やら話をしていたのですが・・・。
紅葉さんが、スクールを退職した日に彼女のアパートに尋ねてきたし・・・。(※第65話参照)
ハッキリ言って、とっても自分の心に引っ掛かる女性でした・・・。
・・・まさか、彼女の来院の理由は・・・・・・・。
僕はある考えが閃き、しばらく病院出入り口の周辺で待つこととしました。




