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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
72/312

昨日は、本当にありがとう!!

 目を覚ました紅葉さんと僕の処に、女医さんと、先ほどの小柄な女性の看護士さんが現れてきました。

 「落ち着いたようね・・・。紅葉ちゃん・・・。」

 その女医さんは、とても慣れた感じで紅葉さんに語りかけていました。

 なんだか紅葉さんに対して、とても優しい感じで接しています。

 「うん・・・・。」

 紅葉さんは俯きながら、とても短い返事をしました。

 まるで彼女は女医さんに対して、自然な態度を取っているように見えました。

 それをみていた僕は、なんだか大人と子供の会話みたいだなあ、と思いました。

 これはあくまで僕の推測であるのですが・・・・

 この女医さんはおそらく、傍の小柄な女性の看護士さんと同様、紅葉さんを永いこと診てきているのでしょう。

 「紅葉ちゃんは、今は体調は良くないけど大丈夫だからね・・・・。

 ちょっとの間・・・、入院して療養して欲しいのよ・・・。」

 僕は女医さんの落ち着いた台詞に、正直ホッとしたのでした。

 少なくとも紅葉さんの容態が、命に別状がないという保証が得られた様に思えたからです。

 「うん・・・、分かった・・・・。」

 そこで紅葉さんは、僕が今までみたことのないのような素直な表情をしていました。

 そんな感じのとてもしおらしい紅葉さんから、女医さんはかなり信頼されているんだ、と僕は思いました。

 「それじゃあまた来るからね・・・。

 紅葉ちゃん・・・。」

 そうして女医さんと、看護士さんは退室していきました。

 

 「紅葉さん・・・、ゆっくり休んで下さいね・・・・。」

 病室に2人きりになったことで、僕は彼女に言葉をかけるタイミングとなりました。

 でも・・・・。

 「ふう・・・・。」

 彼女たちが退室した直後に緊張の糸が切れたのか、僕は急に睡魔に襲われました。

 「うん・・・?巳波君こそ、大丈夫なの?

 もう、お家に帰って休んだ方がいいよ・・・。」

 僕が疲れを見せたことによって、紅葉さんに逆に気を遣わせてしまったようだ・・・。

 「そ、そんなに、気を遣わなくてもいいですよ。

 紅葉さん・・・。」

 反射的に出たその言葉に、嘘は無かったつもりです。

 本当に僕は、もうちょっと彼女の傍でいたかったのです。

 「いいのよ・・・。

 巳波君は、お家で休んでも・・・。」

 それでも紅葉さんは、相変わらず僕に対して気遣っていました。

 「大丈夫ですって!!」

 その言葉に対して僕は、まだまだここでいるつもりなのを強調しました。

 「ああーん!もうー!

 巳波君は、お家に帰って休んでよー!」

 紅葉さんは大きく両腕を挙げて、何故か急に語気を強めてきました。

 今の彼女は、まるで我慢をしかねて癇癪を起こした少女の様な態度でした。

 「わわっ!も、紅葉さん・・・!

 そんなに動いたりしたら、点滴が逆流しますよー。」

 それにしても紅葉さんは、何で僕に家に帰って欲しいのでしょうか。

 実は彼女はあんまり長居されたら、嫌な理由でもあるのでしょうか。

 しかし僕が抱いている最中の、その疑問はすぐに解決することとなります。

 先ほどから、なにやら背後に気配を感じているのでした。

 

==================== ハッ!! ======================

 

 そして気がつけば、先ほどの小柄な女性の看護士さんが立っていました。

 「さあ、お体をお拭きしましょうか。」

 その看護士さんは、タオルや洗面器など体を拭く用意を持っていました。

 (そ、そうゆうことなのか・・・・・!?)

 僕はやっとの事で、モヤモヤしたものがハッキリしたのでした。

 (そ、そうだ、紅葉さんは昨日からお風呂に入っていないのだ・・・・。)

 それに彼女は、体調不良で大量の汗をかいていました。

 たしかに紅葉さんが体を拭こうというのに、僕が同室するわけにはいきませんでした。


 「気がつくのが遅いよ。

 巳波君・・・。

 アタシ、昨日からパンツも履き替えていないんだから・・・。」

 紅葉さんはシャツの胸元を右手でパタパタさせて、ちょっと意地悪な笑顔を浮かべていました。

 「は・・・、はあ・・・・。

 わかりました・・・・、紅葉さん・・・。」」

 その彼女の困った台詞に対して、僕はおとなしく家に帰ることにしました。

 「それに、巳波君もお風呂に入らないとね・・・。」

 紅葉さんは僕も昨日からお風呂に入っていないことを、遠慮なしに突っ込んできました。

 こうゆう彼女の態度を見ていると、自分も安心した気分になれたのでした。

 その一部始終を見ていた小柄な女性の看護士さんは、半分呆れたように・・・しかし優しそうに笑っていました。


 「じゃあ、紅葉さん。

 また時間を作って、来ますからね・・・。

 お元気で・・・。」

 僕が出入り口のドアノブに手をかけた、その瞬間・・・。


================昨日は、本当にありがとう!!==================


 大きな声が、聞こえてきました

 (紅葉さん・・・・・・・・・・・・・。)

 

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