冬木雪乃という選手
「という冗談は置いておいて・・・・・。」意外に紅葉さんは冷静でありました。
「せっかくだから、雪乃がどんな娘か教えてあげるよ。その方が、お話がスムーズに進むんじゃないかな?」確かに、雪乃さんがどんな人なのか、あんまり知りません。紅葉さんがどんなテニス選手なのかは、いまや僕はよくしっているのですが。
なんでも、紅葉さんはジュニアのころから全国レベルの選手だったそうで、テニスに深く関わった仕事をしている人は誰もが知っているくらいだったそうです。このことは、僕の勤めるテニススクールの職員からたくさん聞いたことです。紅葉さんは、とにかく人並み外れた運動神経の持ち主であり、加えて体格にも恵まれていました。はっきりいって相手をねじ伏せるといった表現が似合うような、得点の取り方をするテニス選手です。トークも相手をねじ伏せる感じですが・・・・。
「私は子供の頃からテニスでは勝ち続けたけど、雪乃はまるっきり私と正反対だったんだよね。中学では全く無名だったし、高校では全国レベルだったけど私とはかなり実力差があったね。でもあの娘はあきらめなかった。だれもが、思ってもいなかったプロになれたんだ。実は、今までに雪乃とは10回以上試合をしたけど一回だけ負けたんだよね。」
(あ、それはきっと僕が観戦した試合です。(※第1話参照))
「まあ、最後に雪乃に負けて私は故障して、プロ活動を休止しているんだよね。そして、テニススクールに勤めて、今は夏目くんの前にいる。」紅葉さんは両肘とついて、過去を回想しているのか心ここにあらずな感じでした。
「まあプレイスタイルをいえば、正確なショットが武器なんだよね、雪乃は。何しろ、足腰も強くて粘りのテニスをするわ。接戦になれば嫌な相手なんだ。性格と同じでしつこいんだけど・・・・。」少し悪意のある、紅葉さんでした。
「誰がしつこいの?」気がつけば、雪乃さんの登場です。
「あー。雪乃、あんたの事を褒めちぎっていたのよ。」紅葉さんは、とても見え透いた嘘をつきました。
「嘘つきは、なんとかの始まりよね。まあ、いつものことだけど。巳波くん、久しぶり。大きくなったね。」
雪乃さんとは初対面のつもりなのですが、完全に僕の事を知っているオーラで話しかけてきました。
やはり雪乃さんと桜さんは、同一人物なのでしょうか?外見は瓜二つです。この答えは、きっと次回に判明することでしょう。