絶対に・・・・だよ
「紅葉さん!!紅葉さん!!」
疲れている様子だった、紅葉さんはついに倒れてしまったのです。
今の彼女は、ぐったりとして、僕に抱え込まれています。
「う・・・・・、うん・・・・・・。」
紅葉さんは、僕の必死の呼びかけに対して相づちを打っている感じでした。
しかし、その彼女の声はとても弱々しく、おおよそ無意識のうちに発せられている言葉だと思えたのです。
「も、紅葉さん・・・!!」
僕は、自分自身に冷静を取り戻すように言い聞かせました。
そして、深呼吸をして彼女の安否を確認したのでした。
「う・・・・・・・・・・・・。」
紅葉さんは、意識が朦朧としたと受けとれる、薄目を開けながらの表情をしていました。
そして彼女は、全身に多くの汗を流し、肩で息をしている様態でした。
僕はこのとき確信しました・・・・・・。
================紅葉さんは、とても危険な状態==================
そう思った僕は、勿論すぐに救急車を手配しました。
(紅葉さん・・・・・。)
今、僕と紅葉さんは歩道橋の上にいるのですが、とても動ける状況ではありませんでした。
だって、こんなにグッタリと弱り切った彼女を、無理矢理に連れていくことは出来るわけがないのです。
倒れ込む紅葉さんを、抱きかかえている時間はとても長かったです。
================恐らく、短いけど、永い時間===================
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
もうたぶん紅葉さんは、無意識の状態になっている事でしょう。
そして、僕の不安は次第に大きくなっていきました。
その増殖した不安は、もはや危機感となりました。
彼女を抱きかかえている、僕は思いました。
今の紅葉さんには全く力が無くて、そしてとても柔らかい・・・・・。
何とかして守ってあげないと、間違いなく彼女は壊れてしまいそうです。
本当に僕は、このまま渡米しても良いのでしょうか?
「・・・・・・・・・だよ・・・・・。」
(え・・・・?)
紅葉さんが何やら、うわごとのように言っています。
「ぜっ・・・・・・・だよ・・・・・・。」
そのとき僕は、彼女が何を言わんとしているのか少しずつ判ってきました。
僕は・・・・・。
僕の目から涙が、素直に流れてきました。
紅葉さんは、こんなにカラダを痛めていても、僕の事を気遣ってくれていました・・・。
僕は彼女の気持ちに答えるのなら、必ず渡米しなければいけないのです。
それでも、渡米の決心が揺らいでいる自分もいることは、事実です。
こんなに、弱い紅葉さんを放っておく事は、できないです。
そう思う自分を振り切って、僕は近々渡米します・・・・。
何故なら僕は、紅葉さんの無意識の言葉を、全て理解してしまったからなのでした。
「頑張りますよ・・・・・・。
紅葉さん・・・・・・。」
============絶対に、もっともっとテニス上手くなるんだよ。巳波くん==========




