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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
66/313

彼女は落下する・・・・・・

 その女性は歩道橋の上、ちょうど橋の中心に手すりにもたれて立っていました。

 十分にハッキリと顔は見えないのですが、誰なのか僕には分かります。

 その女性の名前は、秋原紅葉さん・・・・。

 僕は確かめると言うよりは、確信を持って歩道橋の階段を急いで駆け上がっていきました。

 彼女がどのような気持ちを持ってそこにいるのか、悪い方向にしか、僕には想像できないのでした。


 (・・・・・・・、紅葉さん・・・・・。)

 歩道橋の階段をを登り切って、僕は橋の手前にいました。

 まだ僕が探し求めていた人は、そこに動かずにいました。

 彼女は、いつも通りに白いシャツに、黒のミニスカートとブーツを身につけていました。

 なおさらに、長身が際だって見えます。

 周囲のネオン・ライトに間接的に照らされて、女性の茶色い髪が、まさに紅く見えます。

 頭はうつむいていて、いかにもネガティブな雰囲気を醸し出していました。

 僕は運良く見つけることの出来た彼女に、すぐにでも接近したいのでした。

 しかし・・・、どうも踏ん切りがつきませんでした。

 いざとなったら、自分の言いたいことを言い出せなかった事が、僕には何回もありました。

 僕は不本意ながらも、彼女の方を見つめてくすぶり続ける態度を取っていました。

 (ああ・・・・。)

 なんと僕は意気地のない男なのでしょうか・・・・。

 僕は・・・・・、一体どのように、、この女性に語りかければ良いのか・・・、まるで言葉が見つからなのでした・・・。

 そうこうしているうちにも、刻一刻と一秒一秒が経過していくのですが、僕はまるで罰せられているかの様な心持ちになっていました。

 永い永い・・・、短い時間・・・・。

 (い、いたたまれない・・・・・。)

 しかし自分の心配とは全く関係なく、その均衡は突如とて崩れる事となるのでした。

 それは、彼女の動作が合図となりました。

 突然に彼女は歩道橋の手すりを、両手で握りだしたことがわかりました。

 その時に僕の心の中に、最悪の予想が導き出されたのでした。

 「も、紅葉さん・・・・・!!!」

 僕は・・・・、僕は何かに背中を押されて、紅葉さんの元に駆けだしていたのです。

 

 プロテニス選手としての活動を休止した、紅葉さん・・・・。

 おそらくハードな試合の連続に、病気を持っていた彼女の体はついて行けなかったのかも知れません・・・。

 体を壊した紅葉さんは、闘いの世界から去らなければならなかったのでしょう・・・・。

 無双の才能と、恵まれた体格を持っていたのも関わらず・・・・・・。

 そして紅葉さんは僕と同時期に、レッドリーフ・テニススクールに入社しました。

 あくまでも僕から見た話ですが、紅葉さんにはとてもお世話になりましたし、楽しい日々でした。

 はたして不本意にプロテニス界から去った紅葉さんにとって、その時間はどのようなものだったのでしょうか・・・。

 紅葉さんがライバルとして闘ってきた人たちは、今もずっとその世界に身を置いています。

 彼女・彼等の活躍を知りながら・・・、紅葉さんは一体どんな気持ちでテニススクールのスタッフとして働いていたのか想像ができません。

 彼女が楽しそうにしていたのは、心の底から・・・、本音だったのでしょうか・・・?

 僕に渡米を奨めた紅葉さん・・・・、一緒にレッスンをして働いた紅葉さん・・・・、イベント・エキシビジョンマッチで僕たちと動いた紅葉さん・・・・。

 僕たちといるときには、明るく振る舞っていた紅葉さん・・・。

 本当は、彼女は・・・、紅葉さんは・・・、いつも泣き続けていたのではないでしょうか・・・・?

 

 たった四ヶ月の間・・・、それでも紅葉さんはテニスに関わる仕事を続けていました。

 しかし、その仕事も雑誌の心ない記事がもとで、辞めてしまいました。

 紅葉さんには、ひょっとしてもう行き場が無いのではないのでしょうか・・・・?


 僕には、最悪の結末しか想像できなかったのでした。

 だから・・・・、なんの躊躇もなく彼女に飛びかかろうとしたのです。

 だから・・・・、彼女は、紅葉さんは・・・・・


==============紅葉さんは、交通量の多い歩道橋から落下する=============


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