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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
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紅葉さんが突然・・・・・・

 翌日も、テニススクールに出勤しました。

 「おはようございます!」

 「おう・・・・・。」

 顔を合わせた日向コーチに、僕はいつも通りに挨拶をしたのですが、どうも歯切れが悪いです。

 日向さんは一体どうしたのでしょうか。

 (・・・・・・・・・・・・・。)

 通常通りに業務の準備をしているのですが、いわゆる違和感を否定できないのです。

 その生まれて間もない疑問は、すぐに解決することとなったのでした。

 (こ、これはー・・・・・・・!!)


 ===================掲示板=======================

 <私、秋原紅葉はレッドリーフ・テニススクールを退職させていただくこととなりました。

 急なことで、皆さんにきちんと挨拶出来ずに、誠に申し訳ありません。

 非常に短い間でしたが、お世話になりました。>


 僕は・・・、掲示されているその置き手紙を見て、衝撃と絶望を打ち込まれました。

 (紅葉さん・・・・、昨日の紅葉さんはやっぱり・・・・・。)

 彼女には、やはり何か特別な状況があった様です。


 この朝のミーティングで、紅葉さんの退職が支配人から正式に発表されました。

 とても短い勤続とはいえ、皆から一目置かれる実力の紅葉さんの退職の知らせには、スタッフの誰もが動揺を隠し得なかったのでした。

 「ひゅ、日向コーチ・・・・。」

 僕は今の状態にいたたまれなくなって、日向さんに声を掛けました。

 「あいつ、どうしても、やめるの一点張りでな・・。」

 日向コーチはそう言いながら、その大きな体がしぼんでしまいそうな位に、うなだれていたのでした。

 「そうですか・・・。

 紅葉さんがスクールを辞めた理由は、分からないのですか・・・。」

 やはり紅葉さんは、円満に退職したようではなさそうです。


 「やはり紅葉の奴、あの記事の事を気にし続けていたんだな・・・。」

 日向コーチは話を、少しでも深く掘り下げようとしている感じでした。

 「でも雑誌の記事、あれは紅葉さんが悪い訳ではないじゃないですか!」

 日向さんが言うとおり、紅葉さんは週刊誌に書かれた記事のことが原因で退職したのかも知れないと思いました。

 「確かに、あいつが良からぬ事を行った訳じゃない。

 でもな、そのことであらぬ噂があって、俺たちに迷惑がかかってると思っていたんじゃないかな・・・。 気にしていないようで、あれで結構神経は細かいんだよ・・・。

 秋原は・・・、あいつはそうゆう女なんだよ。」

 確かに日向コーチの言うとおり、紅葉さんは内心ではとても悩んでいたのかも知れません。

 「・・・・・・・・。」

 僕は言葉を続けることが、出来ませんでした。

 「行ってこいよ。」

 「えっ?」

 「気になるなら、行ってこいよ!

 今日は休んでもいいぜ・・・。

 後のことは、何も心配するな。」

 僕は日向コーチに促されて、紅葉さんに直接に話を付けることにしました。


 スタッフの皆さんに気遣いに後押しされて、僕は紅葉さんに直接、話をすることにしました。

 「さて、と・・・・。

 あれ・・・・・。」

 紅葉さんに、電話はつながらなかったのでした。

 昨晩の不安な気持ちが、復活しつつありました。

 しかしそんなことを言って、行動を止める訳にはいきません。

 僕は紅葉さんのアパートに、急ぎ足で向かいました。

 そして紅葉さんの住むアパートに着いたのですが、その駐車場から出てきた一台の自動車に目がいったのでした。

 (あ、あの車の中の人たちはー!)


 駐車場から出てきたクルマを運転しているのは、バベルの刻露清秀こくろせいしゅうさんでした。

 しかも助手席には、先日一緒にいた綺麗な白人の若い女性が座っていました。

 「ああー!!」

 僕は2人に気がついてもらおうと、必死に手を振り、声を出しました。

 しかし・・・・、クルマは無情にも去っていきました。

 ここに僕の頭の中には、或推測が生まれたのでした。


===============あの2人は、紅葉さんの退職に関係している=============


 昨日も今日も、刻露清秀こくろせいしゅうさんと白人女性は、僕の前に現れました。

 昨日は紅葉さんと話し、今日は紅葉さんのアパートに来ていました。

 偶然と言うには余りにもタイミングが、ピッタリしすぎています。

 一体、紅葉さんと2人は、どうゆう関係なのでしょうか?

 そういった事を考えながら、僕は紅葉さんの借りている部屋の玄関の前につきました。

 (紅葉さん・・・・。)

 チャイムを鳴らしたのですが、全く紅葉さんは出てくる気配がありません。

 どうやら紅葉さんは留守にしている様でした。

 刻露清秀こくろせいしゅうさん達も、紅葉さんに会いに来たけれど居なかったから帰ったのでしょうか・・・。

 元々、紅葉さんと刻露清秀こくろせいしゅうさんが親しげに話していたのには、何やら違和感があったのです。

 紅葉さんは、バベルと契約しているプロ選手では無かったのですから・・・。


 僕はアパートは諦めて、当てもなく紅葉さんを探しました。

 (どこに行ったのだろうか・・・、紅葉さん・・・・。)

 僕が一歩一歩足を運ぶたびに、だんだんと外は薄暗くなってきました。

 (ん!?)

 なんだか、きつい頭痛が起きました。

 そして何か過去の映像が、自分の頭脳の中に現れたのでした。

 

===========今よりもずっと低い僕の視線、そしてセーラー服の紅葉さん==========


 (この走馬燈は僕の想像なんかじゃない・・・、紅葉さんと僕は元々知り合いだった・・・・・。)

 その映像のフラッシュバックが起こった直後・・・、僕は何気に歩道橋を見上げていました。

 そして、そこには僕の知っている・・・、いや探し求めていた女性が・・・・・・。


 「も、紅葉さん・・・・・・・・!!」


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