欠落した記憶は・・・・・・
僕は不安を抱きながら、紅葉さんと別れ帰宅しました。
そして、この夜に衝撃的な事を僕は知ることとなるのでした。
「いよいよアメリカ行きが近づいてきたわね。」
「うん・・・・・。」
僕は母と夕食をとりながら会話をしていました。
「緊張していない?」
母はどうも僕が不安で無いのか、気遣ってくれているようです。
「大丈夫だよ、きっと。」
僕はとくに問題がないと言うことを、母に分かってもらいたいという気持ちを示しました。
それに何故だか、良く分からないはずの異国に対しての未知なる要素をそれほど感じていないのでした。
それは、どうゆう事なのか・・・・・。
「巳波・・・・。」
僕のその態度に対して、母も違和感を持っていないようでした。
それは自分の息子に対する信頼とはまた別の裏付けに近いものを、彼女は握っている雰囲気なのです。
その時自分自身の頭の中で、ピッカリとした点灯が発生しました。
================僕には記憶の欠落がある===================
その様に解釈しないと、自分の人生におけるミッシングリンクの説明がつかないのです。
僕は幼少期の記録が、極めて曖昧なのでした。
勿論、誰でも昔の記憶はハッキリとしていないのかも知れません。
各々に自分自身の台詞を一字一句覚えているなど、不自然なのではないのでしょうか。
もしも、隅々までに、昔のことをその人が覚えているとしたら・・・・・・。
<記憶の修正>が行われているという可能性があるのではないでしょうか。
そう、<記憶の修正>です・・・・。
自ら過去の記憶を修正することによって、現在とのつじつまを合わせる、もしくは自分の都合に合わせるといった行為です。
ただそれは、自分が意図的に行ったことではなく、無意識のうちに施されたことではないでしょうか。
それ故にその人自身は気がつかずに、その記憶を信じ込んでいるかも知れません。
僕は、いま自分が考えていることが、すぐに答えが出ないことが分かっていたので、思うことを一旦停止しました。
なにかしらの行動をすることの方が今後の予定に対しても、より生産的だと判断したからでした。
そしてその行為は、自分の過去の持ち物を整理することでした。
それはいわゆる、立つ鳥後を濁さず・・・、とうことです。
「うーん・・・・。」
僕がイメージしているよりも、自分の部屋の整理はスピードが出ていませんでした。
それは何故かというと、懐古の気持ちが自分の作業をスローにさせていたのでした。
他の人にとっては、ガラクタ・・・若しくは価値の薄いモノであったとしても、その人には宝物であることがあると思うのです。
文房具、おもちゃ、イベントのチケット、手紙・・・・・・。
僕は思い出の付属したモノに気づくたびに、しみじみとして感慨にふけっていました。
そのこと自体だけなら、とくに問題がないのでしたが、ここでイレギュラーが起こったのでした。
(・・・・!!!!!
こ、これは・・・・・・・!!!)
僕は、過去の写真がファイリングされているアルバムを見つけたのでしたが、それをパラパラとめくっていくと・・・・。
幼き日々のいつかの僕の写真が出てきたのでしたが、それは一人を撮影しているしてるものではなかったのです。
============幼い僕と、幼い白人の女の子が並んで写っている写真==========
「なんだか、この白人の女の子、だれなんだろうな・・・。」
まるで人形のように綺麗で可愛い白人の女の子・・・・・・・・・・・、僕には特に記憶に残っていませんでした。
(ううう・・・・。
なんだか、頭が痛い・・・・。)
ザッ、ザッと断片的な映像が僕の心の中で、再生されていきます。
でも何かのイベントでの写真かと思ったので、僕は悩むのはやめました。
これ以上考えるのは、自分自身で首を絞める・・・、必要のない苦しみを己に課す気がしたからでした。
しかし、こうして自分自身に言い聞かせたことは、一気に覆されることとなってしまうのでした。
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
えええーーーー!!!!!)
僕にとっては、先ほどよりも遙かに衝撃的な事態になったのでした。
それは・・・・、続いて僕が発見した写真は・・・・
===========小学六年生くらいの僕と、高校一年生くらいの紅葉さん===========
・・・・紅葉さん・・・・、明らかに紅葉さんでした・・・。
今よりも、だいぶん幼さの残る顔立ちだけど、間違いなく過去の紅葉さんがその写真に写っていました。
何故・・・、どうして僕と紅葉さんが一緒に並んで居たのでしょうか・・・。
(どうして・・・・・、紅葉さん・・・・。)
紅葉さんは過去に僕と会っていたことを、本当に覚えていないのでしょうか?
知りたいです・・・・。
僕の過去を・・・・・、欠落した過去の記憶を・・・・・。
自分の思考回路が、停止寸前になったり、急に早く稼働したり繰り返しています・・・。
「片付けは進んでいるの?」
母が、僕の部屋に入ってきた事によって、僕はフッと現実に引き戻されていました。
「母さん・・・。」
「なに・・・?」
「・・・・・・・・・・・・。
いや、ちゃんと片付けできているよ。」
僕は渡米した後に、一人残す母に心配をかけたくないので、写真の事についてはあえて聞かないことにしたのでした・・・・。




