紅葉さんペース
ついに、三者会談の日がやってきました。僕は前回の紅葉さんとのデート(?)の時と同じカフェで、紅葉さんと冬木雪乃さんを待っていました。(しかし、やはり冬木という名字が引っかかります。)
「やっほう!」真後ろから大きい声がしました。紅葉さんでした。
「びっくりしたなあ・・・。」僕は少しだけ呆れていました。
僕の前で立っている紅葉さんは、とてもいい女性だと思う。ていうか、結構お洒落だったりします。
テニスをしているときの紅葉さんもいいけど、普段着の彼女も捨てがたいです・・・・。
ちなみに、具体的にどんな感じなのかというと、髪型は赤に近い茶色のストレートのロングヘアー。そして、シンプルな白の襟付きのシャツ、黒のミニスカート、極めつけはニーハイですね・・・・。ブーツは主張しすぎない黒、バックや時計もシックな感じです。そうか、紅葉さんは、黒が似合うんですな・・・・。
「・・・・・・・。夏目くん、さっきから何を一人でうつむいてブツブツ言ってるのよ。」
「はっ!!」僕は、我に返りました。
「いきなり、私の全身を上から下まで見るように目線を動かしていたし。そんなに私の事が、気になるわけなの?」紅葉さんは、腕を組んで仁王立ちです。彼女は、半笑いで少しだけ顔を引きつらせていました。
「考えるのは私の事じゃなくて、夏目くん自身の事じゃないの!私の事を考えるのは、夏目くんが落ち着いてからにしてよ。」
「・・・・・!」(ひょっとして、紅葉さんは僕に対してまんざらな感情でもないのでしょうか?)
という、僕の大変勝手な想像をしていたら、本題を忘れてしまっていることに気がつきました。
「あの、冬木雪乃さんは来られていないんですか?」確かに冬木さんは、来られていない。
「ああ、そうなんだ。雪乃はちょっとだけ遅れてくるんだ。急用が入ったんだってさ。でも必ず来るから心配しないでって、雪乃が言ってたから。」
「そ、そうなんですか。じゃあ、待ちましょうか・・・・。」僕は少しだけ、心の準備ができるという、前向きな気持ちで行こうと思いました。
「まあそんな訳で雪乃が現れるまでは、私と夏目くんとでトキメキトークだよね!!」紅葉さんは満面の笑みを浮かべてその言葉を放った。
(さっきまでの僕に対する態度とは、まさにアベコベです。まあ、紅葉さんのそうゆうところは嫌いではないのですが。雪乃さんに会うまでの心の準備どころでは、ありませんでした。というより心の摩耗状態かも知れません。)
「私とデートできるから良かったね、夏目くん!!」僕は、蛇に睨まれたカエルの気持ちが分かるような気持ちになりました。完全に紅葉さんペースです。