また会いたくなったんでしょう?
「僕は、商売人じゃないんだから。」
僕は、否定の気持ちをしっかりとこめて、和気香に言い聞かせようと試みました。
「そうなんですかー。」
彼女は真ん丸の瞳で、まっすぐに僕を見上げて、全く邪気のない様な声で言いました。
「そうなんだよ。」
僕は、なんだか子供を窘めるような感じで、その女の子に念を押しました。
「わかった!夏目先輩!」
和気香は、僕の咎めに対して、あっさりとうなずきました。
確かに、彼女は根はとても素直な女の子でした。
何故なら、僕はこの後輩とは一緒にダブルスを組んで試合にも出場していたからです。
それだけに、彼女の性質は十分に心得ているつもりなのでした。
==================高校時代====================
僕は三年生になったときには、一年生の時からは信じられないよう何感じで、テニス部のエースとなっていました。
メインはシングルスであり、全国大会でも上位に進出していました。
そして、僕はこのテニス部の主将も務めていました。
正直に言うと、僕は不器用な性格で、テニス部をまとめるのはかなりの神経を使っていました。
しかし、そんな僕を助けてくれたのが、後輩の和気香でした。
彼女は女子テニス部の中心プレーヤーでありながら、そのしっかり者の性格もあってか、マネージャーのような役割も担っていました。
俗に言う、プレーイング・マネージャーというものでしょうか・・・・。
和気香の世話好きな特徴は、テニスのプレースタイルにも現れていました。
僕と彼女は、どちらもシングルスを得意としていました。
そうなのですが、僕は彼女とミックスダブルスに出場を何度かしました。
シングルスに比べて、ミックスダブルスの成績は今ひとつふるわなかったです。
しかし、僕は和気とダブルスを組んで、心地よい雰囲気を味わっていました。
僕は、その性格同様にテニスのプレースタイルも、あまり器用な方ではありませんでした。
そんな僕を、彼女はとても補ってくれていました。
この後輩は、まさにかゆいところに手が届く様な、僕の気持ちをくみ取ってくれるパートナーでした。
主将としてプレーヤーとての僕を、両面でサポートしてくれていたのでした。
決して大きくはない体で、和気香は一生懸命にテニス部を盛り上げていたのでした。
苦しい事もあったけれど・・・・・、僕の高校時代は充実していました。
===================そして=======================
「それはそうと、夏目先輩!」
僕の後輩の和気香は、話を切り替えるようでした。
僕もこの流れを変えたいと思っていたので、渡りに船とばかりに乗っていこうと思いました。
「会いたかったんですかー?」
「は?」
僕は、彼女の良く分からない質問に、上手く相づちが打てませんでした。
「・・・・それはどうゆう意味なのかなあ?」
僕はその女の子に、率直に問い返しました。
「だから、また会いたくなったんでしょう?」
和気香は笑顔で、僕にほんのちょっとだけ近づいてきました。
僕は、なんだか良く分からずに少し気持ち後ずさりしました。
・・・・後輩の和気香の表情は、何故だか若干ホッペタがの色が・・・・・・。
僕は・・・、僕は訳が分からずに、困惑していました。
そして、その訳を知ろうとする、勇気と努力を怠ってしまいました。
「センパイ・・・・。」
和気は、少し顔を下にうつむきました。
「いや、挨拶に来たんだよ。」
僕は、今日この母校に来た用件を述べようとしました。
「・・・・・・・挨拶ですか?」
彼女は、その笑顔に陰りが見えていました。
僕は、なにか女の子に残酷なことをした様な気がしました。
しかし、それは何なのか・・・・、その時の僕にはわかりませんでした。
若いときの・・・・見逃しは・・・・、二度と取り戻すことが出来ないことは、長い念月をかけないと分からないのです。
そしてその時は、過去に戻れないと分かっていても、しみじみと振り返ってしまうのです。




