僕の後輩の女子生徒
(桜さん・・・・・・・。)
桜さんが、僕の母校ではどのような人だったのか気になります。
やはり桜さんは、高校時代にテニスをしていたのでしょうか?
そうだとしたら、桜さんは僕が所属していたテニス部の先輩と言うことになります。
・・・・・・・桜さんは一体年齢はいくつなのでしょうか・・・・・・・。
すこし桜さんの正体に近づいた気がしました・・・・・。
しかし、そのことは桜さんとの関係が終わりに近づく気がして、正直には喜べません。
桜さんは・・・・・・、僕にとって神秘的な存在のままでいいのです・・・・。
ハッと、僕は我に返りました。
すぐに妄想(?)に入ってしまい、行動が停止してしまうのは僕の悪い癖です。
そうです、僕は母校の門をくぐるべきなのです。
僕は校内に入りました。
本日、僕はテニススクールの非番の日です。
休日を利用して、母校に顔を出すことによって、高校時代を懐古したいと思ったのです。
過去を振り返ることによって、渡米する踏ん切りを付けようとしているのでした。
少なくとも今の僕があるのは、高校時代に関わってくれた人々のおかげだと思っています。
あ、勿論卒業後にお世話になっている紅葉さん・雪乃さんをはじめとした人たちも負けないぐらいに大切です。
僕は、門をくぐって周辺をゆくっりと歩いていました。
「久しぶりです!
夏目先輩!」
(!!!!!!!!!!!!)
僕は不意に鉄砲を食らったかの如く、その声のする方向に慌てて振り向きました。
「ああ・・・・!
元気にしているかな?」
僕は、声をかけてきた下級の女生徒に軽く挨拶をしました。
「まあ、元気ですよう!
夏目先輩は、今どうされているんですか?
たしか、テニススクールのコーチをされているんですね。」
「まあ、そうだね・・・・。
でも、もうテニススクールのコーチは辞めるんだ・・・・。」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
えっ!?
どうして、辞められるんですか!?」
彼女は、僕がちょっとビックリするくらいに驚いていました。
「いやいや、辞めるっていってもね和気・・・・」
僕は、後輩の女生徒に誤解されていることを感じました。
「んんん?
夏目先輩・・・!」
この元気の良い、後輩の女子生徒は和気香という名前です。
元気なだけではなく、しっかり者なので今はテニス部の主将を務めています。
しかも、女子だけでなく男子・女子テニス部全体を統括しているのです。
テニス部の主将であり、顧問の先生の補佐的な役割を担っている存在なのです。
それで、僕が和気にどの様な、誤解がされているのかというと・・・。
「和気・・・、別に僕はテニス自体をやめる訳じゃないんだよ。」
僕は、彼女を窘めるように丁寧にしゃべりました。
「えっ?
そうなんですかあ!
じゃあよかったあー!」
後輩の女性とは両腕を広げてなんだか、正月の時期にみられる凧みたいな動きをしていました。
おそらく彼女なりの、感情表現なのでしょう・・・・。
「!!!!!!!!
じゃあー、夏目先輩はそれからどうするつもりなんですかあー?」
和気香は、僕に対して興味津々な様子でした。
おそらく、それなりにはっきりした説明をしないと、彼女は納得はしないでしょう。
「うん、実は渡米しようとしているんだよ。」
僕は彼女に極めて簡潔で要点のみの、回答を示しました。
「えー。」
後輩の女子生徒は、文字通り目を丸くして僕の顔を見つめていました。
「すごーい!!!
夏目先輩!!」
和気香は、まん丸の瞳をクリクリさせながら、右手をグーにしてポンッと左の手のひらを打ちました。
コレは明らかに、この娘が何かに閃いたポージングと言えると思いました。
とにかく彼女は、アクションのバリエーションのとても多彩な女の子なのです。
「夏目先輩、まさか・・・・・。」
後輩の女子生徒は、少々もったいぶりました。
そして、じきに口を開きました。
「何か商売を始めるつもりなんですかあー!?」
(ガクッ)
なんだか、僕の思っている事と全然違う内容を、彼女が言い出したので正直言って拍子抜けしました。
「なんで、そう思うのかな・・・、和気・・・・。」
僕は今ひとつ会話のテンポが取りにくくなって、困ってしまいました。
「だってー・・・・」
和気香は、両腕を頭の後ろに組んで、僕との会話に間を取りました。
「だって、なんだよ、和気・・・。」
僕は後輩の女子生徒が、何をもったい付けて言わんとしているのか気になっていました。
そして・・・。
「だってー、夏目先輩・・・・。」
彼女は後頭部に組んでいた両腕を、ガバッと広げました。
「夏目先輩、なんだか商売人っぽいんだもん!!」
(ガククっっ!!!!!!!!!!!!)
「何の根拠があって、そんなこと思うんだよ。」
プロテニス選手を目指す僕にとって、その後輩の女子生徒の評価はとてもショックでした。
「だってー・・・・・・。」
「だって、なんだよ。」
「だってー、夏目先輩、そーゆう顔立ちなんだもん。」
(ズガーン!!)
なんの悪びれもなく、彼女(※勿論、恋人ではないです)に追加攻撃を受けて、商売人の烙印を押された僕は自分でも良く分かるくらいに機嫌が悪化しました。
一体、商売人っぽい顔立ちとは、何を持って彼女は主張しているのでしょうか。
僕は、全く納得できませんでした。
商売人っぽいプロテニス選手なんて・・・・、一体なんなんでしょうか・・・・・・。
しかし・・・・・、僕の後輩・和気香のその指摘は実は正しかったのでした。
そのことは、また後々判ることとなるのでした・・・。




