桜さんは、僕と同じ・・・・・
高校を卒業してから、まだ四ヶ月と少ししか経過していません。
たった四ヶ月です・・・・・・・。
しかし、僕にとってはとても密度の濃い日々でした。
でも・・・・・・・・
充実しているのは最近に始まった事ではないのです。
僕はテニスを小さい頃から、始めていました。
でも・・・・・・・・
どうも僕は飲み込みが悪いらしく、今ひとつ記憶が薄いのです。
僕の昔の記憶は断片的で・・・・、それでいて何だか大きな事があった気がしてならないのでした。
いつかは僕はその記憶をたどる旅に出なくてはならない、と密かに思っているのです。
桜さん・・・・・・・、僕は桜さんと出会ってから本気でテニスが上達すると思い出しました。
と、言うより自分の才能を信じてみようと考えるようになったのです。
桜さんとの練習は、僕を技術的にも精神的にも成長させてくれました。
どうして彼女は、僕みたいな冴えない人物に目をかけてくれたのだろう、という疑問は心の奥にしまって・・・・・、桜さんの指導にとにかくついて行きました。
自分自身が言うのも何なのですが、つべこべ言わずに必至に桜さんに食らい付いていきました。
僕は信じています・・・・・・、桜さんが何者であっても・・・・。
少なくとも彼女は僕の為に何かをしてくれています・・・・・。
それは、根拠がなくても揺るぎない自信がありました。
僕は高校時代、近所の堤防のでの素振りを休日に行っていました。(※第1話参照)
そして、桜さんに声をかけていただいてから、彼女とのマンツーマンのレッスンが始まったのでした。
素振りでのフォームの指導、部活動での技術面での悩み相談など・・・・、桜さんとは実際にボールを打ち合ったことは無いのでした。
しかし彼女の指導は僕に取っては、その効果は絶大でした。
そのことから分かるのです、桜さんはテニスにおいては、とてもレベルの高い人だということが・・・。
そして、高校を卒業してからも、桜さんは僕に助言を与えくれています・・・。
彼女が何者なのか・・・・・・、それは詮索・追求はできないのです。
彼女の詳しい身元を調べようなどとは、僕は思えないのでした。
何故なのかは、ハッキリとは言えません。
でも、白黒付けない・・・・・、灰色の部分は時には必要なのではないかと思うのです。
真実を突き詰めていくと、壊れてしまうものがあるような気がしてならないのでした。
出来ることなら・・・・、この桜さんとのあやふやな関係を続けていきたいのです。
たとえ、いつか終わりがあるのだと言うことが分かっていたとしても・・・・。
僕は急に、普段とは異なる雰囲気を、自分の肌に感じ取る事ができたのでした。
それはたびたびと、僕に起こること・・・・・。
「巳波君、奇遇ね・・・・・・。」
桜さんが・・・・・、僕をたびたび助けてくれた桜さんが姿を現したのです。
「桜さん・・・・・・、どうして・・・・。」
僕は、今回は桜さんに何故かその理由を聞いてしまったのでした。
「私もそうなのよ・・・・・。」
「え・・・・・、そうなんですか・・・・・・・?」
「そうなのよ・・・・。」
「じゃあ、桜さんもなにか用件があって来られたのですか?」
「そうね・・・・・、あるようなないような・・・。」
相変わらず、桜さんはとてもミステリアスな女性でした。
勿論そんな桜さんを、僕は深く考えないようにしていました。
しかし、そう思う僕としても、今回の桜さんの発言は意外でした。
本当にそうだとしたら、僕が桜さんと出会ったのは偶然では無いのかも知れません。
僕はだんだんと不安の気持ちが、生まれて来たのでした。
なんだか桜さんとの、別れが少し近づいたような気がするからなのです。
それは・・・、それは自分の胸の中から沸き起こってくる、得体の知れない何か・・・・。
その時、ハッと僕は我に返り、現実に引き戻されました。
僕の目の前には、門の中に入って行く桜さんの姿が映っていました。
そうです、どうやら桜さんは僕と同じ・だった様なのです。
残された僕は・・・・・・、一人でたたずんでいました。
母校の校門の前で・・・・・・。
(桜さんは、僕の母校のOGだったのか・・・・・・。)




