もみじ日本昔ばなし
むかしむかしあるところに、それなりに由緒のあるお寺がありました。
そのお寺の小僧は、突然無性にパンが食べたくなりました。
「雪乃さん・・・・、いっいや和尚さん、パンを買いに行ってもいいですか?」
巳波・・・・、いや小僧が聞くと、雪乃和尚さんは答えました。
「パン・・・・・。
パンは、確かに私も好きね・・・・。
何を買ってきてもらおうかな?」
いつの間にやら、巳波小僧は雪乃和尚さんにパンを買ってくるお使いを命ぜられる事となったのでした。
巳波小僧は若干不服でしたが、パンが食べたいのは間違いないのでおとなしく行くこととしました。
「しかし、あのパン屋には恐ろしいものがでるのよ・・・・。」
雪乃和尚は、少し心配して言いました。
「と、いいますと??」
巳波小僧は、興味を持って雪乃和尚に聞き直しました。
「あのパン屋のパンはとても美味しいけど、でるのよ・・・・。」
雪乃和尚は、核心に触れない返答をしてきました。
「だからなんなんですか!!!」
巳波小僧は、じれったくなって思わず強い口調で、雪乃和尚に食いついていきました。
「・・・・・・ババ」
「はい・・・?」
「山姥がでるのよ・・・・。」
「は、はあ・・・・・?
そうなんですか・・・・。」
巳波小僧は世間知らずの怖い者知らずでした。
だから雪乃和尚に山姥と言われても、今ひとつピンと来なかったのでした。
「どうしても行きたいのね?」
雪乃和尚は巳波小僧に対して、念を押しました。
巳波小僧が、どうしても行きたいとダダをこねるので、雪乃和尚は3つのアイテムを手渡すことにしました。
「困った事があったら、このアイテムを出しなさい。
きっと、助けになるわ・・・。」
雪乃和尚は何故か遠い目をして、巳波小僧を送り出しました。
巳波小僧は、案外道に詳しくあっさりとパン屋さんに着いてしまいました。
パン屋さんには(あきはら)という看板が、掲げられていました。
巳波小僧は、なんのためらいもなく、パン屋の入り口のドアを開けました。
「いらっしゃいませ。」
パン屋さんには、大柄な女性の店員さんが一人だけいて、何故か巳波小僧に対して背を向けていました。
それにも関わらず、巳波小僧は特に不信に思わずに、パンを選び出しました。
「うーん・・・、フランスパン・カレーパン・クロワッサン・・・どれも美味しそうだなあ・・・。」
パン屋さんのパンはどれも甲乙付けがたいくらいの粒ぞろいで、巳波小僧は選びかねてしまいました。
「ええーい!!!
全部選んじゃえ!!」
巳波小僧は、結局全種類のパンを一つずつ買うことにしました。
「これだけお願いします。」
巳波小僧は、早々に会計を済ませようとしました。
(あ・・・、でもこれだけたくさんのパンだったら、お金足りないかも??)
巳波小僧は、経済的な不安にかられました。
しかし・・・。
=============ジャーン!!!=======================
巳波小僧は、こんな事もあろうかと、学生でも作れるという噂のクレジットカード・・・・、極天カードを持っていたのでした。
経済的な問題をクリアした巳波小僧は、さっさと会計を済ませようと気を取り直しました。
「あのう、支払いはコレでお願いできますか。」
巳波小僧は、極天カードを差しだそうとしました。
しかし何故だか、パン屋の店員さんは背を向けたままです。
そして・・・・。
「いらない・・・・。」
良く分からない返事を、巳波小僧にしたのでした。
(いらない、ってクレジットカードは使えないのかな・・・。
まあ、支払いは現金のみの、お店は結構あるから・・・。)
巳波小僧は、仕方なく現金で支払いをすることにしました。
とりあえず現金で払えるだけ、パンを買おうと思いました。
「では、現金払いで・・・。
この金額で買える範囲でお願いします。」
巳波小僧はそれなりに、礼儀正しい言葉遣いのつもりで決済を済ませようとしました。
「いらない・・・・。」
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!どうゆう事なのだろうか!?)
巳波小僧は訳が分からなくなりました。
「あの・・・・。
では、どうやったらこれらのパンを買わせていただけるのでしょうか??」
巳波小僧は至極当たり前の疑問を、店員さんにぶつけました。
「それわね・・・・。」
店員さんは、やっと巳波小僧の方に顔を向けてくれました。
しかし・・・・・・・・
================!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!===========
その振り向いた店員さんの顔を見て、巳波小僧は驚愕しました。
なんと紅葉さ・・・、いや店員さんは、歯を出して三日月みたいな形の目と口で<ニイイッ>と、とても不敵な笑みを浮かべていました。
(ひいいっ・・・!!紅葉さん、紅葉さん、怖い・・・・・・。)
「巳波くん・・・。」
ニイイッとした表情のまま、紅葉さん・・・いや店員さんは何故か巳波小僧の名を呼びました。
「はいっ!!」
巳波小僧は何故かキビキビと返事ができました。
「今日の会計はね・・・・・・。」
そう言って、紅葉さ・・・、いや山姥は大きな口をいっぱいに開けました。
そうです、そのアクションで巳波小僧をどうしようとしているのか答えは決まっていました。
「ひいいっ!!!!!!!」
巳波小僧は恐れをなして、逃げだそうとしました。
しかし、おそらく紅葉さ・・・、山姥にすぐに追いつかれてしまうのは間違いないでしょう。
(そうだ!!!!!!!)
巳波小僧は雪乃和尚さんから、出かける前にいただいた3つのアイテムを思い出しました。
「ようし!
このアイテムを早速使うぞ!!」
巳波小僧は、惜しみなく雪乃和尚からいただいたアイテムを3つとも取り出しました。
そして、そのアイテムとは・・・・。
紅いテニスラケット・女性用のテニスウェア、そして・・・・・ヌンチャク・・・でした。
「うんっ!!」
紅葉さ・・・、山姥は、そのアイテムに飛びつきました。
そして、いきなりテニスウェアに着替えようとし始めました。
「いや・・・!
紅葉さん!
それはまずいですよ!!」
僕は、紅葉さ・・・、いや山姥の脱衣を阻止しようとしました。
が、しかし・・・・・。
その紅葉さ・・・、山姥の恐ろしい表情に恐れを抱いてやはり逃げることにしました。
巳波小僧は全速力で、駆け出しました。
しかし・・・・。
巳波小僧が後ろを振り向くと、紅葉さ・・・、山姥が早くも追いかけて来ていました。
しかも、右手に紅いテニスラケットを持ち、左手でヌンチャクをクネクネさせています。
そしてテニスウェアは、完璧に着用していました。
巳波小僧は、その様子を見て恐怖心が増加しました。
なぜなら、紅葉さ・・・、山姥は、雪乃和尚からいただいた3つのアイテムで、パワーアップしている様にしか見えなかったからでした。
「お、りお・・・・。
お、お、おりお・・・・・・・。」
紅葉さ、山姥は謎の言葉を呟きながら、巳波小僧を捕まえようとしていました。
巳波小僧と、紅葉さ・・・、山姥のデットヒートは息が詰まるほどのものでした。
しかし、なんとか巳波小僧は紅葉さ・・・、山姥を振り切りお寺に帰ってきたのでした。
「はあっ・・・・、はあっ・・・・・・・・!」
巳波小僧は、膝に手を突き息を切らしていました。
「パンは買ってこれたの?」
雪乃和尚は、相変わらずポーカーフェイスで、巳波小僧のお使いの結果を訪ねてきました。
「はあ・・・・・、なんとか・・・・・でも・・・・・・・」
僕は持ち帰ったパンを雪乃和尚に手渡そうとした、その時・・・・・!!
============ドカーン!!!!!!!!!=================
「イヤッホー!!」
壁を勢いよく突き破って、紅葉さ・・・、山姥がお寺に入ってきました。
「はわわ・・・・。
紅葉ひゃん・・・・・・・・。」
巳波小僧は、恐怖で顔を硬直させてしまいました。
紅葉さ・・・、山姥は、巳波小僧の顔に急接近してきました。
しかし・・・・・・・・・!!
=============ガッシ!!!!!!!===================
背後から、紅葉さ・・・、山姥の頭を掴む手がありました。
その手の主の両腕は、細腕からは想像の出来ない怪力で、紅葉さ・・・、いや山姥を床にゴロゴロと転がしていきました。
そして紅葉さ・・・、山姥は、雪乃和尚によって、瞬く間に小さく丸められました。
そう、その小さく丸いものは、まるで豆粒そのものでした。
間髪入れずに、雪乃和尚は・・・・・・・・
=============ゴクリ・・・・・・・===================
紅葉さ・・・、山姥を飲み込んでしまいました。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!)
巳波小僧は、目の前で怒った事があまりに衝撃的で絶句してしまいました。
雪乃和尚は、巳波小僧に歩み寄り・・・・・
「今日、このお寺では何も怒らなかった・・・。
いいわね・・・・。」
雪乃和尚は、巳波小僧に低い声で囁きました。
(ひいい・・・・・・・・・・。
雪乃さん怖い・・・・・・・・・・・・・・。)
巳波小僧は、その日は一晩中、ガタガタと震えていたそうです。
本当に怖い事は、自分自身の身近に存在するという、お話でした。
<おしまい>
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「おしまい、おしまいー!!」
実は僕はテニススクールの生徒の子供達に、絵本を読み聞かせていたのでした。
「ふう・・・・・・。」
僕は、絵本の読み聞かせを終え、一休み、と肩を降ろしていました。
==============ポンッ===========================
僕は、肩をポンと叩かれて、すぐに振り返りましたが・・・・・・
「ぎゃああーーーー!!!!!!!!!!
山姥ーーーー!!!!!!!!!」
僕は、思わず山ん・・・、いや紅葉さんに叫んでしまいました。
「だっ、誰が山姥よーーー!!」
紅葉さんは、両手をグーにして、顔を真っ赤にしていました。
この紅葉さんのアクションに対して、僕は子供達に囲まれている手前、どう反応して良いのか分かりませんでした。
しかし、その時・・・・・・・・・・・・・・
「やまんば!!」
「やーまんばー!」
子供達は、次から次へと紅葉さんを指さして喜んでいました。
「な、なによー!
なんなのよーーー!!」
紅葉さんは、またも先ほどと同じポーズを取り、子供達に大弱りでした。
※後書き・・・・今回のお話は、日本の昔話の「三昧のお札」を参考にさせていただきました。




