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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第一章 旅立ち
54/312

そう簡単にはいかない・・・・

 第8ゲーム、雪乃さんのサーブです。

 サーブ・ストロークともに、とてもコントロールの良い雪乃さんですが、この試合は紅葉さんがネット際でプレッシャーをかけているおかげで彼女のショットを封じ込めている状態です。

 ボレーの名手である紅葉さんは、ダブルスにおいては雪乃さんに対して優位に立っているのでした。

 なぜならダブルスは最初から、二回に一回に割合で、ネット際にポジションが取れるのですから・・・。

 だがしかし・・・・・、このまま雪乃さんが力を発揮できないままに終わるとは考えにくいです。

 仮にも、今厳しいプロの世界で活躍している人材なのですから・・・・。


 雪乃さんのまっすぐなフラットサーブが、紅葉さんに対して打たれました。

 紅葉さんは、ラケット面を会わせ丁寧にリターンを放ち、ネット際に段階的に迫って行きました。

 そして紅葉さんは、上手にコースをついてポイントを取りました。

 威力に頼らない得点の取り方が出来るのが、紅葉さんの強みです。

 「よし!」

 紅葉さんは、まだ自分のボレーが雪乃さんのストロークに対して有効であることを、確認しているかのような呟きをしていました。

 そして僕はこのままに、自分自身の不安が払拭されることを望みました。

 そして・・・・。


 続いて雪乃さんは、僕に対してサーブを放ちました。

 僕は今まで通りに、ロブを打ち応戦しました。

 このパターンにはまれば、紅葉さんがスマッシュかボレーで決めてくれるか確率が上がります。

 お互い高い軌道のショットの撃ち合いを続けていれば、いつかは紅葉さんが攻撃するチャンスが生まれてきます。

 僕は、とことんロブショットを打ち続けていく覚悟でした。

 しかし、ここで予想外の動きを、四季・冬木ペアは起こすのでした。

 (・・・・・・・!!!)

 僕は前衛にいたと思った折夫さんのポジションが、大きく後ろに下がっている事に気がつきました。

 言ってみれば、ダブルスのペアから、シングルスプレーヤー2人に変化したのでした。

 そして、ベースラインに下がっていた折夫さんは強力なスピンショットを、返してきました。

 それはネット際にいる紅葉さんでも、容易に手を出せない位のストロークでした。

 僕は折夫さんのショットを返せずにはじかれて、ポイントを失いました。

 完全に、僕は折夫さんに力負けしたのでした。

 

 そうです、折夫さんはシングルスがメインのプレーヤーであり、ストロークを大得意としています。

 この試合はダブルスですが、折夫さんは自分の得意な状況に持って行くためにあえてシングルスのポジションにしたのです。

 折夫さんのグリグリの縦回転のかかったスピンショット、そして雪乃さんの鋭いコースのフラットショットの波状攻撃を前に、僕は為す術もなかったのでした。

 結局、僕が大きく紅葉さんの足を引っ張った為に、この第8ゲームを落としてしまいました。

 

 僕は、折夫さんとの実力の差をまざまざと見せつけられました。

 勿論、僕の実力が折夫さんに通用するとは元々思っていませんでした。

 しかし、このエキシビジョンマッチで大きくリードをしたために、僕は自分が強くなった錯覚してしまっていたのでした。

 僕は魔法が解けたかのように、自信をなくしてしまいました。

 やはり、僕はこの試合では力不足なのでしょうか・・・。

 以降のゲームも、僕は力の差を見せつけられていく事となるのでした。


 第9ゲーム・・・・・。

 僕のサーブの順番が回ってきました。

 僕は対戦相手の二人に、うちひしがれてしまいました。

 僕のサーブは折夫さん・雪乃さんの厳しいリターンに打ち砕かれたのです。

 それは、前衛の紅葉さんが攻撃できないレベルの、これまでの試合で最高のリターンでした。

 3巡目になる僕のサーブに慣れてきたとはいえ、当たり前のように僕は2人にコントロールされてしまったのです。

 (僕は、無力だ・・・・・・・・・・・・。)

 僕たちは、あっさりと第9ゲームも落としてしまいました。


 僕の落ち込みにも構わずに、試合は第10ゲームと移りました。

 これはまさに、折夫さんが僕にとどめをさせてくるような事になりました。

 折夫さんは、グリグリのスピンサーブを放って来ると思いきや・・・・・。

 折夫さんの紅葉さんに対して放たれたサーブは、フラットサーブでした。

 紅葉さんは、ちゃんとリターンさせたものの、タイミングが十分にあっていなかったため、折夫さんのストロークにねじ込まれる形でポイントを失いました。

 それだけではなく、続いての僕に対しての折夫さんのサーブは、横に変化するスライスでした。

 僕は、何とか対応してリターンできましたが、あっさりと前衛の雪乃さんにボレーを決められてしまいました。

 そうです、折尾さんは強力なスピンサーブを持っています。 

 しかし、いくら折夫さんのスピンサーブが素晴らしいとはいえ、何度リターンしていくと慣れてきます。

 だから折夫さんは、僕たちにタイミングを取らせないために異なる球種のサーブを混ぜてきたのでした。

 たとえ他の球種が、スピンサーブほどの威力が無かったとしても・・・・。

 結果、夏目・秋原組は、第10ゲームも落としてしまったのでした。


 「ここまで、縺れるとはね・・・・・。

 流石、折夫と雪乃ね・・・・。」

 紅葉さんは、そう呟くとベースラインの前に立ちました。

 第11ゲームは、紅葉さんのサーブです。

 ゲームカウントは、5-5です。

 泣いても笑っても、この試合はこのゲームで最後です。

 紅葉さんは、このゲームも緩急をつけたサーブとボレーを駆使して戦いました。

 僕も何とか、食らい付いてボレーを打っていきました。

 勿論、折夫さんと雪乃さんの反撃は激しいものでした。

 4人は、きわどいショット、鋭いショット・・・・、様々な技を出していきました。

 周りのギャラリーの方々は、美技に対して色々な歓声を挙げていました。

 そして・・・・・。

 

 このエキシビジョンマッチの勝敗は決したのです・・・・。

 

 

 


 

 

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